バノン

トランプによる非常事態宣言や米中冷戦の激化は大統領再選に向けた黒幕バノンのアメリカファースト戦略の一環である!

バノン、トランプ大統領
トランプ大統領は次々に暴露される政権内幕情報を炎上商法のネタとして最大限活用しつつあるようですが、これまでのトランプ政権の動きをトレースすると、中国弱体化を本気で推進する貿易戦争の発動、金正恩との首脳会談実現、ジョン・ブレナン前CIA長官の機密へのアクセス権限剥奪、ティラーソン国務長官、マクマスター国家安全保障担当補佐官の失脚、など、暴露本「炎と怒り」の主要部分をリークして訣別したはずのアメリカファースト革命を思想的に体現するバノン氏が公言していたシナリオの通りにトランプ大統領が動いていると言わざるを得ません!
今後トランプ大統領は、さらなるマスコミのフェイクニュースへの攻撃を行いつつ、ロシアンゲート疑惑や与野党との折衝に対処しながら、コアな支持基盤の確保・中間選挙勝利・大統領再選に向けて、アメリカ市民を中心に据えてエスタブリッシュメントを打倒を目指すアメリカファースト路線を徹底的に追求していくことになります。

トランプ青年実業家

1.トランプ氏が大統領選挙に当選した理由としてのバノン氏の世界観
1)特殊で巨大すぎる役割に疲弊するアメリカの解放
2)マスコミやプロの政治評論家が読み違えた選挙民とトランプ氏の連帯
3)選挙結果に対する有権者の動揺と喝采
2.今回の大統領選の帰趨を決した激戦州の情勢
1)オハイオの形勢
2)フロリダの形勢
3.トランプ大統領時代の世界情勢はどうなるのか
1)世界の警察官からの脱却
2)普通の国としてのアメリカの方向性
3)トランプ大統領の勝利に困惑し驚愕する有識者やエリート達

1.トランプ氏が大統領選挙に当選した理由としてのバノン氏の世界観

1)特殊で巨大すぎる役割に疲弊するアメリカの解放

アメリカ役割

トランプ氏が大方の予想を裏切り、アメリカ大統領に当選した理由については、アメリカ型民主主義や資本主義の制度疲労もあるかも知れません。
アメリカの多くの有権者は、「ワシントンの官僚やウォール街の投機家が操る既存体制を解体して、オバマに期待して裏切られた真の変革を多少なりとも実現するためには、しがらみのないフレッシュ?なトランプが良いとの選択」をした、とも言えましょうか。

トランプ氏に関しては、自前の資金力で大資本の操り人形にならずに、政治活動が可能な自主独立的な政治家という意味では、日本で類似の立場を確保していたのは「刎頸の交わり」の小佐野賢治の資金力を活用出来た、あの田中角栄のような気がします。
かつての田中角栄も当初は既存のエスタブリッシュメントで固められた体制に、風穴を開けることが期待されて、今太閤とうたわれたものででした。

それはさておき、特に軍事外交を中心に国際社会に密接にコミットメントするアメリカの非常に積極的な姿勢は、かつてフランクリン・ルーズベルトがアドルフ・ヒトラーの世界征服活動に対抗して、イギリス等を支援するために孤立主義を放棄して以来確立されてきたものと言えましょう。その後は戦後の冷戦期から今日に至るまで「世界の平和と安全にかなり強引に関与」する中で、「世界の警察官」としての特殊な超大国の在り方を追求してきた、と言う状況がありました。
昨今では中東への積極的な関与としてのアフガンやイラクへの直接介入やサウジアラビアへの米軍の駐留などが特筆されます。
そういう経緯がある中で、トランプ氏は、そのようなこれまでのアメリカの国際社会における特殊な在り方を根本的に変革し、『戦略的な世界の平和と安全を中心に考えるのではなく、まずアメリカ及びアメリカ国民の暮らしと安全を第一に考える素直な常識人としての発想』でアメリカを指導することを目指している人物である、ということを選挙民に印象付けることに成功したことが最大の勝因でしょう。
そして、そのようなシナリオを描きトランプ大統領の選挙戦を演出したのが、トランプ氏の選挙対策本部長で2017年8月まで首席戦略官を歴任し、ブライトバートに復帰した後、表面上は暴露本への情報リークでトランプ大統領と訣別したため現在はフリーランスの立場にある、とされているバノン氏ということになるでしょう。

2)マスコミやプロの政治評論家が読み違えた選挙民とトランプ氏の連帯

ニューヨークタイムズ

2016年の合衆国大統領選挙の結果に関しては、基本的には「アメリカの有権者が、これまでの理想主義的な建て前の議論に飽きて、目の前の現実を重視して本音で投票した」ということだ、と想定されます。
出口調査時点ですらも「トランプには投票していない」とコメントしながら、実際にはトランプに投票していた有権者も多かったようであり、多くの有権者が表向きはトランプに投票したとなると「体裁上カッコ悪い」という要素を持ちながらも、秘密が守られる投票所の中では「ドナルド・トランプ」の名前を選んだ、ということになります。
このようなトランプ氏への多くの市民の支持に裏打ちされた驚くほど多くの「隠れトランプ票」が雪崩を打って流れ込んでくることによって、マスコミも専門家も票を大幅に読み違え、結果的にアメリカ市民に騙された、ということになりましょうか。

このトランプ氏が動かした滔々たる票の流れは、見方によれば「投票行動がばれると体裁が悪いものの、どうしても投票してしまうという魔力」が、トランプ氏及びその選挙活動の中にあったということになるんでしょうか。このことは、多少ナチスの台頭を彷彿とさせる要素もありますし、通常巷間に言われる通りアメリカの何年か後を追いかけている日本にも、そのうちに似たような光景が展開するような予感もしています。

