帝国支配の本質とその統治構造!

トランプ時代を迎えた世界の緊迫した情勢を帝国をキーワードに把握し、世界及び日本の在り方を包括的に検討し、アメリカがアメリカファーストに走る状況下での日本、中国、中東、欧州の対応を構想する。 

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トランプ大統領による西側体制の混乱と敵対行動でメルケルのドイツはロシア、中国と同盟する? 

      2018/10/28

2017年9月の選挙では、大方の予想に反して極右反移民のポピュリスト政党AFD(ドイツのための選択肢)に躍進を許し、大幅に議席を減らしたメルケル首相ですが、ドイツが20世紀中に世界征服を目指して二度の世界大戦を闘い、軍事力や科学力等で世界最強レベルだったにも関わらず、二度とも脆くも敗退した理由を「強者の自制」の視点から検証しつつ、戦後七十年を経て、メルケルのドイツがイギリス,アメリカの混乱を尻目に着々とヨーロッパを支配しつつある状況を分析しています。

1.「強者の自制」の欠如がもたらす歴史的な敗北
 1)ドイツが二度の世界大戦で敗北した要因の分析
 2)「強者の自制」の演者がイギリス、アメリカからドイツに移行
2.総括・2017年G7直後のメルケルのミュンヘン宣言の歴史的重大性

1.「強者の自制」の欠如がもたらす歴史的な敗北

1)ドイツが二度の世界大戦で敗北した要因の分析

以前から感じているのですが、アングロサクソン国家や中国は、流石に先述したビスマルクがナポレオンの言行から導き出した「強者の自制」という教訓を実践している気がします。
イギリス、アメリカは、この200年間ほど、中国に至ってはより長いタイムレンジで、いわゆる「最大成功を積み重ねてきている」ことは歴史的な事実だと思われますが、一定の自制の精神を発揮することで、それなりに安定した国際秩序を維持してきている、と認識しています。
ドーラ

翻って、ドイツは第一次世界大戦、第二次世界大戦において、「強者の自制」の精神を発揮出来ていたでしょうか。もっと遡れば、たとえ世界強国になったとしても、その瞬間に直ちに世界制覇を目指すべきだったのでしょうか?
やはりドイツが、これまで科学力や技術力で世界最強レベルをキープし、二度も世界征服を目指す戦いを展開しながら、どうしても世界覇権国の座に手が届かなかったのは、「強者の自制」を発揮出来なかったことに尽きる、ような気がするところです。

世界戦争における勝敗のカギは、戦力差や戦術差、戦略差もさることながら、圧勝を積み重ねた段階でどこまで「自制の精神」を発揮出来るかにあった、ということになりそうです。
自走砲

2)「強者の自制」の演者がイギリス、アメリカからドイツに移行

ちなみに、第二次世界大戦後のドイツは、戦争の痛手の大きさもあったかと思われますが、三度目の世界戦争に邁進するような暴挙とは無縁の非常に慎重で丁寧な政治活動に終始してきた印象があります。

翻って2016年の欧州情勢に関しては、難民問題以上にショッキングな出来事として、イギリスのEU離脱国民投票がありました。
この時のイギリスのデイビット・キャメロン首相兼保守党党首は、あたかもウィルヘルム二世やヒトラーが世界大戦に打って出た時と似たような気分で、自分の信念に基づき未来への確信に満ち満ちて、英国の今後の命運や自分の政治生命を賭けてまで、敢えて本来は必要不可欠だったかどうかわからない国民投票を選択して敗北した、と認識しています。
キャメロン

イギリスでは、その後2017年4月に任期を3年も残し、選挙前の時点で過半数を確保しているにも関わらず、前倒しで総選挙を実施して圧勝し、より多くの議席を確保して強力な政権基盤を背景にEU離脱交渉を有利に遂行しようとしたテリーザ・メイ首相が、蓋を開けてみれば結果的には保守党の議席が10議席以上も減ることで、過半数割れに追い込まれてしまいました。メイ首相の賭けは失敗に終わり、キャメロン前首相の賭けに続いて、またもやイギリスは階段を転がり落ちるスピードを増した印象で混乱と奈落へまっしぐら?な雰囲気すら出てきています。

