アメリカファースト

トランプによる非常事態宣言や米中冷戦の激化は大統領再選に向けた黒幕バノンのアメリカファースト戦略の一環である!

バノン、トランプ大統領
トランプ大統領は次々に暴露される政権内幕情報を炎上商法のネタとして最大限活用しつつあるようですが、これまでのトランプ政権の動きをトレースすると、中国弱体化を本気で推進する貿易戦争の発動、金正恩との首脳会談実現、ジョン・ブレナン前CIA長官の機密へのアクセス権限剥奪、ティラーソン国務長官、マクマスター国家安全保障担当補佐官の失脚、など、暴露本「炎と怒り」の主要部分をリークして訣別したはずのアメリカファースト革命を思想的に体現するバノン氏が公言していたシナリオの通りにトランプ大統領が動いていると言わざるを得ません!
今後トランプ大統領は、さらなるマスコミのフェイクニュースへの攻撃を行いつつ、ロシアンゲート疑惑や与野党との折衝に対処しながら、コアな支持基盤の確保・中間選挙勝利・大統領再選に向けて、アメリカ市民を中心に据えてエスタブリッシュメントを打倒を目指すアメリカファースト路線を徹底的に追求していくことになります。

トランプ青年実業家

1.トランプ氏が大統領選挙に当選した理由としてのバノン氏の世界観
1)特殊で巨大すぎる役割に疲弊するアメリカの解放
2)マスコミやプロの政治評論家が読み違えた選挙民とトランプ氏の連帯
3)選挙結果に対する有権者の動揺と喝采
2.今回の大統領選の帰趨を決した激戦州の情勢
1)オハイオの形勢
2)フロリダの形勢
3.トランプ大統領時代の世界情勢はどうなるのか
1)世界の警察官からの脱却
2)普通の国としてのアメリカの方向性
3)トランプ大統領の勝利に困惑し驚愕する有識者やエリート達

1.トランプ氏が大統領選挙に当選した理由としてのバノン氏の世界観

1)特殊で巨大すぎる役割に疲弊するアメリカの解放

アメリカ役割

トランプ氏が大方の予想を裏切り、アメリカ大統領に当選した理由については、アメリカ型民主主義や資本主義の制度疲労もあるかも知れません。
アメリカの多くの有権者は、「ワシントンの官僚やウォール街の投機家が操る既存体制を解体して、オバマに期待して裏切られた真の変革を多少なりとも実現するためには、しがらみのないフレッシュ?なトランプが良いとの選択」をした、とも言えましょうか。

トランプ氏に関しては、自前の資金力で大資本の操り人形にならずに、政治活動が可能な自主独立的な政治家という意味では、日本で類似の立場を確保していたのは「刎頸の交わり」の小佐野賢治の資金力を活用出来た、あの田中角栄のような気がします。
かつての田中角栄も当初は既存のエスタブリッシュメントで固められた体制に、風穴を開けることが期待されて、今太閤とうたわれたものででした。

それはさておき、特に軍事外交を中心に国際社会に密接にコミットメントするアメリカの非常に積極的な姿勢は、かつてフランクリン・ルーズベルトがアドルフ・ヒトラーの世界征服活動に対抗して、イギリス等を支援するために孤立主義を放棄して以来確立されてきたものと言えましょう。その後は戦後の冷戦期から今日に至るまで「世界の平和と安全にかなり強引に関与」する中で、「世界の警察官」としての特殊な超大国の在り方を追求してきた、と言う状況がありました。
昨今では中東への積極的な関与としてのアフガンやイラクへの直接介入やサウジアラビアへの米軍の駐留などが特筆されます。
そういう経緯がある中で、トランプ氏は、そのようなこれまでのアメリカの国際社会における特殊な在り方を根本的に変革し、『戦略的な世界の平和と安全を中心に考えるのではなく、まずアメリカ及びアメリカ国民の暮らしと安全を第一に考える素直な常識人としての発想』でアメリカを指導することを目指している人物である、ということを選挙民に印象付けることに成功したことが最大の勝因でしょう。
そして、そのようなシナリオを描きトランプ大統領の選挙戦を演出したのが、トランプ氏の選挙対策本部長で2017年8月まで首席戦略官を歴任し、ブライトバートに復帰した後、表面上は暴露本への情報リークでトランプ大統領と訣別したため現在はフリーランスの立場にある、とされているバノン氏ということになるでしょう。

2)マスコミやプロの政治評論家が読み違えた選挙民とトランプ氏の連帯

ニューヨークタイムズ

2016年の合衆国大統領選挙の結果に関しては、基本的には「アメリカの有権者が、これまでの理想主義的な建て前の議論に飽きて、目の前の現実を重視して本音で投票した」ということだ、と想定されます。
出口調査時点ですらも「トランプには投票していない」とコメントしながら、実際にはトランプに投票していた有権者も多かったようであり、多くの有権者が表向きはトランプに投票したとなると「体裁上カッコ悪い」という要素を持ちながらも、秘密が守られる投票所の中では「ドナルド・トランプ」の名前を選んだ、ということになります。
このようなトランプ氏への多くの市民の支持に裏打ちされた驚くほど多くの「隠れトランプ票」が雪崩を打って流れ込んでくることによって、マスコミも専門家も票を大幅に読み違え、結果的にアメリカ市民に騙された、ということになりましょうか。

このトランプ氏が動かした滔々たる票の流れは、見方によれば「投票行動がばれると体裁が悪いものの、どうしても投票してしまうという魔力」が、トランプ氏及びその選挙活動の中にあったということになるんでしょうか。このことは、多少ナチスの台頭を彷彿とさせる要素もありますし、通常巷間に言われる通りアメリカの何年か後を追いかけている日本にも、そのうちに似たような光景が展開するような予感もしています。

3)選挙結果に対する有権者の動揺と喝采

EU離脱
2016年大統領選挙での大方の人間がほとんど想定しない選挙結果という点に関しては、その重大さという一点でも「イギリスのEU離脱を巡る国民投票の再現」という感じもしました。欧州に滔々と流れ込む中東からの移民の流れと、それに対抗する移民排斥派を中心とする極右政党の台頭が懸念されていますが、流石に「流行を先取りするイギリス」は、今回もそのような欧州大陸の時代の流れを驚くべき形で先取りし、「EU離脱」という結果を導き出しました。このような重大な歴史の地殻変動は、世界的に連鎖することがあるのかも知れませんが、2017年は欧州大陸でも、フランス、ドイツをはじめとして重要な選挙があり、今回の英米の驚天動地の選挙結果は特にドイツの政治情勢に影響を与えたとも言え、第四がどのように影響するか、まったく目が離せなくなりました。

尚、2016年合衆国大統領選挙の選挙結果に対する抗議行動の盛り上がりは、あり得ない結果に対する棄権者の抗議のようにも感じられ、「今更行動しても遅すぎる」という点でも「イギリスの離脱反対派の油断に共通」するところも多く感じられます。
突き詰めて言えば「選挙は事前の予想で決まるのではなく、最終的な選挙結果で決まる」ということを常に肝に銘じておかなくては、民主主義における政治活動は出来ない、ということになりましょうか。

、2016年の大統領選挙戦において、飛び出してきたトランプの数々の『暴言』は、マスコミや選挙のプロのような玄人からすれば、「投票結果に直結する目くじらを立てるような最悪の選挙活動であった」でしょう。
しかるに最終盤に飛び出してきたトランプ氏の「女性の敵のような言動に関する報道」も「トランプ氏への投票を決意した有権者からすれば日常のテーブルトーク次元」で大した問題ではなかった?ことを考えれば、一度トランプに流れた現状に対する怒りや閉塞感を覚える「真の変革のマグマ」の大きな流れるのを止めることは出来なかった、ということになります。
このあたりは「暴言、虚言」と既存巨大マスコミが騒ぐほど、かなりの数の有権者は「マスコミの欺瞞を直感」しつつ「トランプ側に立って拍手喝采する循環」の流れが出来上がっていったと考えざるを得ません。そしてそのような喝采は、「いわゆる白人低所得者層」という枠組みを超えて広く深くアメリカの中枢部に広がっていった、ということになるでしょう。
ともかく、トランプが「本来行われるべきだった政策の論理と具体的な行動方針を有権者に届く言葉」で語りかけ、かつ「アメリカの栄光に結び付けた」時点で前回のオバマの「変革=Change」に似た「大統領選挙の勝利の方程式」がゆっくりと、しかし確実に動き始めたのではないでしょうか。
このあたりの魔術のような巧みな選挙戦術を主導し、計算通りに選挙戦を勝利に導いたのが、トランプ大統領の選挙対策の責任者であったバノン氏の最大の功績になるでしょう。

2.2016年の合衆国大統領選挙の帰趨を決した激戦州の情勢

1)オハイオの形勢

オハイオ州
オハイオは、選挙人18で、ここ何回かの選挙で民主、共和の双方が交互に勝っていた激戦州であるが、全米の縮図的なところがあり、トランプ氏にベッタリと観られた白人貧困層だけでなくリベラルな白人中間層も多く、一見したところではトランプ氏に大量の票が流れず、クリントンが有利な要素も強い、と事前には想定されていました。
そういう中で、もしトランプ氏がオハイオを取れば「隠れトランプ支持者が予想以上に多い」ことが証明され、全米の票の流れも想定外な状況になりうる試金石とも目されている州であったと言えましょう。
結果的には、ここでトランプ氏が勝利したことで、クリントン陣営に衝撃が走り、全米のマスコミやプロの政治評論家達も自分たちの票読みが実は間違っていたのではないか、ということに遅まきながら気づくことになります。

2)フロリダの形勢

フロリダ州
フロリダは、トランプ氏がメキシコ国境の壁建設公約等で攻撃対象にしていたヒスパニックも多く、オハイオなどと違って白人も貧困層が少なく富裕層高年齢層が多いということで、基本的にはクリントン圧勝、少なくとも勝利は間違いない、とされていました。
そういう中で、フロリダでの最終的な選挙結果を観れば、実際のところ「多くの白人有権者層はブッシュ時代のネオコンやオバマの人道的中東介入政策を本音では嫌っていた」のではないか、と思えるような状況が現出されました。
すなわち、アメリカの主流とでも言うべき有権者層に、このあたりで一度「トランプの掲げる国内重視、世界への介入縮小方針で行ってみるのがアメリカの国益にもなるのではないか」との「広範な世論形成や世界認識が出てきた」と言えるのかも知れません。
結局、トランプ氏を勝利に導いたのはいわゆる白人貧困層だけではなく、それ以外の「広範な隠れ支持者?が雪崩現象的にトランプ氏の単純明快なアメリカ第一主義の論理と公約に共鳴した結果」ということになりましょう。

確かに現在のアメリカは、「軍事力は世界に冠たるレベルを未だに維持していますが、国内のインフラの老朽化は深刻で、新規にインフラを整備してきた中国の沿海部の大都市エリアや日本には太刀打ち出来ない」ことは、アメリカの心ある人々からすれば火を見るより明らか、と言えましょう。
このあたりに関して、トランプが公約する巨大なインフラ投資の魅力は大きく、フランクリン・ルーズベルトのニューディール政策あるいは、ヒトラーのアウトバーン建設による景気回復を想起させる要素もあり、レーガン時代の軍事予算大幅増額より、余程アメリカ経済及び世界経済に好影響を与えそうな予感もあり、それにつれて世界の株価も上昇傾向にある今日この頃です。

3.トランプ大統領時代の世界情勢はどうなるのか

1)世界の警察官からの脱却

海兵隊
2016年の大統領選挙戦中のトランプ氏の発言を聴いていると、「アメリカが戦後維持してきた世界の警察官としての役割を放棄して普通の国になりたがっている」ように思われてなりませんが、そうなった場合の世界情勢は果たしてどうなってしまうのでしょうか?