3)選挙結果に対する有権者の動揺と喝采

EU離脱
2016年大統領選挙での大方の人間がほとんど想定しない選挙結果という点に関しては、その重大さという一点でも「イギリスのEU離脱を巡る国民投票の再現」という感じもしました。欧州に滔々と流れ込む中東からの移民の流れと、それに対抗する移民排斥派を中心とする極右政党の台頭が懸念されていますが、流石に「流行を先取りするイギリス」は、今回もそのような欧州大陸の時代の流れを驚くべき形で先取りし、「EU離脱」という結果を導き出しました。このような重大な歴史の地殻変動は、世界的に連鎖することがあるのかも知れませんが、2017年は欧州大陸でも、フランス、ドイツをはじめとして重要な選挙があり、今回の英米の驚天動地の選挙結果は特にドイツの政治情勢に影響を与えたとも言え、第四がどのように影響するか、まったく目が離せなくなりました。

尚、2016年合衆国大統領選挙の選挙結果に対する抗議行動の盛り上がりは、あり得ない結果に対する棄権者の抗議のようにも感じられ、「今更行動しても遅すぎる」という点でも「イギリスの離脱反対派の油断に共通」するところも多く感じられます。
突き詰めて言えば「選挙は事前の予想で決まるのではなく、最終的な選挙結果で決まる」ということを常に肝に銘じておかなくては、民主主義における政治活動は出来ない、ということになりましょうか。

、2016年の大統領選挙戦において、飛び出してきたトランプの数々の『暴言』は、マスコミや選挙のプロのような玄人からすれば、「投票結果に直結する目くじらを立てるような最悪の選挙活動であった」でしょう。
しかるに最終盤に飛び出してきたトランプ氏の「女性の敵のような言動に関する報道」も「トランプ氏への投票を決意した有権者からすれば日常のテーブルトーク次元」で大した問題ではなかった?ことを考えれば、一度トランプに流れた現状に対する怒りや閉塞感を覚える「真の変革のマグマ」の大きな流れるのを止めることは出来なかった、ということになります。
このあたりは「暴言、虚言」と既存巨大マスコミが騒ぐほど、かなりの数の有権者は「マスコミの欺瞞を直感」しつつ「トランプ側に立って拍手喝采する循環」の流れが出来上がっていったと考えざるを得ません。そしてそのような喝采は、「いわゆる白人低所得者層」という枠組みを超えて広く深くアメリカの中枢部に広がっていった、ということになるでしょう。
ともかく、トランプが「本来行われるべきだった政策の論理と具体的な行動方針を有権者に届く言葉」で語りかけ、かつ「アメリカの栄光に結び付けた」時点で前回のオバマの「変革=Change」に似た「大統領選挙の勝利の方程式」がゆっくりと、しかし確実に動き始めたのではないでしょうか。
このあたりの魔術のような巧みな選挙戦術を主導し、計算通りに選挙戦を勝利に導いたのが、トランプ大統領の選挙対策の責任者であったバノン氏の最大の功績になるでしょう。

2.2016年の合衆国大統領選挙の帰趨を決した激戦州の情勢

1)オハイオの形勢

オハイオ州
オハイオは、選挙人18で、ここ何回かの選挙で民主、共和の双方が交互に勝っていた激戦州であるが、全米の縮図的なところがあり、トランプ氏にベッタリと観られた白人貧困層だけでなくリベラルな白人中間層も多く、一見したところではトランプ氏に大量の票が流れず、クリントンが有利な要素も強い、と事前には想定されていました。
そういう中で、もしトランプ氏がオハイオを取れば「隠れトランプ支持者が予想以上に多い」ことが証明され、全米の票の流れも想定外な状況になりうる試金石とも目されている州であったと言えましょう。
結果的には、ここでトランプ氏が勝利したことで、クリントン陣営に衝撃が走り、全米のマスコミやプロの政治評論家達も自分たちの票読みが実は間違っていたのではないか、ということに遅まきながら気づくことになります。

2)フロリダの形勢

フロリダ州
フロリダは、トランプ氏がメキシコ国境の壁建設公約等で攻撃対象にしていたヒスパニックも多く、オハイオなどと違って白人も貧困層が少なく富裕層高年齢層が多いということで、基本的にはクリントン圧勝、少なくとも勝利は間違いない、とされていました。
そういう中で、フロリダでの最終的な選挙結果を観れば、実際のところ「多くの白人有権者層はブッシュ時代のネオコンやオバマの人道的中東介入政策を本音では嫌っていた」のではないか、と思えるような状況が現出されました。
すなわち、アメリカの主流とでも言うべき有権者層に、このあたりで一度「トランプの掲げる国内重視、世界への介入縮小方針で行ってみるのがアメリカの国益にもなるのではないか」との「広範な世論形成や世界認識が出てきた」と言えるのかも知れません。
結局、トランプ氏を勝利に導いたのはいわゆる白人貧困層だけではなく、それ以外の「広範な隠れ支持者?が雪崩現象的にトランプ氏の単純明快なアメリカ第一主義の論理と公約に共鳴した結果」ということになりましょう。

確かに現在のアメリカは、「軍事力は世界に冠たるレベルを未だに維持していますが、国内のインフラの老朽化は深刻で、新規にインフラを整備してきた中国の沿海部の大都市エリアや日本には太刀打ち出来ない」ことは、アメリカの心ある人々からすれば火を見るより明らか、と言えましょう。
このあたりに関して、トランプが公約する巨大なインフラ投資の魅力は大きく、フランクリン・ルーズベルトのニューディール政策あるいは、ヒトラーのアウトバーン建設による景気回復を想起させる要素もあり、レーガン時代の軍事予算大幅増額より、余程アメリカ経済及び世界経済に好影響を与えそうな予感もあり、それにつれて世界の株価も上昇傾向にある今日この頃です。

3.トランプ大統領時代の世界情勢はどうなるのか

1)世界の警察官からの脱却

海兵隊
2016年の大統領選挙戦中のトランプ氏の発言を聴いていると、「アメリカが戦後維持してきた世界の警察官としての役割を放棄して普通の国になりたがっている」ように思われてなりませんが、そうなった場合の世界情勢は果たしてどうなってしまうのでしょうか?