メイ首相 敗北

さらにアメリカでは、自制の精神とは対極の精神構造の持ち主を中核メンバに結集した、トランプ政権が発足しました。トランプ政権では、コミーFBI長官の解任を巡ってロシアの大統領選挙への介入とトランプ陣営との関りが益々問題とされ、メイ首相が賭けに敗北した総選挙の投開票日である2017年6月8日同日にコミー前FBI長官への上院での議会証言が行われ、コミー氏はトランプ大統領による自らの解任やフリン前補佐官捜査中止要請、忠誠明言要求などについて述べ、トランプ大統領と自分との二人だけの会話メモを第三者で友人であるコロンビア大学教授と共有し、「録音テープがあるというトランプ陣営の発言通りであれば公表してほしい、本件メモの存在と外部への展開が特別捜査官の設置に直結すると考えていた」と述べるなどトランプ政権を巡る混乱も一層深まっています。ちなみに、トランプ政権内ではロシアゲートの進展に伴い本件に関与していたとみられるクシュナー氏が失脚しつつあり、ロシアンゲートに無関係とみられるレーニン主義者で毛沢東の文化大革命に郷愁を抱くバノン氏が復権してパリ協定離脱を主導したとも言われています。

コミー証言

このようなアメリカ、イギリスの混乱した状況を観察していて気付かされるのは、先の第二次世界大戦までは、統治者が賭けに頼るのはドイツ側が専門で、自制の精神を備えた統治者は英米側の専売特許だったのが、戦後70年を経た現代においては自制の精神を備えた統治者の本場はドイツ側で、賭けに頼るのが英米側というように、統治者の方向性が完全に入れ替わってしまっていることです。

2.総括・2017年G7直後のメルケルのミュンヘン宣言の歴史的重大性

このような情勢を踏まえてヨーロッパの状況を振り返ればドイツは、ベルリンの壁崩壊、東欧革命、ドイツ統一、ソ連邦崩壊、EUの東方拡大、南欧諸国の経済危機、中東からの難民受け入れ、などの節目節目で存在感を増大させ、いつの間にかEU内での覇権国の地位を確保するに至ったように見受けられます。

先の二度の世界戦争の敗北も踏まえてドイツは、遂に三度目の正直で「石橋を叩いても叩いてもなかなか渡らない」「自制の精神」に満ち満ちたアンゲラ・メルケルという、エカチェリーナ二世を模範として仰ぐ傑出した指導者を得て、かつてウィルヘルム二世やアドルフ・ヒトラーが武力では成し遂げられなかった、欧州制覇という高みに手が届きそうなところまで到達した気もする、昨今のヨーロッパ情勢とも言えましょうか。
メルケル首相

これらの状況も踏まえつつ、2017年5月のG7直後にミュンヘンのビアホールで支持者を前に、ドイツのメルケル首相がいつになく明確に、「もはやアメリカ、イギリスに完全に頼れる時代は終わった。ヨーロッパ(ドイツ?)は運命を自分たちの手で勝ち取らなければならない新しい歴史の段階に入った。私は今回のG7でそのことを痛感した」と述べました。
この演説を聴いた支持者達の拍手は、一分間ほど鳴り止まなかったということですが、ミュンヘン宣言はよほどドイツ人の心に響いた、ということになるんでしょうか。
メルケル首相は、その後もことあるごとに、このような論旨を繰り返しているということですが、これは本質的にはベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊で東側からの掣肘がなくなってからも引きずっていた第二次世界大戦の残滓について、いずれも不安定な基盤の上で混乱した政権運営を重ねるアメリカのトランプ大統領、イギリスのメイ首相らと直接G7の首脳会談の席で対峙した結果を踏まえて、メルケル首相が事実上「もはや72年間も続いた、異様に長かった第二次世界大戦の戦後は完全に終わった。我々は自分たちのフリーハンドで我が道を行く」との自己主張を開始した、ということになるのではないでしょうか。

メルケル プーチン枢軸

今後、安倍首相の対米従属朝貢外交一辺倒とは真逆になりそうなメルケル政権のトランプ政権との本格的な対峙やEU離脱交渉を巡るメイ首相とメルケル首相の駆け引きの行方も、非常に愉しみになってきました。

尚、トランプ政権に対峙する日本とドイツの本質的な立場の相違については、以下のリンクもご参照ください。
小池新党に怯え,前倒し総選挙を目指す安倍首相のトランプ大統領への朝貢的対米従属の淵源に迫る!
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