まず考えられるのは現代に生きる市民達が、非常に長期にわたった第二次世界大戦の「戦後」の終焉を目撃し、新たな世界秩序が再構築される瞬間を眼前にする可能性があるのではないか、ということです。
第二次世界大戦における最大の主戦場であった欧州の東部戦線でナチス・ドイツを壊滅に追い込んだソビエト連邦は、オスマン帝国のように顕著な衰退期間を過ごすこともなく1991年にあっけなく崩壊してしまいました。今回はソ連崩壊後に一極によるゆるやかな覇権体制を構築していたアメリカも、トランプ大統領の登場とともにようやく唯一の覇権国の地位を放棄し「普通の国」になっていくということなのかも知れません。
しかし、考えてみれば第二次世界大戦の戦後は、「今日の展開の早い世界情勢の中では、例外的に異様に長期間維持されてきた」と痛感せざるを得ないでしょう。すなわち2017年は第二次世界大戦終結以来72年を経過したわけですが、例えば日露戦争終結の72年後といえば1978年ごろとなりますが、もし1978年に日露戦争のことを日常的に意識したり、今日の「戦後」を生きる感覚で「日露戦争後」を感じている人間は誰もいなかったのではないでしょうか。
そういう意味でも、今日の時点で第二次世界大戦における「連合国の完璧な無条件降伏による勝利」と「枢軸側の壊滅的な敗戦の意義」を、かつての枢軸国の一員として噛みしめてみるのも世界史的な意義があるのかもしれません。

2)普通の国としてのアメリカの方向性

デトロイト廃墟
トランプ氏の世界戦略の基本には、「余裕を失ったアメリカは、もはや安保タダ乗り論を一切許せる状況にない」という論理が頭をもたげてきている印象があります。
アメリカが同盟国との間に防衛協定等を締結し、「空理空論的な戦略的な優位を維持しようと努力」している間に、「アメリカの保護のもとで格下の同盟諸国が応分の防衛費の負担をすることなく、ぼろ儲けしているのを指をくわえて眺めるのは到底我慢出来ない」ので、「アメリカも同じ次元で普通の国として、可能な限りの儲けの分け前に与るのが当たり前である」、という非常に単純で当然の論理が、トランプ氏及びその熱狂的な支持者の発している世界へのメッセージとなりましょうか。

このような常識的な当たり前の認識と論理は、ワシントンの戦後の政界の常識の延長線上からは、なかなか出てこない発想でしょう。そういう中で政界のアウトサイダーとしてのトランプ氏は、そういう「アメリカの普通の人々から観れば異常ながら、ワシントンの政治エリートからすれば金科玉条だった世界観」をぶち壊して、アメリカの戦略を「真の意味でのアメリカファースト」あるいは「アメリカの普通の市民ファースト」な「普通の国の意識」にコペルニクス的に転回することを目指しており、そこにトランプ革命の意義と目的がある、と言えるでしょう。

そういう文脈でトランプ氏の言動を見直せば、トランプ氏は非常に一貫性のある人物であり一連の選挙戦での発言は、暴言どころか極めて普通の常識的な発言録となりうるわけであり、戦後以来オバマまでの指導者たちの掲げてきた「理想に基づく戦略の数々」の方が、将来のある時点で振り返ると「アメリカ市民をないがしろにしながら、極端な政策課題を掲げた異様な国家を長らく維持するような、あり得ない政治状況が具現化していた時代だった」と映ることになるのかも知れないのです。

ちなみに、トランプ陣営のこのような世界観や政治哲学には、バノン氏の考え方がほぼそっくりそのまま反映されている、と言っても過言ではないでしょう。

3)トランプ大統領の勝利に困惑し驚愕する有識者やエリート達

トランプ対メディア
こうしてみるとトランプ氏の世界観を奉ずる政権に対処するには、これまでの長期にわたる戦後戦略の延長線上で発想していては、なかなか柔軟に対応できない、ことになりましょうか。
アメリカの有識者やマスコミの困惑や驚愕ぶりは、そのような混乱の有様を示すパニックのようにも見えますが、意外に証券市場が安定あるいは、トランプの政策に期待して堅調に推移しているのは、経済界の柔軟性を示す証左でもあり、興味深いところです。

今回の選挙戦を特集した番組の一部に、特に911以降の中東への本格介入後のアメリカ軍の人的被害の大きさや社会的なダメージを取り上げたものがありました。すなわち中東介入におけるアメリカ軍の犠牲者そのものは数千人規模のようであるが、そのまわりには大きな精神的ダメージを受けて帰国後に自殺したり、心的外傷を発症するアメリカ軍関係者は何倍何十倍も存在している状況があります。
これはまさに映画「ランボー」の主人公のように中東の戦地からの帰還後に、アメリカでの生活になじめなかったり、退役後に満足な収入のある職に就けないケースが数多く発生しているということでもあるのです。
そのように観てくると、さしもの超大国アメリカの無敵のアメリカ軍も、そろそろ対外武力介入政策を放棄して本格的な癒しの時期に移行していかないと社会・経済的にもたないところまで疲弊しているように思われてなりません。確かにオバマ前大統領も「世界の警察官」をやめるとは言っていましたし、中東からの一定の撤収方針は示しましたが、アメリカの戦略方針を劇的に転換するところまでのインパクトはありませんでした。
そういう意味でも、トランプ氏の世界戦略の転換と国内重視のアメリカファーストな政策は、アメリカの広範な民意を率直に反映しているということになりましょうか。

このようなバノン流の世界観を現実のワシントンやニューヨークに巣食うエスタブリッシュメントや欧州の批判的な同盟国との関係性の中で、どこまで維持出来るかは、トランプ大統領の再選可能性にも関わってくる興味深い事案になりそうです。

ちなみに、そのようなアメリカの内向きへの戦略の転換は、「新たな世界新秩序の構築」を模索するプーチンのロシアやアジアにおける中国、ひいては「欧州においてEUをベースにひそかに新帝国を建設しつつあるドイツ」あたりの思うツボということになるのかも知れませんが。

本稿の延長線上でトランプ大統領のラストバタリオン的な性格を詳しく分析した以下のリンクもご参照ください。

トランプ=ラストバタリオンのアメリカ乗っ取り=ナチ化とエスタブリッシュメント側のマスコミやマイノリティを巻き込んだ反撃がアメリカ大混乱の真相である!

トランプ大統領は米中冷戦、西側同盟解体=バノン主義=アメリカファースト路線と毛沢東的な人民独裁手法で大統領再選を目指す!

トランプ大統領の人民独裁的なバノン主義=アメリカファースト路線と毛沢東の文化大革命路線の類似性の検討!

アメリカファースト

トランプ大統領の理想主義的なアメリカファースト路線の延長線上にある、毛沢東による人民ファースト路線の極限の姿としての文化大革命時代の大混乱の真相を解明し、トランプ政権が真に目指す最終的な目的地として疑われるヒトラーが予言したアメリカにおける文化大革命的な分断や混乱の可能性を検証する。

1.トランプ大統領のアメリカファースト路線と現代中国に厳然として残る強固な文革的路線
1)改革開放の論理に抵抗する保守派の拠りどころとしての文革とトランプ大統領のアメリカファースト
2)現代中国における「文革」と「改革開放」の二路線とトランプ大統領のアメリカファーストの関連性
3)劉少奇の「調整政策」の継続としての鄧小平の「改革開放政策」
2.現代中国においても根強い「文革」的見地からの「改革開放政策」批判
1)「万言書」の出現とその文革的論理からの改革開放批判
2)現代に復活した文革期と共通する用語法による改革開放路線批判の論調
3)文革終結直後の毛沢東らの用語法の全面否定と現代中国の政治経済状況
3.中華帝国の伝統的な政治方針に連なるのは改革開放路線か?
1)社会主義中国における毛沢東路線と劉少奇・鄧小平路線の相克
2)中華帝国伝統の賢人主導のエリート主義に連なる改革開放路線

1.トランプ大統領のアメリカファースト路線と現代中国に厳然として残る強固な文革的路線

文化大革命2

1)改革開放の論理に抵抗する保守派の拠りどころとしての文革とトランプ大統領のアメリカファースト

現時点においても、文革あるいは文革的路線というのは、中華人民共和国における「原理主義的な社会主義の表出」及び「毛沢東思想原理主義の表出」とでも言えるだろう。そういう意味では、「改革開放の論理」に抵抗する保守派の理論的・情念的な根拠には文革的なるものが常に息づいているのではなかろうか。
例えば、鄧小平に対抗する保守派の重鎮であった陳雲は、1985年6月に「開放自由化政策は、必要であり正しい政策であるが、断じて社会主義経済体制や社会主義精神文明に対立するものであってはならない」と述べた。過度な商品経済の導入が社会主義体制の根幹である計画経済の主導性を喪失させ、党幹部の腐敗を招き、ひいては社会主義体制を危うくするという危機意識が保守派の一貫した共通認識であった。(1)
トランプ大統領

このように現代中国においては、常に改革開放路線=経済成長一辺倒あるいは経済合理性追求一辺倒の方向性に対する原理的で根強い批判的な精神が、草の根レベルの人民から中国共産党の最高幹部のレベルまで維持されてきたことは特筆に値するのではないだろうか。
翻ってアメリカのトランプ大統領誕生までの状況は、まさに批判勢力なき状況での改革開放路線一辺倒の草の根の人民大衆の声を一切無視した暴走政治が行われてきた、と言えるかもしれない。確かにアメリカにおいては、民主主義は制度としては機能しており、投票によって候補者は選ばれてきてはいたが、本当の草の根のアメリカの声を代弁する候補者は絶えて久しく、多くのアメリカ市民たちは投票を諦め、ワシントンやウォール街のエリートの政治経済を中心とした国家権力の壟断、専横をただ苦々しく白けた面持ちで見つめてきたということではなかったか。

そのように考えれば、中国では国家を根底から転覆し、中国共産党の一党独裁体制を人民の手によって一時的に解体して、経済成長一辺倒の「前期改革開放路線」とでもいうべき、「調整政策」を国家の最高指導者であった劉少奇や鄧小平を引きずり降ろして、毛沢東の理想主義的な路線に大転換する、という王朝末期の農民大反乱モドキの革命劇を一世代前に体験していたわけである。さらについ最近までその文革の指導者たちが政権の中枢に残存していた、というのは特筆に値する、と言えよう。
すなわち、中国共産党は党内に根本的でどうしても相いれないような価値観の相違する対立軸を孕んだ、改革開放と文化大革命という二つの路線が併存していたのに対して、アメリカにおける二大政党制の中には対立軸はなく、選挙が行われていると言っても本当の意味での政治路線の交代は、今次のトランプ大統領の政権発足までは存在しなかった、ということになるだろう。