まず考えられるのは現代に生きる市民達が、非常に長期にわたった第二次世界大戦の「戦後」の終焉を目撃し、新たな世界秩序が再構築される瞬間を眼前にする可能性があるのではないか、ということです。
第二次世界大戦における最大の主戦場であった欧州の東部戦線でナチス・ドイツを壊滅に追い込んだソビエト連邦は、オスマン帝国のように顕著な衰退期間を過ごすこともなく1991年にあっけなく崩壊してしまいました。今回はソ連崩壊後に一極によるゆるやかな覇権体制を構築していたアメリカも、トランプ大統領の登場とともにようやく唯一の覇権国の地位を放棄し「普通の国」になっていくということなのかも知れません。
しかし、考えてみれば第二次世界大戦の戦後は、「今日の展開の早い世界情勢の中では、例外的に異様に長期間維持されてきた」と痛感せざるを得ないでしょう。すなわち2017年は第二次世界大戦終結以来72年を経過したわけですが、例えば日露戦争終結の72年後といえば1978年ごろとなりますが、もし1978年に日露戦争のことを日常的に意識したり、今日の「戦後」を生きる感覚で「日露戦争後」を感じている人間は誰もいなかったのではないでしょうか。
そういう意味でも、今日の時点で第二次世界大戦における「連合国の完璧な無条件降伏による勝利」と「枢軸側の壊滅的な敗戦の意義」を、かつての枢軸国の一員として噛みしめてみるのも世界史的な意義があるのかもしれません。

2)普通の国としてのアメリカの方向性

デトロイト廃墟
トランプ氏の世界戦略の基本には、「余裕を失ったアメリカは、もはや安保タダ乗り論を一切許せる状況にない」という論理が頭をもたげてきている印象があります。
アメリカが同盟国との間に防衛協定等を締結し、「空理空論的な戦略的な優位を維持しようと努力」している間に、「アメリカの保護のもとで格下の同盟諸国が応分の防衛費の負担をすることなく、ぼろ儲けしているのを指をくわえて眺めるのは到底我慢出来ない」ので、「アメリカも同じ次元で普通の国として、可能な限りの儲けの分け前に与るのが当たり前である」、という非常に単純で当然の論理が、トランプ氏及びその熱狂的な支持者の発している世界へのメッセージとなりましょうか。

このような常識的な当たり前の認識と論理は、ワシントンの戦後の政界の常識の延長線上からは、なかなか出てこない発想でしょう。そういう中で政界のアウトサイダーとしてのトランプ氏は、そういう「アメリカの普通の人々から観れば異常ながら、ワシントンの政治エリートからすれば金科玉条だった世界観」をぶち壊して、アメリカの戦略を「真の意味でのアメリカファースト」あるいは「アメリカの普通の市民ファースト」な「普通の国の意識」にコペルニクス的に転回することを目指しており、そこにトランプ革命の意義と目的がある、と言えるでしょう。

そういう文脈でトランプ氏の言動を見直せば、トランプ氏は非常に一貫性のある人物であり一連の選挙戦での発言は、暴言どころか極めて普通の常識的な発言録となりうるわけであり、戦後以来オバマまでの指導者たちの掲げてきた「理想に基づく戦略の数々」の方が、将来のある時点で振り返ると「アメリカ市民をないがしろにしながら、極端な政策課題を掲げた異様な国家を長らく維持するような、あり得ない政治状況が具現化していた時代だった」と映ることになるのかも知れないのです。

ちなみに、トランプ陣営のこのような世界観や政治哲学には、バノン氏の考え方がほぼそっくりそのまま反映されている、と言っても過言ではないでしょう。

3)トランプ大統領の勝利に困惑し驚愕する有識者やエリート達

トランプ対メディア
こうしてみるとトランプ氏の世界観を奉ずる政権に対処するには、これまでの長期にわたる戦後戦略の延長線上で発想していては、なかなか柔軟に対応できない、ことになりましょうか。
アメリカの有識者やマスコミの困惑や驚愕ぶりは、そのような混乱の有様を示すパニックのようにも見えますが、意外に証券市場が安定あるいは、トランプの政策に期待して堅調に推移しているのは、経済界の柔軟性を示す証左でもあり、興味深いところです。

今回の選挙戦を特集した番組の一部に、特に911以降の中東への本格介入後のアメリカ軍の人的被害の大きさや社会的なダメージを取り上げたものがありました。すなわち中東介入におけるアメリカ軍の犠牲者そのものは数千人規模のようであるが、そのまわりには大きな精神的ダメージを受けて帰国後に自殺したり、心的外傷を発症するアメリカ軍関係者は何倍何十倍も存在している状況があります。
これはまさに映画「ランボー」の主人公のように中東の戦地からの帰還後に、アメリカでの生活になじめなかったり、退役後に満足な収入のある職に就けないケースが数多く発生しているということでもあるのです。
そのように観てくると、さしもの超大国アメリカの無敵のアメリカ軍も、そろそろ対外武力介入政策を放棄して本格的な癒しの時期に移行していかないと社会・経済的にもたないところまで疲弊しているように思われてなりません。確かにオバマ前大統領も「世界の警察官」をやめるとは言っていましたし、中東からの一定の撤収方針は示しましたが、アメリカの戦略方針を劇的に転換するところまでのインパクトはありませんでした。
そういう意味でも、トランプ氏の世界戦略の転換と国内重視のアメリカファーストな政策は、アメリカの広範な民意を率直に反映しているということになりましょうか。

このようなバノン流の世界観を現実のワシントンやニューヨークに巣食うエスタブリッシュメントや欧州の批判的な同盟国との関係性の中で、どこまで維持出来るかは、トランプ大統領の再選可能性にも関わってくる興味深い事案になりそうです。

ちなみに、そのようなアメリカの内向きへの戦略の転換は、「新たな世界新秩序の構築」を模索するプーチンのロシアやアジアにおける中国、ひいては「欧州においてEUをベースにひそかに新帝国を建設しつつあるドイツ」あたりの思うツボということになるのかも知れませんが。

本稿の延長線上でトランプ大統領のラストバタリオン的な性格を詳しく分析した以下のリンクもご参照ください。

トランプ=ラストバタリオンのアメリカ乗っ取り=ナチ化とエスタブリッシュメント側のマスコミやマイノリティを巻き込んだ反撃がアメリカ大混乱の真相である!

トランプ大統領は米中冷戦、西側同盟解体=バノン主義=アメリカファースト路線と毛沢東的な人民独裁手法で大統領再選を目指す!

トランプ大統領の再選は毛沢東風の人民独裁的手法を駆使したバノン主義=アメリカファースト路線で約束されている!

<トランプ大統領の発動したアメリカファースト革命と文化大革命,農民大反乱の類似性>
トランプ大統領は次々に発生する政権内幕暴露を当に炎上商法の手法で十全に利用しつつあるようです。
2018年段階でのトランプ政権の動向は対中国政策、対イラン政策の強硬路線へのシフトや北朝鮮政策の対話路線への変更、マクマスター、ティラーソン解任など当にバノン主義を忠実にトレースしつつあり、実態としては水面下でのトランプ=バノン枢軸がより一層の強化が進んでいるようにも見受けられます。

ちなみに、バノンはトランプ政権では首席戦略官として大統領就任演説の骨子やイスラム過激派の入国制限を志向する大統領令、TPPやパリ協定離脱などの重要政策を主導し、2017年8月の首席戦略官退任以降は、保守系メディアサイトのブライトバートに戻り、中間選挙に向けた共和党トランプ派拡大に向けた活動とトランプ支持層への教育宣伝に明け暮れ、手始めに2017年9月のアラバマ州上院議員補欠選挙で共和党主流派が推す候補を破り、「支配階級と戦う革命」の勝利を宣言しています。(ちなみに、このバノン氏が推していた候補は、本選挙で民主党に敗れ、共和党は上院の貴重な一議席を失ったが、バノン氏は民主党を勝たせるための共和党主流派の陰謀を指摘していた)

その後、バノン氏は暴露本への情報提供を巡ってトランプ大統領の怒りを買い、表面上は完全に失脚したかに観られていますが、トランプ政権のバノン主義への傾斜は、過激なまでに進行してきている情勢です。

結局、中間選挙の結果には、ある意味では不気味なほどに、ニューヨークタイムズやワシントンポストが満を持して放ったトランプ政権内幕暴露が、影響しなかった印象もありました。
すなわち、トランプ大統領の岩盤支持者達は、多少トランプが批判されてもビクともせず、当にフェイクニュースと受け流して、トランプのTwitterに走り、反トランプの民主党支持者たちは、最初からトランプを詐欺師紛いの怪しげな不動産屋としか観ていないので、これまた政権の内幕の混乱を、それみたことかと囃したてるものの、元からトランプや共和党に投票する気が無いので、選挙結果には影響しないということでしょう。

逆にトランプ大統領としては、今回の中間選挙で共和党の中の反トランプ分子である伝統的な自由貿易主義者やネオコン系の対外干渉主義路線をクレンジングし、ミニトランプを大量に議会に送り込むことに成功したわけで、お膝元の共和党のトランプ化が進行しました。
また突き詰めて考えれば、保護主義や対外不干渉、国内産業保護は、基本的にリベラルや労働団体の主張とも符合する要素があり、今回の下院の結果もまんざらトランプ大統領にとって最悪の結果でもないかもしれません。
何と言っても、信じられないような逆風の中で、トランプ大統領は、そのロックスターのようなカリスマ性、アイドル性を遺憾なく発揮し、まさにひとりで民主党の地滑り的な大勝を阻んだワケで、上院での勝利と併せて考えれば、これこそは奇跡的な途轍もない勝利とのトランプ大統領のTwitterに首肯せざるを得ないのではないでしょうか。

そういう意味では現時点では、下院の議会運営を懸念する見通しが大勢ですが、トランプはオバマ前大統領の轍を踏むことなく、結構無難なディールをこなしていきそうな気もするところです。

1.文化大革命発動時の毛沢東の政治方針と類似するトランプ大統領の状況認識

毛沢東,文化大革命
トランプ大統領,就任演説
ここでアメリカにおいて既成秩序の転覆を図りつつあるトランプ大統領が目指す方向性について、再確認しておきたい。
トランプ大統領は選挙期間中から就任演説まで一貫して、「アメリカの主権を既成のエスタブリッシュメントからアメリカ市民の元に取り戻す」と発言し続けてきており、大統領就任後もその姿勢にブレは無いように読み取れる状況である。
多くの報道番組において、ゲストとして招かれた中国人記者もコメントしているが、このような方向性は毛沢東の文化大革命期における発言に非常に酷似している、と考えてよいかもしれない。

2.トランプ大統領の革命が目指す既存エスタブリッシュメントと秩序の破壊

デトロイト廃墟
すなわち、「これまでワシントンの政界やウォール街の財界のエスタブリッシュメントから無視され続けてきた、アメリカの草の根の市民の声を吸い上げて、ワシントンの中枢に乗り込んだトランプ大統領自身が率先して、既存秩序をぶち壊して、アメリカを市民の手に取り戻す」という運動は、まさに毛沢東が文化大革命で推進した運動との共通点が多い、と指摘することが出来るのではないだろうか。

そういう意味で、中国において毛沢東が発した1966年5月「通知」になぞらえて言えば、トランプ大統領の革命は「アメリカ市民という一つの階級が、アメリカの既成のエスタブリッシュメントという一つの階級を覆す政治大革命」を起こすことであり、その目的は「現存している既存エスタブリッシュメントが設定した全ての秩序を破壊する」ことにある、ということにもなるだろうか。