このような現状を子細に観察すれば、アメリカと中国を比較して真の意味で、どちらが国民の声を政治に反映しているのか、原点に立ち返って再検討しなければならない、と思われてならない。

2)現代中国における「文革」と「改革開放」の二路線とトランプ大統領のアメリカファーストの関連性

趙紫陽

上記のような論点に関して「文革時期」においては当時の中国の現状を「資本主義復活の道へ歩みつつあり」「党内指導部が腐敗堕落して資本主義実権派を形成している」(2)と断じていたわけであり、微妙な違いながらまだまだ「改革開放時期」の方が穏和な問題提起であると言えようか。
このような保守派の発想の根本には、原理主義的な社会主義・毛沢東思想への傾倒があり、その根底には文革的なるものへの郷愁や追慕の念が未だに垣間見えるとも言えようか。そして、このような根強い保守派の抵抗の中で鄧小平も、ギリギリの局面で1987年1月の胡耀邦総書記失脚、1989年6月の天安門事件勃発と趙紫陽総書記失脚と言うように自らの手足とでも言うべき「改革開放の推進者としての側近」を切り捨てつつ、辛うじて改革開放路線だけは維持する、と言う綱渡りを演じてきたのでは無かったかと思われる。

すなわち、毛沢東に並び称される最高実力者たる鄧小平ですら、改革開放路線推進の最大の側近であった胡耀邦と趙紫陽の二人を失脚させなければ生き延びられないほどに、文革路線は根強く現代中国の中枢部を維持しており、経済成長最優先や国内外の政治経済情勢に一切左右されない、草の根レベルの人民の声を代弁しようとする原理主義的な毛沢東思想が、中国共産党の最高レベルにも未だに脈々と息づいていることの証左ともいえよう。

さらに文化大革命的な状況を呈し始めていた天安門広場を埋めた人民大衆に対して、改革解放路線の旗手であったはずの最高実力者,鄧小平は躊躇なく武力鎮圧を命令し、まさに危機一髪の時点で政権転覆を回避したわけであるが、天安門事件というのは一見進歩的ながら実態は人民大衆の意思よりも政権維持を最優先するという改革開放路線の真相を垣間見せる、恐ろしい事実の証左でもあるのではないだろうか。

トランプ大統領22
翻って、アメリカにおいては、特に第二次世界大戦後これまで政財官軍の中枢を支配してきた勢力は、中国におけるような人民大衆レベルの支持に根差した文革派のような抵抗勢力を持たずに国家を壟断してきたわけであり、トランプ大統領誕生までの大統領選挙は、ほとんどどちらが勝っても政策に大差のない、いわゆる出来レースの様相を呈していた、と言えよう。
アイゼンハワー大統領が、退任時にコメントしたいわゆる軍産複合体とも称されるような支配勢力は、アメリカを「トンキン湾事件等のフェイクニュース」でベトナム戦争の泥沼に引きずりこみ、冷戦における軍拡競争を演出し、さらには冷戦が終結するとテロとの戦争と称して再度「大量破壊兵器問題等のフェイクニュース」を駆使してイラク戦争の泥沼を演出するという展開で国力を浪費し、アメリカ市民の真の利益と繁栄の基盤を掘り崩し続けている、というのがトランプ大統領の政権発足までのアメリカの現状であったと言えよう。
また前記のような見解がトランプ大統領の選挙戦以来の主張でもあり、そのような既存の巨大で間違った権力機構からアメリカを解放し、アメリカ市民ファーストの政治を確立するのがアメリカファーストの革命(Make America Great Again)である、との信念と決意を強調し続けているわけである。

まさに人民民主主義的な文化大革命を推進した毛沢東の主張も想起するような、根本的で徹底的な国家権力の転覆を目指すのがトランプ大統領による革命の本質と言えるのかもしれない。

3)劉少奇の「調整政策」の継続としての鄧小平の「改革開放政策」

劉少奇

もし毛沢東が現在生きていたとすれば、このような「改革開放政策」真っ盛りの現状をどうとらえるか興味深いところであろう。また劉少奇は、文革の露と消え去ったが、文革の最大の標的の一人である鄧小平は生き残り、文革直前まで推進してきた「調整政策」を、文革を終結させた後に、直ちに「改革開放」という新しいキャッチフレーズで再開したとは言えないだろうか。
さらに「帝国的な見地」から言えば、文革は「人民大衆に政治参加を促し、民主の基盤を拡大する運動であったが、中華世界では未だに自覚的な自由な市民は育っておらず、文革の惹起した大衆運動は徒に混乱を助長することが多かった」ということになろうか。また文革を終結させる帝国的論理としては「これまで同様に共産党が指導権を再確立し、人民の軽挙妄動を取り締まり、秩序ある中国的特色のある社会主義建設に邁進する」ために「これまでの社会主義建設の問題点を是正し、経済を活性化させるために大胆な政策の採用も辞さない」という方針のもとに「改革開放政策」が推進された、と言いかえることも出来よう。

2.現代中国においても根強い「文革」的見地からの「改革開放政策」批判

万言書

1)「万言書」の出現とその文革的論理からの改革開放批判

「改革開放」の時代に入っても文革期に強調された「社会主義の原理主義的側面」の議論は、常に火種として燻り続けていた。特に1995年暮れには、改革開放政策の現状を厳しく批判する無署名の論文である「万言書」が出現して大きな波紋となった。「万言書」は中国の現状について、社会主義の根幹をなすべき国有部門が急激な凋落を観る一方で、外資・私営・私有部門が急速に成長し、既に社会主義とは言えない状況に至っていると指摘した。このような私営私有部門の肥大化を反映して、新興の資産階級が急速に台頭し、自分達の階級の権益擁護のために政権に参画しつつあり、人民代表大会の議席を得たり、党支部書記に就任していることも強調した。さらにこのような資本主義経済部門や資産階級の台頭で中国社会の貧富の差が拡大する中で、党・行政幹部の深刻な腐敗も同時に進行している。また党員指導幹部にもマルクス主義に対する無関心や無理解が蔓延し、マルクス主義の理念が失われつつあり、まさに資産階級の願いである「共産党の瓦解」を招く危険性が急速に高まりつつあるとした。(3)

2)現代に復活した文革期と共通する用語法による改革開放路線批判の論調

文化大革命333
これは、改革開放路線が「資本主義路線」をひた走っている、とも受け取れる批判であろう。そしてこの「資本主義復活」批判は、「文革期の毛沢東らによる劉少奇や鄧小平らの政治路線に向けて行われた批判と同様の用語法」(4)が遂に復活してきたとも言えるものだった。まさに文革の亡霊が彷徨い出てきたような印象であるが、文革期にはこのような批判に続いてどのような事態が発生したのであろうか。
文革当時は、このような文脈のもとに劉少奇・鄧小平を代表とする共産党指導部に「ブルジョア司令部」が存在するとされ、彼らは反動的ブルジョアジーの立場にたって、ブルジョア独裁を実行し、文化大革命に反対していると攻撃された。その後、劉少奇・鄧小平らは「資本主義の道を歩む実権派」「ブルジョア路線の推進者」「反党・反社会主義」とのレッテルを貼られてパージされた。(5)さらに党の指導官僚の大半は中央機関だけでなく、地方機関に至るまで「党内の資本主義の道を歩む実権派」として厳しい批判を浴びて、その地位から追放され、造反派や紅衛兵により身柄を拘束され、時には処刑にまで至るものも多かったという。(6)

3)文革終結直後の毛沢東らの用語法の全面否定と現代中国の政治経済状況

毛沢東333
それでは、文革後の改革開放時代に入ると、このような文革時代の毛沢東らの用語法は、どのように再解釈されたのであろうか。
1981年に採択された「歴史決議」によって、文革を「全面否定」した鄧小平らの党指導部は、「ブルジョア司令部」「走資派」「実権派」と言った毛沢東の用語法を事実を歪曲した荒唐無稽の誤ったものとして全面的に斥けた。「歴史決議」では「文化大革命で修正主義、資本主義として批判された多くの事象は、実際はまさしくマルクス主義原理であり社会主義の原則であった。「文革によって打倒された走資派」とは、党と国家の指導幹部であり、社会主義事業の中核をなす人々だったのであり、劉少奇・鄧小平を中心とする「ブルジョア司令部」なるものは根本的に存在しなかった」とした。(7)
まさに毛沢東らの文革期の用語法の全面否定であるが、実際のところはどうなのであろうか。劉少奇亡きあと、鄧小平を中心に「再開」された改革開放路線の結実である今日の中国社会は、ある意味では毛沢東らが「純粋」に希求していた「社会主義の原理」からすれば、確かに「逸脱」とも取られかねないであろう。また「改革開放司令部」が、「ブルジョア司令部」「走資派」「実権派」であると指摘されても、そうではないと論証するのは現在の中国社会の現実を観れば困難な印象もあると言えよう。

3.中華帝国の伝統的な政治方針に連なるのは改革開放路線か?

大躍進2

1)社会主義中国における毛沢東路線と劉少奇・鄧小平路線の相克

「調整政策」は、1958年から1960年にかけて推進された「大躍進」「人民公社」「総路線」の「三面紅旗」政策が人為的原因による2千万人とも言われる大量餓死者を出すなどの失政を招いた結果として、これを修正する目的で提起された。(8)
こうして観ると今日に至る革命成就以降の中国共産党の政策は、2つの大きな路線の相互作用で成り立っているようにも観察される。一つは「毛沢東を中心とする純粋な社会主義を原理的に追求する立場」と「鄧小平を中心とする社会主義は堅持しつつ効率的で有効な方法論は何でも採用する立場」となろうか。
そして、「建国から三面紅旗政策」と「文化大革命」の時期は前者が主導しており、「調整政策」と「改革開放」の時期は後者が指導していると言えるだろう。

2)中華帝国伝統の賢人主導のエリート主義に連なる改革開放路線

周恩来

伝統的な中華帝国の方向性からすれば、前者は「人民を前面に立たせ過ぎで、帝国の存立を危うくさせかねない素人じみた政策が多い」が、後者は「賢人主導のエリート政治で、柔軟で実際的な面もあり、危機に際しては果断な措置もとれる」ということで、やはり後者こそが「帝国の法統」を継ぐ路線ではないかと認識している。

尚、本稿で取り上げたアメリカ版文化大革命については、アメリカを混乱に陥れようとするトランプ大統領やバノン氏のラストバタリオン的な姿勢も含めて以下のリンクで詳しく分析しています。
トランプ政権を離れたバノンはヒトラーの予言実現のためアメリカ版文化大革命を扇動する!