3.トランプ大統領のアメリカファースト革命を推進するバノン氏のレーニン主義的政治信条

レーニン
トランプ大統領が手始めにやり玉に挙げているのが、既存のマスコミであり、「マスコミの流している多くのニュースはフェイク・ニュース」とされ、本当の真実は「現代版の壁新聞」にもなぞらえられる「トランプ大統領自身のtwitter」やスティーブン・バノン氏が復帰して主宰する「ブライトバート・ニュース」等のニュースサイトのようなインターネットを介して市民に直接働きかける情報伝達手段の側が影響力を拡大している。
実際アメリカ市民の側でも「質の低下したマスコミよりも、マスコミを経由しないインターネットを介した直接情報が頼りにされている」という傾向が出てきているようである。

ニュースサイトの経営者からトランプ政権の首席戦略官となっていたスティーブン・バノン氏自身によれば、バノン氏は「帝政ロシアという強力な国家を解体したレーニンに対して畏敬と崇拝の念を抱いている」ということである。
これなどはバノン氏の意識がまさに「毛沢東が文化大革命で目指していた政治目標にほぼ合致するもの」とも考えられ、そういう人物と意気投合し政権の中枢に据えたトランプ大統領本人の政治信条もバノン氏と大同小異である、と考えてよいかもしれない。

このあたりに関しては、「帝政ロシアを解体したレーニン」や「文化大革命を発動した毛沢東」と類似した政治信条を持つ人物及び政策遂行チームを、民主的な選挙で大統領に当選させたアメリカの市民の「既存のエスタブリッシュメントや秩序に対する怒りのすさまじさ」を痛感せざるをえないだろう。
その先に立ち現れてくるのは、ヒトラーがかつて予言したラストバタリオンにより混乱の渦と化した、弱体化しきった悲惨なアメリカの姿なのかも知れない。

4.オルトライトの黒幕としてアメリカ版文化大革命を目論むバノン氏

パリ協定離脱トランプ大統領

バノン氏はトランプ政権誕生早々に主導的に導入したイスラム圏からの入国制限に関する大統領令への世論や司法からの反発やオバマケア廃止における与党共和党議員への恫喝的な多数派工作の失敗などが重なり、さらには事実上オバマ前大統領シンパとも想定されかねないリベラルな傾向のイヴァンカ、クシュナー夫妻との権力闘争に敗れ、国家安全保障会議・NSCのメンバーから外されるなど完全に失脚したかに観られていた。そうした逆境的な日々を過ごしていたかに見えたバノン氏は、その後に勃発したロシアンゲート事案の急展開とトランプ政権の先行きに関する不透明感の増大に反比例するかのように、世論工作や支持率低迷状態打開のプロで、政権建て直しのために不可欠な存在として、影響力を拡大しつつあったが、イヴァンカ・クシュナー夫妻やティラーソン国務長官らの良識派やリベラルな立場からの強硬な反対を押し切り、トランプ大統領が地球温暖化防止に関するパリ協定からの離脱を昨年の大統領選挙時の論理を振り回しながら宣言したことで、バノン氏の完全復権が確認されたと言って良いだろう。

穿った見方をすれば、ロシアンゲート事案の急展開、特にバノン氏の政敵であるクシュナー氏のロシア大使への秘密ルート開設疑惑暴露などの事案そのものが、バノン氏らのアメリカファースト革命派が、トランプ政権内のリベラル派やグローバリスト追い落としのためのリークや陰謀ではないか、との考え方も出て来かねない状況ではある。
このあたりのリークについては、アメリカとの関係改善を目指しているロシア側にとっても不利な展開でもありロシア情報機関からのリークとは考えられず、まさにバノン氏らアメリカファースト革命派が、アメリカのエスタブリッシュメントともロシアとも無関係で、アメリカ帝国解体を最優先課題とするラストバタリオンの一員である証左にもなりうるかも知れない。
ちなみに、バノン氏は2017年8月18日段階でホワイトハウスを離れ、古巣のオルトライトの総本山であるニュースサイトのブライトバートに復帰し、より自由な立場でトランプ大統領個人と連帯しつつ、アメリカファーストの原理をより扇動的に唱道し、エスタブリッシュメントを打倒するアメリカ版文化大革命を強力に推進することを目論んでいた。この活動の手始めに2017年9月のアラバマ州の上院補欠選挙の共和党候補者選びに参戦し、共和党主流派候補を破ることに成功した。バノンはこの選挙結果を踏まえて「アメリカ版文化大革命の一環」と表現し、「エスタブリッシュメント打倒のための闘争継続を高らかに宣言」した。

アラバマの補欠選挙では、四十年前のセクハラスキャンダルの影響もあってか、バノンの擁立した候補が惜敗したが、今回の選挙全般を通じて、今後のバノンの戦略や状況認識が明確化したとも言えるだろう。
すなわち、バノンは今後アメリカファースト革命を断行するためには、ホワイトハウスを支配しているだけでは、権力基盤として十分でないことを、ホワイトハウスの中枢で活動しながら痛感したと推測される。
バノンは、アメリカファースト革命を断行し、国家体制を根底から変革するためには、議会の多数派をトランプ信者にしてしまわなければ、到底状況を動かせないことに気付いたのであろう。

そういう問題意識を踏まえた、今後のバノンの戦略としては、トランプ政権誕生に向けて取り組んだ2016年の大統領選挙の成功体験も十全に生かしながら、2018年の中間選挙でトランプ派(実はバノン派)の共和党議員を出来る限り多く当選させて、ホワイトハウスと議会の両面からアメリカを完全にひっくり返すこと、と言うことになるはずであった。
その後、トランプ大統領とバノン氏は、暴露本「炎と怒り」の執筆過程におけるバノン氏の情報リークに絡んで、完全に訣別したかに見受けられるが、現時点では真相は藪の中である。

いずれにしても、暴露本「炎と怒り」に関するバノン氏のリークが表沙汰になる寸前までは、バノン氏のようなアメリカ帝国解体を公言するレーニン主義者(実態はラストバタリオン?)と大同小異なアメリカファーストを政治信条とするトランプ大統領の二人三脚のもとで、アメリカが国内外に対してどのような政策を展開していくのか、に注目が集まっていたが、2018年1月末の段階ではバノン氏が強調してきたアメリカファーストの世界観とトランプ大統領の政策遂行方針の関係性について不透明感が漂い始めていることは否定出来ないところであろう。

尚、本稿とも関連するアメリカファーストとアメリカ版文化大革命の連関性と中国における民意の直接的な一環としての文化大革命的な動きについて、以下のリンクでも詳しく取り上げています。
トランプのアメリカファースト路線でヒトラーの予言したアメリカの文化大革命的混乱状況が完成する!

トランプ大統領は米中冷戦、西側同盟解体=バノン主義=アメリカファースト路線と毛沢東的な人民独裁手法で大統領再選を目指す!

バノン、ルペン

実はレーガン大統領の業績に憧れていると言われているトランプ大統領は、突如これまで不倶戴天の敵と見做されていた金正恩との電撃的な首脳会談を実現しましたが、政権運営の根本のところではアメリカファースト革命の理論的支柱であるバノンとも密かに連繋して手に手を携える二人三脚を踏み出し、ワシントンの既存エスタブリッシュメントの支配体制を解体して、市民に国家を取り戻す活動に邁進しつつある風情も見え隠れしています。

次々に暴露される政権内幕を炎上商法として、逆手に取るかのような行き方も、当にバノン流を彷彿とさせるところがあります。

ちなみに、トランプ大統領の昨今の人事や政策を追跡していると、ティラーソン国務長官やマクマスター国家安全保障担当補佐官の解任、強硬で保護貿易主義的な対中国制裁の発動を皮切りに、遂には米中新冷戦の様相を呈し始めた中国封じ込め政策の急展開など、当にバノンがまた政権の中枢に躍り出たのではないか?と勘繰りたくなるような事案が目白押しといった勢いです。

バノンの対中認識とトランプ政権の戦略

1.トランプ大統領の政策の目玉である減税とインフラ投資はどのように実現されるのか
1)ロナルド・レーガンの業績に憧れるドナルド・トランプ
2)トランプ大統領によるミラクル実現の可能性
2.大統領再選を目指すトランプはバノンのアメリカファースト路線から足抜け出来ない
1)バノン氏のアメリカファースト路線とコアな支持者の強い連関
2)バノン氏のトランプ政権からの決別

1.トランプ大統領の政策の目玉である減税とインフラ投資はどのように実現されるのか

1)ロナルド・レーガンの業績に憧れるドナルド・トランプ

レーガン

本件については、トランプの心酔しているらしいロナルド・レーガン時代の方針を援用してくるのではないか、とも認識しているところです。
かつてのレーガン時代には「減税+軍拡」を中核にレーガノミックスとも称される経済政策を遂行し、前任者のジミー・カーター政権時代の閉塞した状況を脱却させ、いわゆる規制緩和や新自由主義的な方向性もはらみつつ、実質的にケインズ流の経済効果を生み出しました。さらには副産物として、軍拡についてこれなかったソ連が、ゴルバチョフの過激な変革路線の影響で一方的に弱体化して、予想以上に早く冷戦が終結することで、平和の配当も獲得するというラッキーな状況もありました。

ちなみに、レーガン時代は「軍拡による景気拡大政策」だったため、実際のところ「軍拡で製造された武器を消費するために中東が戦場として活用」されたり、「アメリカ軍の積極的な直接介入につながってアメリカの人的な被害が増大」したりといった「負の要素」もありました。それに対してトランプ氏の場合は、より平和的に「インフラ投資に1兆ドル規模の莫大な投資」するということでもあり、本来は「意外にリベラルな知識層や平和主義者といった民主党支持層にも浸透しやすい」はずではあります。

2)トランプ大統領によるミラクル実現の可能性

マッカーサー凱旋

トランプ氏の政策により莫大なインフラ投資を行った場合に、景気拡大や税収増大に関して瞬時に効果が出てくるとは考えられません。
そういう中で、大型減税が先行して実施されれば、インフラ投資と景気拡大、税収増大の間のタイムラグの発生により、一時的な財政不均衡が生じてくるのは間違いないところでしょう。
そうなった場合に喫緊の課題になってくるのは、多少細かい話になりますが、ある程度までの債務拡大を時限的に容認するためのアメリカ議会の財政再建派の議員たちの説得と経済運営円滑化のためのドル安容認に向けた金融緩和策の推進ということになりましょう。

ちなみにアメリカの大企業も、特にリーマンショック以降は突発的な経済の危機的な状況に対応するために、その儲けを賃金に回したり、設備投資などに回さずに、内部留保として蓄えることに専念しており、その額が巨大化しているようです。
現時点では、既にアメリカの証券市場がトランプの新経済政策に期待して堅調に推移している流れがありますが、その延長線上でトランプ政権の1兆ドルインフラ投資が実行に移され景気拡大の機運が漲ってくれば、各企業がその莫大な内部留保を設備投資や賃金などに回して、経済が活況を呈して、税収増大につながる可能性もあるかも知れません。

2016年の大統領選挙を全体的に観ても、トランプという人物は到底不可能と考えられていた合衆国大統領に当選するという偉業を、マスコミやワシントンのエリートに屈服することなく、バノン氏と二人三脚で構築した自らの信念を貫きつつ自分流のやり方で成し遂げました。
そう考えると、トランプ氏が選挙の奇跡に続いて、経済の奇跡を実現出来ないと誰が断言できるでしょうか?!