<参考文献>
(1)加々美光行:歴史の中の文化大革命 岩波書店 2001 序章 文化大革命をどう見るか p16
(2)加々美光行:歴史の中の文化大革命 岩波書店 2001 序章 文化大革命をどう見るか p18
(3)加々美光行:歴史の中の文化大革命 岩波書店 2001 序章 文化大革命をどう見るか p19-p20
(4)加々美光行:歴史の中の文化大革命 岩波書店 2001 序章 文化大革命をどう見るか p20
(5)安藤正士:現代中国 歴史と近代化 岩波書店 1989 Ⅶ 文化大革命の諸問題 p229-p230
(6)加々美光行:歴史の中の文化大革命 岩波書店 2001 序章 文化大革命をどう見るか p20-p21
(7)加々美光行:歴史の中の文化大革命 岩波書店 2001 序章 文化大革命をどう見るか p21
(8)加々美光行:歴史の中の文化大革命 岩波書店 2001 序章 文化大革命をどう見るか p23

トランプ大統領べったりでアメリカの属国もどきの日本の現状から脱するための具体的な方策を探る!

井伊直弼

小栗忠順

自主独立の精神を欠きアメリカ帝国内での安寧ファーストで対米従属最優先のドナルド・シンぞー関係から脱却するための日本における愛国的真正保守の論理を探る。

1.トランプ政権誕生の意義
2.日本の保守政治家の朝貢的対米従属傾向
3.日本独自の国家戦略に基づく日本のためのグランドデザイン確立の必要性
4.安倍政権の前倒し解散と小池都知事,前原代表による民進党解体,希望の党創設を巡る国辱的ドタバタ劇
5.小池都知事の希望の党が惨敗した要因の分析
6.日本型リベラルの再生としての立憲民主党の可能性
7.政治面における国民意識に訴える自主自立的な誇り高いトリクルダウンの必要性

1.トランプ政権誕生の意義

2016年のイギリスのEU離脱から始まり、特にその後のトランプ政権の成立により、世界は一変してしまった印象があります。
トランプ政権の特徴の一つは、大統領選挙の時点から顕著になっていましたが、既存の巨大メディアやマスコミとの世界認識の対立にあり、マスコミを介さないSNSを中心とするインターネットを活用した市民への直接の働きかけにある、とも言えましょうか。
またトランプ大統領の口癖に「フェイクニュース」という用語法がありますが、まさに事実と真実の見分けは困難であり、昔から「本当の真実は大衆から隠されてきた」という印象が、常に市民の側には内在していたことは間違いありません。ともかく、トランプ氏という全くのアウトサイダーがホワイトハウスという権力の中枢に座ることで、爽快感を感じたり痛快な思いをする市民が、アメリカに数多く存在することは紛れもない事実でしょう。

バノン氏

そのあたりの感覚は実際のところ私自身も共有しており、オバマ氏からトランプ氏に政権が移行して、かつてない面白い時代が到来したことを、非常に強く実感しているいるところです。
ちなみに、トランプ大統領の選挙戦でのアメリカ市民への直接の語り掛けの基調となる部分に多大な影響を与えたとされるバノン首席戦略官に至っては、レーニンを真面目に崇拝するアナキストである、との論評すらあります。これなどはトランプ政権の特殊性が、かなり異様なレベルであることの例証として十分でしょう。

アメリカで起こったことは、その後何年かすると日本にも似たような形で反映するケースがありますが、今後近い将来に橋下氏や小池都知事の活躍以上に衝撃的で日本の現在及び将来に影響を及ぼすような政治的な事件の到来が、間近に迫りつつあることを予感する今日この頃とも言えましょうか。
ヤルタ会談

2.日本の保守政治家の朝貢的対米従属傾向

私個人としては、トランプ大統領の出現に合わせて、日本もいい加減に対米従属の朝貢姿勢を改め、アジアに対しても世界に対しても、戦略的でより主体的な責任感のある立場と行動が要請されてきているのではないか、と痛感しているところです。
オバマ大統領時代までは、対米自立政策を積極的に推進すると田中角栄氏のように徹底的に狙い撃ちされて天寿を全う出来ず、対米従属の朝貢外交姿勢を徹底して貫けば岸信介氏のように現役時代は首相をつとめ引退後も政界の黒幕として長らく安泰である、というのが戦後の日本の政治家にとっての宿命のように位置づけられてきました。

しかるに、どうやらトランプ大統領は、日本の政治家が対米自立路線を突っ走っても、それほど大きな問題にしないような、これまでのアメリカの対日戦略の枠組みを超える柔軟で画期的な指導者である、というイメージがあります。
このことは、戦後長らく対米従属を基本とする朝貢外交を国家戦略の根幹とせざるを得なかった日本にとって、千載一遇の好機が巡ってきた、とも考えられます。

まさにこの好機にいたずらに、これまでの対米従属、朝貢外交姿勢一辺倒の政治方針から一歩も脱却出来ないのは、非常にもったいない行き方ではないでしょうか。

無条件降伏

3.日本独自の国家戦略に基づく日本のためのグランドデザイン確立の必要性

かつて戦前の日本は、大東亜共栄圏構想なる国家戦略を持ち、曲がりなりにも極東における新秩序構築を目指していたことがありましたが、戦後は一転して戦略なき国家に墜して長らく過ごしてきました。

一方、第二次世界大戦敗戦直後に日本とほぼ同様な境遇から出発したドイツは、史上初の欧州葬で追悼されることになったドイツ統一の父であるヘルムート・コール元首相やその愛弟子とも言われるアンゲラ・メルケル首相の指導下で、いつの間にか、EUの実質的な盟主となり、アドルフ・ヒトラーが構想していた欧州制覇を、軍事力よりも実は有効で、長期的な展望が可能な政治力・経済力を駆使して今まさに実現しつつあるところです。さらにもう一歩進めて中東からの難民殺到という現実を観れば、イスラム圏の一部もドイツ第四帝国に組み込みつつある現状かも知れません。
ヒトラー

翻って日本の極東における現状は、日中、日韓、日朝のいずれの関係を観ても、正常に進展している感じもなく、日本が極東の盟主だとは、誰も考えていない、と言わざるを得ないでしょう。

このあたりの日本の将来展望の不透明さに一石を投じ、新たなる戦略で国家のグランドデザインを描き、真の意味で未来に期待とワクワク感の持てるような構想を確立していく必要性を痛感しているところです。

4.安倍政権の前倒し解散と小池都知事,前原代表による民進党解体,希望の党創設を巡る国辱的ドタバタ劇

ちなみに、2017年7月2日の都議選で国政レベルの選挙戦では第二次安倍政権下では初めて大敗した安倍首相は、2017年10月10日に衆議院選挙を行うべく解散を断行しました。当初は、安倍首相が前倒し総選挙で大敗したイギリスのメイ首相の二の舞を舞うであろうと観察していたのですが、野党側のドタバタ劇は安倍首相側の混乱を遥かに上回り、大方の予想を超える選挙戦の様相を呈しました。
都議選大敗安倍首相

すなわち、2017年9月1日に蓮舫代表の勇退に伴う党首選挙を行った民進党は、枝野幸雄を破った前原誠司を新代表に選んだものの、その前原が新代表になったのも束の間の出来事で、突然小池都知事が急遽総選挙向けに立ち上げた希望の党に合流することを決断したのです。
その後、希望の党が民進党の議員全てを受け入れるわけではないことが判明し、リベラル的な世論の受け皿が消滅することを憂いた枝野幸雄を中心とした民進党の一部議員は2017年10月2日に立憲民主党を創設し、民進党は完全な分裂に追い込まれました。
この一連の動きは、安倍政権にとって素直に喜べる追い風とは言えないでしょうが、新党首を迎えて清新な気風で人心一新し、安倍政権に対峙するはずだった民進党がいきなり消滅するという、驚くべき展開でもあり以前から指摘されていた前原誠司の頼りなさが、安倍長期政権を打倒出来るかどうかの瀬戸際でまたもや遺憾なく発揮された、とでもいうべき状況となりました。
それにしても、2017年10月22日の総選挙にもし希望の党が勝利しても、党首である小池都知事は立候補していないため首相にはなれないので、安倍政権の本格的な受け皿にはなりえない形勢であり、希望の党も過半数が取れないであろうことを前提とし、安倍政権あるいは自民党の過半数維持の当面の継続を予想した選挙戦を展開している状況で、政権選択を公言しながら非常に中途半端な選挙となってしまいました。
希望の党小池都知事

5.小池都知事の希望の党が惨敗した要因の分析

もし希望の党が過半数を制したら、小池都知事はミャンマーのアウンサンスーチー女史のように、首相にはならないものの国家顧問的な立場で、国政を指導するということになりかねませんが、西側先進国でそのようなドタバタ劇を演じている国をあまり見かけないだけに、当面の政権運営だけでなく、日本の立場や国際的な地位に影響を与えかねないと心配していました。

結局、小池都知事の思惑は脆くも外れ、民進党の当選目当ての野合政治家たちを吸収した希望の党は惨敗し、私利私欲にまみれた自分ファーストの醜態有り様を見せつけられた市民の側から完全にノーサインを突き付けられる結果になりました。
安倍首相を早期の解散に走らせたのは、そもそも小池都知事が都議選で圧勝し、その余勢を駆って国政に進出する準備を整える前に、何とか民意?を反映した多数を確保して、政権の延命を図ろうとした愚挙だったわけですが、今回は小池都知事がいろいろな政治的失策を重ねたおかげで、自民党は嬉しい誤算とでもいうべき大勝を手にしました。
「神は細部に宿る」とも言いますが、日本の政治状況がこれほど繊細なバランスの上に築かれているとは、不覚にも思っていなかったので、今回の政界のドタバタ劇や小池都知事の失墜ぶりは、まさに他山の石として素晴らしい教訓を提供してくれたもの、と感謝しています。
小池都知事の敗因は、単に旧民進党のリベラルな議員への「排除いたします」「選別する」「全員受け入れる気はさらさらない」と言った一連の発言がマスコミで過剰に取り上げられただけではなく、やはり「自らがリスクを取り衆議院に鞍替えし、首班指名を安倍首相を競う姿勢を見せず、逃げ腰だったこと」「実際問題としてリセットを強調しながら、安保法制や憲法問題等をはじめとして安倍政権との政策の違いがはっきりしなかったこと」「舛添前都知事が引っかかったような狭量でセコイと評されかねない、政策協定書の原案が独り歩きしたこと」などが挙げられるでしょう。

さらに本来希望の党が切り崩す対象は、政策や思想が真逆である民進党ではなく、自民党のハズであり、結局安倍首相が押さえ込んでいる自民党でも右寄りの線に限りなく近い小池都知事が整合性のある政界再編を目指すのは、現時点ではかなり厳しかったというべきでしょうか。
民進党が離党者続出の中で崩壊しかけており、前原誠司と言う党首が頼りなくて、騙しやすいから手を突っ込んでヒトもカネも乗っ取る、というのでは流石に21世紀を迎えて、かつての道徳意識を喪失しつつある日本社会も受け入れることは出来なかった、というのが小池都知事の政権戦略の最大の失敗要因となりましょうか。

アウンサンスーチー

6.日本型リベラルの再生としての立憲民主党の可能性

どうせなら、社会党崩壊で雲散霧消し、まとまった政治勢力としての受け皿を欠いている日本の健全なリベラルな民心の代弁者として、立憲民主党がかつての社会党並みにパワーを取り戻し、自民党のリベラル勢力も吸収して、200議席を超えるような政治状況になれば、日本の二大政党制もかなり安定するような気もする今日この頃です。
立憲民主党枝野