2.大統領再選を目指すトランプはバノンのアメリカファースト路線から足抜け出来ない

1)バノン氏のアメリカファースト路線とコアな支持者の強い連関

今後、トランプ大統領が再選を具体的に視野に入れる場合に、コアな支持者から遊離したオバマモドキの中途半端なリベラル路線やグローバリスト路線を採用することは、まさに命取りということになりかねません。
そういう意味では、例え一時の気の迷いで、イヴァンカ・クシュナー夫妻やティラーソン国務長官らの良識派的な路線に歩み寄ったとしても、政策の基調や世界観をマスコミ受けの良い、リベラルで進歩的な路線に全面的に変更するのは、到底出来ない相談である、と言わざるをえないでしょう。

結局、トランプ大統領には、どう転んでもバノンのアメリカファースト革命路線という反エスタブリッシュメントで反グローバリズムを基調とし、マスコミを敵にまわしつつ、繁栄の光と陰の陰の部分の代弁者として、世論の分断を厭わず、アメリカファーストを追求する方向性しかない、と想定されます。
このような、ブレない路線の副産物とでも言うべき結果として、2017年6月末の段階で、かつて物議を醸し、全米あるいは全世界的に混乱を巻き起こしたあの政権発足初期のイスラム圏六カ国からの入国制限に関する大統領令が、ここへ来て連邦最高裁から一部制限付きながら執行許可という形になりました。
これは、トランプ政権にとっては、久々の政治的な勝利というべき成果となりそうですが、当該イスラム圏六カ国からの入国制限に関する大統領令を主導したバノン首席戦略官にとっても、政権内部での権力闘争を益々有利に展開する手札と言えるでしょう。
トランプ大統領も、再選を念頭に遊説先で支持者を前にアメリカファーストの線で演説する時には、熱狂する聴衆のパワーを体感しつつ、常にバノン氏の存在感の大きさを再確認し続けているのではないでしょうか。

2)バノン氏のトランプ政権からの決別

ちなみに、トランプ政権内で良識派、国際派と目されるイヴァンカ・クシュなー夫妻やマクマスター、ケリー両補佐官らと権力闘争、路線闘争に明け暮れたバノン氏ですが、2017年8月段階で遂にホワイトハウスを離れ、古巣のオルトライト系ニュースサイトであるブライトバートに復帰し、より自由で過激な立場からアメリカファースト路線を唱道することを選択したようです。
反エスタブリッシュメントの旗手であるバノン氏がホワイトハウスの中枢であたかもエスタブリッシュメントの本丸に居座るというのもかなり、戯画的ではありましたが、今後は自由なフリーハンドという強力な武器を手にし、ホワイトハウス中枢=トランプ大統領個人により効果的に働きかけることで一層の混乱と波乱要素を世界に提供しそうな雲行きを感じさせます。
ともかく、バノン氏はホワイトハウスで首席戦略官という中枢の地位にトランプ政権発足以来の数か月間就任していたという事実は誰も否定出来ないわけですが、これまでのアメリカの政治史上でバノン氏のような徹頭徹尾アウトサイダーで、現体制=エスタブリッシュメントをアンシャンレジームとして粉砕することを目指して政権入りした人物は居ませんでした。
このことは、トランプ政権の存在意義として、どんなに強調しても強調しすぎることはないほどの画期的な事象であると言えるでしょう。
たとえバノン氏がホワイトハウスから離れたとしても、いわゆる極右、オルトライト、アメリカ至上主義がアメリカの政権を一時的にもせよ乗っ取った事実は覆い隠しようもないことです。ただし、バノン氏も流石に自らの政治信条でホワイトハウスの中枢を運営するほどの準備は、未だに整っていなかったため、一時的に下野して戦線を整理し、より本格的で徹底的で、具体的な政治的果実をつかみ取る方策を再確認する必要に迫られたということになりましょうか。

確かに、これまでワシントンを牛耳ってきたエスタブリッシュメントに対して、理想主義的な政治信条と正義感、使命感のみで闘いを挑んでも、あたかもドン・キホーテのように弾き飛ばされて、何の成果も得られず無力感に苛まれるのが落ち、となりかねません。
しかし、トランプを大統領に押し上げたアメリカのこれまで置き去りにされてきた人々の強い怒りや真の改革への切望が、渦巻いているのも紛れもない事実なのであり、そのような市民のパワーを今度は政策実現に向けて分散化することなく結集し組織化して、政治的な梃子として汲み上げていくことが必要になるでしょう。
このあたりは、毛沢東が中国の農村で農民層を極めて巧みに組織化して、革命のパワーに仕立て上げた実例も参考になるのかもしれません。
バノン氏も、そのあたりの事情に気づき、一旦政権中枢から離れて、市民の怒りや改革への情熱に再度火をつけて、炎上させ、そちらから政権を動かす道を選んだのではないでしょうか。
この路線の延長線上で2017年9月にはバノン氏は、アラバマ州上院補欠選挙において候補者を擁立して選挙戦を闘って勝利した結果を踏まえて演説し、共和党主流派の候補者を破る選挙結果を「革命」と表現した上で、「今後もエスタブリッシュメントを完全に打倒するまで闘いを継続する」と高らかに宣言しました。
このあたりについては、今後バノン氏がトランプ大統領が真に推進しようとしている「既存エスタブリッシュメントの打倒と市民に政治の主導権を取り戻すためのアメリカファースト路線」に密着して、強力に活動を進めていく方向性を明確に示しているもの、と考えられるところでしたが、このところ暴露本「炎と怒り」に関して著者の主要な情報源がバノンであったとの見方からトランプ大統領がバノンを激しく罵倒した上で、さらに今後は二度と接触しないと宣言し、最大のスポンサーだったマーサ一族からも見放されるに及んで、一見したところではバノンのトランプ政権への影響力は自由落下のごとく限りなくゼロに近づいているように見受けられます。
従って、今後のトランプ政権はバノン不在の中でバノンが主導したアメリカファースト路線を推進する、と言う構図の中で船出することになりそうでしたが、2019年春の段階では国務長官人事、国家安全保障担当補佐官人事、対外政策としても対中国制裁の発動などバノン路線まっしぐらのあり様も見え隠れし、真相は当に藪の中としか言えない状況となっています。

ともかく、トランプ大統領は現実に妥協する中道的な生き方は選択しないようであり、不動産王として行き詰まった時にも言われていましたが、『全てを手に入れるか、何もかも失うか』という究極の生き方を常に宿命づけられた人物ということになりそうです。

尚、本稿の延長線上でトランプ大統領のラストバタリオン的な性格を詳しく分析した以下のリンクもご参照ください。
トランプ=ラストバタリオンのアメリカ乗っ取り=ナチ化とエスタブリッシュメント側のマスコミやマイノリティを巻き込んだ反撃がアメリカ大混乱の真相である!