どちらかというと、この日本におけるリベラルな方向性の政治勢力は、これまでも自民党やその延長線上にある保守政治家の対米従属姿勢とは一線を画する政治姿勢を示しており、日本ファーストな健全な愛国思想を発揮してきているような印象もあるので、社会党の事実上の消滅以来自民党を中心とする保守勢力が壟断し、対米従属の朝貢姿勢で政治的な暴走を繰り返す日本の政治状況を日本の市民に取り戻す第一歩になるのではないか、と期待しているというところでしょうか。
小林よしのり,山尾しおり

ちなみに、これまではいわゆる保守の論客として、左翼的立場の政治勢力と論戦することが多かったあの小林よしのり氏が、多くの政策課題における方針を確認した上で、方向性の近さから、今回はハッキリと立憲民主党支持を打ち出したのは印象的でした。
不倫問題を抱えながらも、逆境の中で当選を果たした山尾しおりも含めて、いわゆる健全なリベラルと真性の保守との政治路線の近さが、日本でもようやく小林よしのりをはじめとする影響力のある論客の間で確認されつつある、ということでしょうか。

ともかく、トランプ政権に対抗するアメリカのリベラルのパワーは、多少ねじれ感もありますが、日本では有り得ないものであり、明日の日本の政治のあるべき姿の一つになりそうな気もします。

帰ってきたヒトラー

これなどは、「帰ってきたヒトラー」で蘇ったアドルフ・ヒトラーが現代ドイツの保守政治家の政治姿勢に共感せず、却ってドイツの国土を守り真の市民ファーストを貫く「緑の党」に連帯する心境を抱くのに共通するところもあるのかもしれませんが・・・

7.政治面における国民意識に訴える自主自立的な誇り高いトリクルダウンの必要性

米軍オスプレイ
本来、当面選挙で問うべきは、対米従属朝貢路線の堅持か、治外法権的な日米地位協定見直しをはじめとする対米従属的な立場の見直しによる健全な国家意識の再生か、というあたりにあるような気もするところです。

2017月10月の総選挙では、自公政権側与党は事前の予想通り得票を伸ばして過半数を超え、総議席数の2/3を超える勢いで、維新や希望も含めると改憲勢力は全議席の70%程度を占有する勢いとなってきました。とはいえ、憲法改正反対を党是として結成された立憲民主党も躍進したため、安倍首相も性急で強引な改憲に向けた動きは当面自粛しつつ、慎重に世論の動向を見極めながら安保法制を強行したように機を観て一気に攻勢に出てくるのではないでしょうか。

ともかく、学園スキャンダルに端を発し、安倍首相に解散を決断させ、自民党政権の屋台骨を揺るがすかに観られた日本の政局の混乱要素は、結果的に民進党解体、自公政権与党の優位の確立、改憲勢力の絶対多数確保という、正に安倍首相が思い描いた構図を遥かに上回るような果実を日本の保守勢力にもたらしたということになりました。

久々に長期政権を維持する安倍首相の政治的才能は、流石に野党の比ではないことが証明された格好ですが、学園スキャンダルで安倍政権に批判的だった世論の動向は伏流水のように行き場なく、さまよい続けている印象も否めません。

その一部の流れを汲み上げたのが、立憲民主党だったわけですが、まだまだ政権交代を実現するようなパワーを確立するには至りませんでした。そういう意味では、今回の総選挙は安倍政権に批判的な世論の機微を十分に吸い上げることが出来ない結果に終わったわけで、大げさに言えば民主主義の危機ともいえるのかもしれません。

そういう意味で、民主党台頭時にも言われた政権交代可能な健全で強力な自民党に対抗する勢力の確立が、日本の民主主義の健全な発展のためには必要不可欠と認識しています。

さらにもう一歩進めて、新自由主義的な立場や鄧小平が改革開放で唱えた先富論でも、いわゆる経済のトリクルダウンが言われ、「フロントランナーがまず目一杯儲ければ、その影響で社会全体にもその豊かさが滴り落ちるように広まっていく?」と言う話がありますが、同様に「政治や国民意識においてもトリクルダウンと言うのがあるのではないか」、と私自身は考えています(ちなみに、日本における新自由主義の旗手であった竹中平蔵氏は、このところの西側先進諸国の社会情勢も踏まえて、経済面でのトリクルダウンの幻想性を指摘しているようですが)。
すなわち、現状の日本社会においては、2017年11月のトランプ大統領訪日で安倍首相が証明したように、政界トップが対米従属の朝貢的な姿勢に凝り固まっているので、その影響が国民意識全体にトリクルダウンして健全で独自の国家戦略や愛国心が育たず、アメリカと完璧に一心同体のあたかもアメリカの51番目の州のような異様な国家体制になっているが、日本でもトップの意思が変化し対米従属の朝貢的姿勢を止めて日米地位協定のような不平等条約を撤廃する方向で動き出し、独自の国家のグランドデザインを描き、アメリカの戦略から自立して自前の戦略を構築出来るようになれば、日本全体の国民意識においても健全でまともな愛国心や国家への誇りがトリクルダウンしてきて、より実り豊かで、世界に貢献出来る誇り高く自信に満ちた日本を取り戻せるのではないか、と考えているところです。

尚、現在の自民党政権の異様な対米従属、朝貢外交姿勢については以下のリンクにて詳しく分析しています。

トランプ大統領ファーストでアメリカの属国のような日本の現状と自民党政権の限界!

トランプ大統領ファーストでアメリカの属国と化した日本の現状は日米地位協定に明記されている!

トランプ大統領ファーストでアメリカの属国たる日本の現状を分析する!

トランプ大統領の再選は毛沢東風の人民独裁的手法を駆使したバノン主義=アメリカファースト路線で約束されている!

<トランプ大統領の発動したアメリカファースト革命と文化大革命,農民大反乱の類似性>
トランプ大統領は次々に発生する政権内幕暴露を当に炎上商法の手法で十全に利用しつつあるようです。
2018年段階でのトランプ政権の動向は対中国政策、対イラン政策の強硬路線へのシフトや北朝鮮政策の対話路線への変更、マクマスター、ティラーソン解任など当にバノン主義を忠実にトレースしつつあり、実態としては水面下でのトランプ=バノン枢軸がより一層の強化が進んでいるようにも見受けられます。

ちなみに、バノンはトランプ政権では首席戦略官として大統領就任演説の骨子やイスラム過激派の入国制限を志向する大統領令、TPPやパリ協定離脱などの重要政策を主導し、2017年8月の首席戦略官退任以降は、保守系メディアサイトのブライトバートに戻り、中間選挙に向けた共和党トランプ派拡大に向けた活動とトランプ支持層への教育宣伝に明け暮れ、手始めに2017年9月のアラバマ州上院議員補欠選挙で共和党主流派が推す候補を破り、「支配階級と戦う革命」の勝利を宣言しています。(ちなみに、このバノン氏が推していた候補は、本選挙で民主党に敗れ、共和党は上院の貴重な一議席を失ったが、バノン氏は民主党を勝たせるための共和党主流派の陰謀を指摘していた)

その後、バノン氏は暴露本への情報提供を巡ってトランプ大統領の怒りを買い、表面上は完全に失脚したかに観られていますが、トランプ政権のバノン主義への傾斜は、過激なまでに進行してきている情勢です。

結局、中間選挙の結果には、ある意味では不気味なほどに、ニューヨークタイムズやワシントンポストが満を持して放ったトランプ政権内幕暴露が、影響しなかった印象もありました。
すなわち、トランプ大統領の岩盤支持者達は、多少トランプが批判されてもビクともせず、当にフェイクニュースと受け流して、トランプのTwitterに走り、反トランプの民主党支持者たちは、最初からトランプを詐欺師紛いの怪しげな不動産屋としか観ていないので、これまた政権の内幕の混乱を、それみたことかと囃したてるものの、元からトランプや共和党に投票する気が無いので、選挙結果には影響しないということでしょう。

逆にトランプ大統領としては、今回の中間選挙で共和党の中の反トランプ分子である伝統的な自由貿易主義者やネオコン系の対外干渉主義路線をクレンジングし、ミニトランプを大量に議会に送り込むことに成功したわけで、お膝元の共和党のトランプ化が進行しました。
また突き詰めて考えれば、保護主義や対外不干渉、国内産業保護は、基本的にリベラルや労働団体の主張とも符合する要素があり、今回の下院の結果もまんざらトランプ大統領にとって最悪の結果でもないかもしれません。
何と言っても、信じられないような逆風の中で、トランプ大統領は、そのロックスターのようなカリスマ性、アイドル性を遺憾なく発揮し、まさにひとりで民主党の地滑り的な大勝を阻んだワケで、上院での勝利と併せて考えれば、これこそは奇跡的な途轍もない勝利とのトランプ大統領のTwitterに首肯せざるを得ないのではないでしょうか。

そういう意味では現時点では、下院の議会運営を懸念する見通しが大勢ですが、トランプはオバマ前大統領の轍を踏むことなく、結構無難なディールをこなしていきそうな気もするところです。

1.文化大革命発動時の毛沢東の政治方針と類似するトランプ大統領の状況認識

毛沢東,文化大革命
トランプ大統領,就任演説
ここでアメリカにおいて既成秩序の転覆を図りつつあるトランプ大統領が目指す方向性について、再確認しておきたい。
トランプ大統領は選挙期間中から就任演説まで一貫して、「アメリカの主権を既成のエスタブリッシュメントからアメリカ市民の元に取り戻す」と発言し続けてきており、大統領就任後もその姿勢にブレは無いように読み取れる状況である。
多くの報道番組において、ゲストとして招かれた中国人記者もコメントしているが、このような方向性は毛沢東の文化大革命期における発言に非常に酷似している、と考えてよいかもしれない。

2.トランプ大統領の革命が目指す既存エスタブリッシュメントと秩序の破壊

デトロイト廃墟
すなわち、「これまでワシントンの政界やウォール街の財界のエスタブリッシュメントから無視され続けてきた、アメリカの草の根の市民の声を吸い上げて、ワシントンの中枢に乗り込んだトランプ大統領自身が率先して、既存秩序をぶち壊して、アメリカを市民の手に取り戻す」という運動は、まさに毛沢東が文化大革命で推進した運動との共通点が多い、と指摘することが出来るのではないだろうか。

そういう意味で、中国において毛沢東が発した1966年5月「通知」になぞらえて言えば、トランプ大統領の革命は「アメリカ市民という一つの階級が、アメリカの既成のエスタブリッシュメントという一つの階級を覆す政治大革命」を起こすことであり、その目的は「現存している既存エスタブリッシュメントが設定した全ての秩序を破壊する」ことにある、ということにもなるだろうか。

3.トランプ大統領のアメリカファースト革命を推進するバノン氏のレーニン主義的政治信条

レーニン
トランプ大統領が手始めにやり玉に挙げているのが、既存のマスコミであり、「マスコミの流している多くのニュースはフェイク・ニュース」とされ、本当の真実は「現代版の壁新聞」にもなぞらえられる「トランプ大統領自身のtwitter」やスティーブン・バノン氏が復帰して主宰する「ブライトバート・ニュース」等のニュースサイトのようなインターネットを介して市民に直接働きかける情報伝達手段の側が影響力を拡大している。
実際アメリカ市民の側でも「質の低下したマスコミよりも、マスコミを経由しないインターネットを介した直接情報が頼りにされている」という傾向が出てきているようである。

ニュースサイトの経営者からトランプ政権の首席戦略官となっていたスティーブン・バノン氏自身によれば、バノン氏は「帝政ロシアという強力な国家を解体したレーニンに対して畏敬と崇拝の念を抱いている」ということである。
これなどはバノン氏の意識がまさに「毛沢東が文化大革命で目指していた政治目標にほぼ合致するもの」とも考えられ、そういう人物と意気投合し政権の中枢に据えたトランプ大統領本人の政治信条もバノン氏と大同小異である、と考えてよいかもしれない。

このあたりに関しては、「帝政ロシアを解体したレーニン」や「文化大革命を発動した毛沢東」と類似した政治信条を持つ人物及び政策遂行チームを、民主的な選挙で大統領に当選させたアメリカの市民の「既存のエスタブリッシュメントや秩序に対する怒りのすさまじさ」を痛感せざるをえないだろう。
その先に立ち現れてくるのは、ヒトラーがかつて予言したラストバタリオンにより混乱の渦と化した、弱体化しきった悲惨なアメリカの姿なのかも知れない。

4.オルトライトの黒幕としてアメリカ版文化大革命を目論むバノン氏

パリ協定離脱トランプ大統領

バノン氏はトランプ政権誕生早々に主導的に導入したイスラム圏からの入国制限に関する大統領令への世論や司法からの反発やオバマケア廃止における与党共和党議員への恫喝的な多数派工作の失敗などが重なり、さらには事実上オバマ前大統領シンパとも想定されかねないリベラルな傾向のイヴァンカ、クシュナー夫妻との権力闘争に敗れ、国家安全保障会議・NSCのメンバーから外されるなど完全に失脚したかに観られていた。そうした逆境的な日々を過ごしていたかに見えたバノン氏は、その後に勃発したロシアンゲート事案の急展開とトランプ政権の先行きに関する不透明感の増大に反比例するかのように、世論工作や支持率低迷状態打開のプロで、政権建て直しのために不可欠な存在として、影響力を拡大しつつあったが、イヴァンカ・クシュナー夫妻やティラーソン国務長官らの良識派やリベラルな立場からの強硬な反対を押し切り、トランプ大統領が地球温暖化防止に関するパリ協定からの離脱を昨年の大統領選挙時の論理を振り回しながら宣言したことで、バノン氏の完全復権が確認されたと言って良いだろう。

穿った見方をすれば、ロシアンゲート事案の急展開、特にバノン氏の政敵であるクシュナー氏のロシア大使への秘密ルート開設疑惑暴露などの事案そのものが、バノン氏らのアメリカファースト革命派が、トランプ政権内のリベラル派やグローバリスト追い落としのためのリークや陰謀ではないか、との考え方も出て来かねない状況ではある。
このあたりのリークについては、アメリカとの関係改善を目指しているロシア側にとっても不利な展開でもありロシア情報機関からのリークとは考えられず、まさにバノン氏らアメリカファースト革命派が、アメリカのエスタブリッシュメントともロシアとも無関係で、アメリカ帝国解体を最優先課題とするラストバタリオンの一員である証左にもなりうるかも知れない。
ちなみに、バノン氏は2017年8月18日段階でホワイトハウスを離れ、古巣のオルトライトの総本山であるニュースサイトのブライトバートに復帰し、より自由な立場でトランプ大統領個人と連帯しつつ、アメリカファーストの原理をより扇動的に唱道し、エスタブリッシュメントを打倒するアメリカ版文化大革命を強力に推進することを目論んでいた。この活動の手始めに2017年9月のアラバマ州の上院補欠選挙の共和党候補者選びに参戦し、共和党主流派候補を破ることに成功した。バノンはこの選挙結果を踏まえて「アメリカ版文化大革命の一環」と表現し、「エスタブリッシュメント打倒のための闘争継続を高らかに宣言」した。

アラバマの補欠選挙では、四十年前のセクハラスキャンダルの影響もあってか、バノンの擁立した候補が惜敗したが、今回の選挙全般を通じて、今後のバノンの戦略や状況認識が明確化したとも言えるだろう。
すなわち、バノンは今後アメリカファースト革命を断行するためには、ホワイトハウスを支配しているだけでは、権力基盤として十分でないことを、ホワイトハウスの中枢で活動しながら痛感したと推測される。
バノンは、アメリカファースト革命を断行し、国家体制を根底から変革するためには、議会の多数派をトランプ信者にしてしまわなければ、到底状況を動かせないことに気付いたのであろう。

そういう問題意識を踏まえた、今後のバノンの戦略としては、トランプ政権誕生に向けて取り組んだ2016年の大統領選挙の成功体験も十全に生かしながら、2018年の中間選挙でトランプ派(実はバノン派)の共和党議員を出来る限り多く当選させて、ホワイトハウスと議会の両面からアメリカを完全にひっくり返すこと、と言うことになるはずであった。
その後、トランプ大統領とバノン氏は、暴露本「炎と怒り」の執筆過程におけるバノン氏の情報リークに絡んで、完全に訣別したかに見受けられるが、現時点では真相は藪の中である。

いずれにしても、暴露本「炎と怒り」に関するバノン氏のリークが表沙汰になる寸前までは、バノン氏のようなアメリカ帝国解体を公言するレーニン主義者(実態はラストバタリオン?)と大同小異なアメリカファーストを政治信条とするトランプ大統領の二人三脚のもとで、アメリカが国内外に対してどのような政策を展開していくのか、に注目が集まっていたが、2018年1月末の段階ではバノン氏が強調してきたアメリカファーストの世界観とトランプ大統領の政策遂行方針の関係性について不透明感が漂い始めていることは否定出来ないところであろう。

尚、本稿とも関連するアメリカファーストとアメリカ版文化大革命の連関性と中国における民意の直接的な一環としての文化大革命的な動きについて、以下のリンクでも詳しく取り上げています。
トランプのアメリカファースト路線でヒトラーの予言したアメリカの文化大革命的混乱状況が完成する!

トランプ大統領は米中冷戦、西側同盟解体=バノン主義=アメリカファースト路線と毛沢東的な人民独裁手法で大統領再選を目指す!

バノン、ルペン

実はレーガン大統領の業績に憧れていると言われているトランプ大統領は、突如これまで不倶戴天の敵と見做されていた金正恩との電撃的な首脳会談を実現しましたが、政権運営の根本のところではアメリカファースト革命の理論的支柱であるバノンとも密かに連繋して手に手を携える二人三脚を踏み出し、ワシントンの既存エスタブリッシュメントの支配体制を解体して、市民に国家を取り戻す活動に邁進しつつある風情も見え隠れしています。

次々に暴露される政権内幕を炎上商法として、逆手に取るかのような行き方も、当にバノン流を彷彿とさせるところがあります。

ちなみに、トランプ大統領の昨今の人事や政策を追跡していると、ティラーソン国務長官やマクマスター国家安全保障担当補佐官の解任、強硬で保護貿易主義的な対中国制裁の発動を皮切りに、遂には米中新冷戦の様相を呈し始めた中国封じ込め政策の急展開など、当にバノンがまた政権の中枢に躍り出たのではないか?と勘繰りたくなるような事案が目白押しといった勢いです。

バノンの対中認識とトランプ政権の戦略

1.トランプ大統領の政策の目玉である減税とインフラ投資はどのように実現されるのか
1)ロナルド・レーガンの業績に憧れるドナルド・トランプ
2)トランプ大統領によるミラクル実現の可能性
2.大統領再選を目指すトランプはバノンのアメリカファースト路線から足抜け出来ない
1)バノン氏のアメリカファースト路線とコアな支持者の強い連関
2)バノン氏のトランプ政権からの決別

1.トランプ大統領の政策の目玉である減税とインフラ投資はどのように実現されるのか

1)ロナルド・レーガンの業績に憧れるドナルド・トランプ

レーガン

本件については、トランプの心酔しているらしいロナルド・レーガン時代の方針を援用してくるのではないか、とも認識しているところです。
かつてのレーガン時代には「減税+軍拡」を中核にレーガノミックスとも称される経済政策を遂行し、前任者のジミー・カーター政権時代の閉塞した状況を脱却させ、いわゆる規制緩和や新自由主義的な方向性もはらみつつ、実質的にケインズ流の経済効果を生み出しました。さらには副産物として、軍拡についてこれなかったソ連が、ゴルバチョフの過激な変革路線の影響で一方的に弱体化して、予想以上に早く冷戦が終結することで、平和の配当も獲得するというラッキーな状況もありました。

ちなみに、レーガン時代は「軍拡による景気拡大政策」だったため、実際のところ「軍拡で製造された武器を消費するために中東が戦場として活用」されたり、「アメリカ軍の積極的な直接介入につながってアメリカの人的な被害が増大」したりといった「負の要素」もありました。それに対してトランプ氏の場合は、より平和的に「インフラ投資に1兆ドル規模の莫大な投資」するということでもあり、本来は「意外にリベラルな知識層や平和主義者といった民主党支持層にも浸透しやすい」はずではあります。

2)トランプ大統領によるミラクル実現の可能性

マッカーサー凱旋

トランプ氏の政策により莫大なインフラ投資を行った場合に、景気拡大や税収増大に関して瞬時に効果が出てくるとは考えられません。
そういう中で、大型減税が先行して実施されれば、インフラ投資と景気拡大、税収増大の間のタイムラグの発生により、一時的な財政不均衡が生じてくるのは間違いないところでしょう。
そうなった場合に喫緊の課題になってくるのは、多少細かい話になりますが、ある程度までの債務拡大を時限的に容認するためのアメリカ議会の財政再建派の議員たちの説得と経済運営円滑化のためのドル安容認に向けた金融緩和策の推進ということになりましょう。

ちなみにアメリカの大企業も、特にリーマンショック以降は突発的な経済の危機的な状況に対応するために、その儲けを賃金に回したり、設備投資などに回さずに、内部留保として蓄えることに専念しており、その額が巨大化しているようです。
現時点では、既にアメリカの証券市場がトランプの新経済政策に期待して堅調に推移している流れがありますが、その延長線上でトランプ政権の1兆ドルインフラ投資が実行に移され景気拡大の機運が漲ってくれば、各企業がその莫大な内部留保を設備投資や賃金などに回して、経済が活況を呈して、税収増大につながる可能性もあるかも知れません。

2016年の大統領選挙を全体的に観ても、トランプという人物は到底不可能と考えられていた合衆国大統領に当選するという偉業を、マスコミやワシントンのエリートに屈服することなく、バノン氏と二人三脚で構築した自らの信念を貫きつつ自分流のやり方で成し遂げました。
そう考えると、トランプ氏が選挙の奇跡に続いて、経済の奇跡を実現出来ないと誰が断言できるでしょうか?!

2.大統領再選を目指すトランプはバノンのアメリカファースト路線から足抜け出来ない

1)バノン氏のアメリカファースト路線とコアな支持者の強い連関

今後、トランプ大統領が再選を具体的に視野に入れる場合に、コアな支持者から遊離したオバマモドキの中途半端なリベラル路線やグローバリスト路線を採用することは、まさに命取りということになりかねません。
そういう意味では、例え一時の気の迷いで、イヴァンカ・クシュナー夫妻やティラーソン国務長官らの良識派的な路線に歩み寄ったとしても、政策の基調や世界観をマスコミ受けの良い、リベラルで進歩的な路線に全面的に変更するのは、到底出来ない相談である、と言わざるをえないでしょう。

結局、トランプ大統領には、どう転んでもバノンのアメリカファースト革命路線という反エスタブリッシュメントで反グローバリズムを基調とし、マスコミを敵にまわしつつ、繁栄の光と陰の陰の部分の代弁者として、世論の分断を厭わず、アメリカファーストを追求する方向性しかない、と想定されます。
このような、ブレない路線の副産物とでも言うべき結果として、2017年6月末の段階で、かつて物議を醸し、全米あるいは全世界的に混乱を巻き起こしたあの政権発足初期のイスラム圏六カ国からの入国制限に関する大統領令が、ここへ来て連邦最高裁から一部制限付きながら執行許可という形になりました。
これは、トランプ政権にとっては、久々の政治的な勝利というべき成果となりそうですが、当該イスラム圏六カ国からの入国制限に関する大統領令を主導したバノン首席戦略官にとっても、政権内部での権力闘争を益々有利に展開する手札と言えるでしょう。
トランプ大統領も、再選を念頭に遊説先で支持者を前にアメリカファーストの線で演説する時には、熱狂する聴衆のパワーを体感しつつ、常にバノン氏の存在感の大きさを再確認し続けているのではないでしょうか。

2)バノン氏のトランプ政権からの決別

ちなみに、トランプ政権内で良識派、国際派と目されるイヴァンカ・クシュなー夫妻やマクマスター、ケリー両補佐官らと権力闘争、路線闘争に明け暮れたバノン氏ですが、2017年8月段階で遂にホワイトハウスを離れ、古巣のオルトライト系ニュースサイトであるブライトバートに復帰し、より自由で過激な立場からアメリカファースト路線を唱道することを選択したようです。
反エスタブリッシュメントの旗手であるバノン氏がホワイトハウスの中枢であたかもエスタブリッシュメントの本丸に居座るというのもかなり、戯画的ではありましたが、今後は自由なフリーハンドという強力な武器を手にし、ホワイトハウス中枢=トランプ大統領個人により効果的に働きかけることで一層の混乱と波乱要素を世界に提供しそうな雲行きを感じさせます。
ともかく、バノン氏はホワイトハウスで首席戦略官という中枢の地位にトランプ政権発足以来の数か月間就任していたという事実は誰も否定出来ないわけですが、これまでのアメリカの政治史上でバノン氏のような徹頭徹尾アウトサイダーで、現体制=エスタブリッシュメントをアンシャンレジームとして粉砕することを目指して政権入りした人物は居ませんでした。
このことは、トランプ政権の存在意義として、どんなに強調しても強調しすぎることはないほどの画期的な事象であると言えるでしょう。
たとえバノン氏がホワイトハウスから離れたとしても、いわゆる極右、オルトライト、アメリカ至上主義がアメリカの政権を一時的にもせよ乗っ取った事実は覆い隠しようもないことです。ただし、バノン氏も流石に自らの政治信条でホワイトハウスの中枢を運営するほどの準備は、未だに整っていなかったため、一時的に下野して戦線を整理し、より本格的で徹底的で、具体的な政治的果実をつかみ取る方策を再確認する必要に迫られたということになりましょうか。

確かに、これまでワシントンを牛耳ってきたエスタブリッシュメントに対して、理想主義的な政治信条と正義感、使命感のみで闘いを挑んでも、あたかもドン・キホーテのように弾き飛ばされて、何の成果も得られず無力感に苛まれるのが落ち、となりかねません。
しかし、トランプを大統領に押し上げたアメリカのこれまで置き去りにされてきた人々の強い怒りや真の改革への切望が、渦巻いているのも紛れもない事実なのであり、そのような市民のパワーを今度は政策実現に向けて分散化することなく結集し組織化して、政治的な梃子として汲み上げていくことが必要になるでしょう。
このあたりは、毛沢東が中国の農村で農民層を極めて巧みに組織化して、革命のパワーに仕立て上げた実例も参考になるのかもしれません。
バノン氏も、そのあたりの事情に気づき、一旦政権中枢から離れて、市民の怒りや改革への情熱に再度火をつけて、炎上させ、そちらから政権を動かす道を選んだのではないでしょうか。
この路線の延長線上で2017年9月にはバノン氏は、アラバマ州上院補欠選挙において候補者を擁立して選挙戦を闘って勝利した結果を踏まえて演説し、共和党主流派の候補者を破る選挙結果を「革命」と表現した上で、「今後もエスタブリッシュメントを完全に打倒するまで闘いを継続する」と高らかに宣言しました。
このあたりについては、今後バノン氏がトランプ大統領が真に推進しようとしている「既存エスタブリッシュメントの打倒と市民に政治の主導権を取り戻すためのアメリカファースト路線」に密着して、強力に活動を進めていく方向性を明確に示しているもの、と考えられるところでしたが、このところ暴露本「炎と怒り」に関して著者の主要な情報源がバノンであったとの見方からトランプ大統領がバノンを激しく罵倒した上で、さらに今後は二度と接触しないと宣言し、最大のスポンサーだったマーサ一族からも見放されるに及んで、一見したところではバノンのトランプ政権への影響力は自由落下のごとく限りなくゼロに近づいているように見受けられます。
従って、今後のトランプ政権はバノン不在の中でバノンが主導したアメリカファースト路線を推進する、と言う構図の中で船出することになりそうでしたが、2019年春の段階では国務長官人事、国家安全保障担当補佐官人事、対外政策としても対中国制裁の発動などバノン路線まっしぐらのあり様も見え隠れし、真相は当に藪の中としか言えない状況となっています。

ともかく、トランプ大統領は現実に妥協する中道的な生き方は選択しないようであり、不動産王として行き詰まった時にも言われていましたが、『全てを手に入れるか、何もかも失うか』という究極の生き方を常に宿命づけられた人物ということになりそうです。

尚、本稿の延長線上でトランプ大統領のラストバタリオン的な性格を詳しく分析した以下のリンクもご参照ください。
トランプ=ラストバタリオンのアメリカ乗っ取り=ナチ化とエスタブリッシュメント側のマスコミやマイノリティを巻き込んだ反撃がアメリカ大混乱の真相である!

トランプは米中冷戦や強硬な移民政策を強行しつつ大統領再選に向け人民独裁的手法のバノン主義=アメリカファースト路線を堅持する!

トランプ大統領のバノン主義=アメリカファースト路線は理念型国家アメリカをウェストファリア型の普通の国民国家に再編する!

ウェストファリア条約

トランプ以前のアメリカの脱国民国家的で普遍的な価値観をベースとするグローバリズム,市場原理主義に基づく帝国を、ウェストファリア条約に遡りつつ「アントニオ・ネグリの帝国論」をベースに現代マルクス主義的な視点で検討し、それらに対峙するトランプのアメリカファースト革命の根本的な意義を解明していきます。

1.アントニオ・ネグリによる「世界帝国」の概念
1)資本主義の進展による帝国の変質
2)機械装置のような中枢なき新たな帝国の成立
2.「世界帝国」以前の状況を支配した「国民国家」の枠組み
1)ヨーロッパにおける中世の秩序
2)ウェストファリア条約で確立した新たな国際秩序
3)ウェストファリア体制と植民地支配システムの終焉
4)国民国家のような主体の存在しない資本の拡大運動としての帝国
3.「国民国家」による秩序を掘り崩す新たな世界秩序を巡る動きとトランプ革命の関係性
1)ナショナリズムを基盤とするウェストファリア体制に馴染まないアメリカ帝国
2)脱ナショナリズムの普遍的な原理に基づく帝国としてのアメリカ
3)トランプ大統領のアメリカファーストによるグローバリズム,市場原理主義,資本主義への攻撃

1.アントニオ・ネグリによる「世界帝国」の概念

1)資本主義の進展による帝国の変質

円卓会議

ここでベースとなる考え方としてのアントニオ・ネグリの言う「帝国」とは、巨大な資本制システムそれ自体を指していています。このシステムは特定の国家や国民と言う枠を超えたもので「一種の機械装置」であり、特に命令中枢や末端の制御装置も存在しないものです。この「帝国」の捉え方は、いわゆる「近代の帝国」あるいは「帝国主義的な枠組み」とは異なります。「近代の帝国」の捉え方では、帝国主義=資本制システムというものは、国家と資本が合体して、国家の侵略と資本の侵略がほぼ一体としてなされるのが常態でした。これは国家の侵略を国の指導者が先導し、国民は高揚するナショナリズムに踊らされて、それに追随し、結果的に国民国家意識がさらに高まるような状況がベースにありました。
また資本の側においても財閥当主や企業の総帥と言ったような中枢指導層が、国家のトップと一体となって侵略を合議し推進するような中核権力の所在がはっきりした政治体制であったと言えるでしょう。(1)

2)機械装置のような新たな帝国の成立

ドバイ

そういう状況を踏まえてアントニオ・ネグリは、これまでの「国民国家」の延長線上での資本制システムについて取り上げるとともに、さらに現在それを超えるような巨大な資本制システムが「帝国」として成立しつつあることを描写しています。そして、その巨大な資本制システムを背景とする「帝国」は、機械装置のようなもので、命令を発する中枢機能も末端の制御装置も無いような存在で、近代の資本制システムを背景とする「国民国家」とは大きく相違するところがある、という認識を示しています。

それではまず近代西欧諸国の国民国家をベースとする体制が、どのようにして成立してきたかをそれ以前の中世のアナーキーな状況と対比させつつ確認してみましょう。

2.「世界帝国」以前の状況を支配した「国民国家」の枠組み

1)ヨーロッパにおける中世の秩序

ヴァチカン

国民国家をベースとする体制の基盤は、中世のアナーキーな支配状況を克服する過程で最終的に三十年戦争の講和条約であるウェストファリア条約で確立したと言えますが、それでは中世のアナーキーな支配状況とはどのようなものだったでしょうか。

中世の秩序としては、

・封建的な領主と家臣関係において支配が重層的なだけでなく、領域的にも広範な飛び地をもった支配や領主=支配者の頻繁な交替が可能であり、近代的な排他的主権、所有権が確立していない。
・自然な法、宗教、慣習により正統化された地域支配体制で教皇、皇帝などがそれぞれの秩序を支える組織を持っていた。(2)

すなわち、ウェストファリア条約以前の国際秩序の編成原理は、緩やかな「帝国」の原理とでもいうべきものであり、開かれたエリア内を帝国や教会、都市国家をベースにしたネットワークが多層的につないでおり、その主導権は理念上は世界全体を支配したいと考える帝国=古代ローマの後継を志向する「神聖ローマ帝国」や「ローマ教皇庁」が握ろうと努力し、イタリアの都市国家が経済ネットワークをコントロールするような体制でした。

2)ウェストファリア条約で確立した新たな国際秩序

ウェストファリア条約

これに対して三十年戦争後の1648年に戦後の講和条約としてウェストファリア条約が締結されました。
ウェストファリア条約で方向性が定まった国際秩序は、以下のように類型化されます。

・「国際法上の国家主権」の概念が重要な位置を獲得
・中世の教会のような国家より上位の権威を政治権力として否定(政教分離)
・外部の権力を認めず、領域内部の絶対権力を主張するウェストファリア型国家主権

尚、EUの所属国家は、「国際法上の国家主権」は維持しつつ、「ウェストファリア型」国家主権の一部を放棄しており、台湾は後者は維持しつつも前者の獲得は出来ないでいる、と考えてよいでしょう。このようにウェストファリア体制においては、中世的な「帝国」や「ローマ教皇庁」の主導権が後景に退き、主権国家群が新しいシステムを形成することとなりました。(3)

ここにおいて初めて主権国家の位置づけが固まり、領土と国民の範囲が明確になり、主権国家の側からは領土内での国民の安全や私的所有権を保障する意志が明確になった、ということになります。この流れから国家間の安定した外交関係や勢力均衡が模索され、対等な国家関係という観念がある程度までは定着していきます。(4)

3)ウェストファリア体制と植民地支配システムの終焉

植民地支配

このように中世から近代への転換を経る中で西欧諸国は、西欧の枠組みの中での比較的平和で安定した状況を確保しつつ、その他の地域を収奪するシステムを徐々に形成していくことになりました。
ところがネグリによれば、このようなウェストファリア体制は既に終わっている、という認識を提示しており、その論点は以下のようなものです。
ネグリによれば、「元来ウェストファリア体制に基づく勢力均衡や秩序維持の対象は、あくまでも欧州の範囲内であり、この枠外のアジア・アフリカにおいては欧州諸国は国際法に拘束されずに自由に侵略して良い、という暗黙の了解があった。これがいわゆる植民地と宗主国の関係の構築であり、これにより欧州諸国は搾取と収奪を基本とする植民地支配システムを完成させ、欧州における平和と秩序は維持されることとなった。(5)」ということです。

確かにこのようなダブルスタンダードな状況は、特に第二次世界大戦後のアジア・アフリカ諸国の独立までは顕著に存在していたと言えるでしょう。アジアにおいてはオスマン帝国はその中東エリアが主としてイギリスの植民地となり、インドもイギリスの植民地と化しました。また清国も領土割譲こそ香港、マカオにとどまりましたが、その経済権益を欧州列強や日本に奪われることとなりました。

ただし、植民地分割が完了し拡大する余地が無くなると、植民地の再分割に向けた帝国主義戦争が始まってしまいます。これにより欧州の国民国家同士の平和維持システムが破綻に瀕することとなりました。(6)
これも歴史に照らして観れば、第一次世界大戦などはその典型的な事例として挙げられます。この戦争は、後発国たるドイツが、英仏露の植民地獲得の先発国に挑んだ戦争という側面も濃厚でした。

4)国民国家のような主体の存在しない資本の拡大運動としての帝国

国際連合

一方資本制システム自体は、国民国家がもっている主体的頭脳のようなものを欠いていて、無限に拡大しようと動くだけでいかなる力もこれに対抗することが出来ない、ということがあります。従って、資本はただただ拡大していくが、この過程で植民地と宗主国という関係を破壊せざるを得なくなってきます。その果てには、資本がフランスやドイツと言うような国民国家にまたがる多国籍企業という形態が出てきます。そうなってくると、本来互いが均衡関係を保つ単位であった国民国家が、それをまたぐ多国籍企業のような形態の進展により乗り越えられ包摂されて、均衡関係が崩壊してしまいます。このように国民国家という枠組みが掘り崩されるとその先には、国連の機能停止や国際法の意味の喪失につながっていくような事態があり得る、ということになります。(7)

3.「国民国家」による秩序を掘り崩す新たな世界秩序を巡る動きとトランプ革命の関係性

1)ナショナリズムを基盤とするウェストファリア体制に馴染まないアメリカ帝国

アメリカ独立革命

近代の国際秩序が国民国家の枠組みの中で、成立し一定の均衡状態を維持してきたのは、間違いないところです。そのような平和と安定の基盤が国民国家の枠を超える資本の動きの中で掘り崩され、形骸化しつつあるということですが、確かに多国籍企業の動きは国境を越えており、主権国家の領域内での絶対的な支配権も国境を越えてしまえばその動きを完全に捕捉することは困難になることは間違いないところでしょう。このような状況は広い意味で「古代ローマが実現」し「神聖ローマ帝国が憧憬」して果たせなかった「世界帝国の再生」とでも呼べるのかもしれません。国民国家により形成された「近代の帝国」の典型としての「国民帝国」(「植民地帝国」)とは相違する本格的な「世界帝国」がウェストファリア体制に続く新たな世界秩序として姿を現しつつある可能性もあるのです。

ここでいう「世界帝国の再生」を理解する場合のモデルとしてアメリカの存在を検討してみましょう。アメリカは国家成立当初より従来の西欧型国民国家の実態とはかけ離れており、元来「国民国家の要件」を欠いた存在であると言えるでしょう。アメリカの国家形成の原理は、民族的な基盤に基づくナショナリズムとは言えず、あくまでも「自由と民主主義」ということになりますが、これは国民国家的な次元の理念ではありません。すなわち、「自由と民主主義」を主体的に受け入れることが出来る人間であれば、たとえそれが元はどんな人種、民族、言語の人間であっても支障なくアメリカの国民になることが可能であるという原理です。このような原理及びそれに基づく国家とは、明らかに国民国家、ナショナリズムと言った要素を否定するものであり、もともとアメリカは脱ウェストファリア的な状況を志向する原理に基づく「特殊な国家」であった、と言えるでしょう。

2)脱ナショナリズムの普遍的な原理に基づく帝国としてのアメリカ

ソ連東欧革命

合衆国大統領であったジョージ・ブッシュ・ジュニアが21世紀初頭にリトアニアや東欧各国を歴訪して熱狂的に迎えられた時に現地で、イラク戦争に反対した独仏を「古い欧州だ」と切り捨てた発言があって注目されたことがありました。これは単にブッシュ・ネオコン政権の偏った発言という要素もあったものの、本質的にはウェストファリア型の国民国家原理に基づく西欧を牽制しつつ、元来「自由と民主主義」とは対立していたものの、ウェストファリア体制とは異なる「社会主義」という「普遍的な理念」に基づいて形成されていた東欧圏を取り込もうとした戦略的な発言であり、結果的にその戦略が一定の成功を収めたもの、とも言えるかもしれません。(8)(9)

すなわち、当時のアメリカは「社会主義」という普遍的な原理で成り立っていた東欧諸国を、ソ連の崩壊を機に新たに「自由と民主主義」という普遍的な原理で取り込み、その勢力圏を拡大した、とも言いかえることが出来たかも知れません。
またこの状況は、アメリカ一国の問題と言うよりも冷戦後の現代世界を全て呑み込もうとする「グローバリゼーション」や「資本主義の発展した段階」「市場原理主義」と言った現象を包括的に捉えて、「世界帝国の再生」現象の一端と描写出来たのかも知れなかったのです。

3)トランプ大統領のアメリカファーストによるグローバリズム,市場原理主義,資本主義への攻撃

トランプ,ヒトラー
しかるに、そのような普遍的な「自由と民主主義」という理念をベースに脱ナショナリズム的な観点から国家を成立させてきたはずのアメリカにトランプ大統領が誕生したのは、アメリカの建国以来の理念を根底から揺るがす衝撃的な変化、と言える気がしています。

すなわち、トランプ大統領の成功の要因は、アメリカを「自由と民主主義」という普遍的な原理に基づく特殊国家から、ナショナリズムに基づく国民国家の枠組みに再構成することにある程度成功した、ということにあるのではないか、というのが私の現時点での見立てになります。
この際、トランプ大統領が、本来国民国家としての由来を持ちにくいはずのアメリカにとってのナショナリズムの基盤に据えたのは、かつての偉大なアメリカ、すなわち第二次世界大戦に圧勝し繁栄を極めた戦後の1950年代頃のアメリカへの郷愁=ロマンチズムであり、そこに向かってアメリカを再生しようとする「Make America Great Again」というスローガンであった、ということになりましょうか。

そして、トランプ大統領の選挙運動においては、かつてのあの時の反映しセピア色の繁栄を謳歌していた時代のアメリカへの特に白人有権者の郷愁=ロマンチズムをかきたてることに全力を挙げることで票を掘り起こし、アメリカを一気にグローバリズム,市場原理主義,資本主義を基調とする普遍主義の特殊国家から、ナショナリズムに基づくアメリカ市民を第一に考えるアメリカ国民国家へと、その歴史的な枠組みまで再構成しようとしつつあるのではないか、と考えられます。

そのように考えると、トランプ大統領の出現は、ソ連・東欧圏の崩壊による20世紀後半の革命に匹敵する、ある意味では世界史的で革命的な事象と捉えることもできるのかもしれません。

そして、まさにこれは1930年代にヒトラーが、ドイツで行った政治運動と同一線上にある、とも言えるような気がします。
まさしく、トランプ大統領の出現は、ドイツ映画「帰ってきたヒトラー」が先取りした事態の現実バージョンとも見なせそうです。

尚、アメリカファーストの帰結として一部で想定されている、アメリカ版文化大革命と中国の文化大革命の関連性については以下のリンクで詳しく分析しています。
トランプ政権を離れたバノンはヒトラーの予言実現のためアメリカ版文化大革命を扇動する!
トランプのアメリカファースト路線でヒトラーの予言したアメリカの文化大革命的混乱状況が完成する!

参考文献
(1)的場昭弘:マルクスを再読する 五月書房 2004 第一章 アントニオ・ネグリの「帝国」の概念 p14
(2)杉原董:帝国の研究 名古屋大学出版会 2003 第4章 近代国際秩序の形成と展開 p141
(3)杉原董:帝国の研究 名古屋大学出版会 2003 第4章 近代国際秩序の形成と展開 p140
(4)杉原董:帝国の研究 名古屋大学出版会 2003 第4章 近代国際秩序の形成と展開 p141
(5)的場昭弘:マルクスを再読する 五月書房 2004 第一章 アントニオ・ネグリの「帝国」の概念 p16
(6)レーニン:帝国主義論「帝国主義の世界再分割」についての記述
(7)的場昭弘:マルクスを再読する 五月書房 2004 第一章 アントニオ・ネグリの「帝国」の概念 p17
(8)加々美光行:裸の共和国 世界書院 2010 第5章 大漢民族主義は超えられるか P203
(9)加々美光行:21世紀の世界政治3中国世界 筑摩書房 1999 第14章 覇権国家の諸類型 P149