トランプは米中冷戦や強硬な移民政策を強行しつつ大統領再選に向け人民独裁的手法のバノン主義=アメリカファースト路線を堅持する!

毛沢東が文化大革命を断行した目的は中華王朝崩壊時の農民大反乱のエネルギーを活用した国家大改革再現である!

毛沢東,文化大革命

毛沢東が完成しつつあった人民中国の国家体制を文化大革命で根底から覆し、劉少奇や鄧小平を排除して国家を転覆させた目的は、現代版農民大反乱による国家機構の大変革の断行にあった!

1.文化大革命の真の目的
1)「原理的な社会主義」回復のための闘争
2)現存する秩序を破壊し新世界を建設する革命運動
2.文化大革命を推進するための具体的な方策
1)党官僚機構打倒のための熱狂的な大衆動員
2)文化大革命と王朝交代期の農民大反乱の類似性
3.王朝崩壊期の農民大反乱の現代版としての文化大革命
1)既存社会秩序の徹底的再編
2)文化大革命の現代版「農民大反乱」的性格の分析
4.文化大革命で目指された毛沢東の理想社会像と現代中国の状況
1)毛沢東の構想する文化大革命後の中国社会の理想像
2)中華帝国の「農民大反乱」と現代中国の「文化大革命」の共通的性格

1.文化大革命の真の目的

黄巾の乱

1)「原理的な社会主義」回復のための闘争

文化大革命開始以降の初期の段階で徐々にエスカレートしていく毛沢東の「調整政策」に対する反応を観ていくと、文革が毛沢東個人の権力回復闘争だったという側面が希薄に感じられてくる。明らかに毛沢東は、理想とする「原理的な社会主義の概念」を確固として持っており、「調整政策」及び「その推進者」が、そのような「社会主義の在り方」から大きく逸脱しつつあるので、自らの信念に基づいて闘争を開始した、という要素が濃厚にあったのではなかろうか。
このあたりについては、系統的な文革研究の第一人者である王年一も「根本的に言えば、毛沢東は明らかに党中央の後継者をすげ替えたり、中央の第一線を否定したりすることのみを求めたのではなく、それ以上にもっとも純粋でもっとも美しい社会主義社会を準備する条件を作り出そうとして、天下大乱を求め、徹底的にブルジョア反動路線を批判するよう提起した」と述べている。(1)

2)現存する秩序を破壊し新世界を建設する革命運動

フランス革命

さらに1966年5月に毛沢東が林彪に与えた書簡「五・七指示」によれば、毛沢東が劉少奇はじめ中国共産党の多くの指導者を打倒し、各級の組織を破壊してまでも、文化大革命を発動した真の目的は、「旧世界を破壊することを通じて新世界を建設すること」にあったとしている。また1966年5月の「通知」によれば、文化大革命は、「一つの階級が一つの階級を覆す政治大革命」をおこすことであり、その目的は「現存している全ての秩序を破壊する」ことにあるとされていた。(2)

2.文化大革命を推進するための具体的な方策

大衆動員

1)党官僚機構打倒のための熱狂的な大衆動員

こうして「党内の一部の実権派」、さらには党中央にすら発生した「修正主義者」の一掃が、毛沢東にとって社会主義中国の死活的な課題として浮かび上がりつつあった。とはいえ、現実の中国においては、党官僚機構が全ての権限を掌握している中で、そのような課題をどのように解決していけるのか。そのためには、思想・イデオロギーの領域において世論を喚起し、大衆的批判の強烈な圧力の中で党機構の改編を目指すほかなかった。(3)

2)文化大革命と王朝交代期の農民大反乱の類似性

紅衛兵
ここで提起された「問題が蓄積した社会を糺すために、天下大乱を希求し、徹底的な闘争を遂行する」あるいはより鮮明な「旧世界を破壊することを通じて新世界を建設すること」「現存している全ての秩序を破壊する」という「文化大革命の真の目的」と「その解決手法」は、まさに中華世界における「農民大反乱による王朝交代の本質」に相通じるところがあったのではなかろうか。文化大革命により共産党幹部は中央から地方まで大半が地位を追われ(17)、各級の組織は破壊された(4)わけであり、国家組織は根底から揺るがされた。
金観濤によれば、全国的範囲の組織的反乱を実現し、分散性を克服するには、二つの条件が必要であり、その一つが反乱者の共通の目標の設定であり、二つ目が反乱者が相互に連絡できる条件がありタイミング良く集中できなければならない(5)が、当時の中国では「毛沢東の用語」により敵は「ブルジョア司令部」「走資派」「実権派」と明確にされており、反乱者の共通の敵が共産党の全国組織そのものであることが容易に認識出来た。また大規模な農民反乱においては、革命の組織的中核を必要とする(6)が、文革においても「造反派」「紅衛兵」がその機能を十二分に担うこととなった。

3.王朝崩壊期の農民大反乱の現代版としての文化大革命

劉少奇迫害222

1)既存社会秩序の徹底的再編

「ブルジョア司令部」の存在が大衆レベルにおいて認識され始め、劉少奇・鄧小平をも含めた「党内の一部実権派」がその権限を停止され、中央から地方に至るまで「奪権」が引き続き遂行された。
このような奪権闘争は、単に中央・地方の党レベルにとどまらず、実はそうした次元を遥かに超えた社会のあらゆるレベルの権力の問題を噴出させ、しかも同時に中国に内在し蓄積されつつあった様々な社会的葛藤・矛盾、さらには中国の伝統的政治風土のもつある側面を一気に「奪権」という課題へまとわりつかせることとなった。(7)

2)文化大革命の現代版「農民大反乱」的性格の分析

文化大革命5555

中国封建社会においては、儒家を用いて官僚機構を組織し郡県制に基づいて国家の管理を行う、と言う特有の宗法一体化構造が機能していた(8)が、現代中国においては儒家は退いたものの共産党が党員により形成された郡県制の官僚機構を組織し、社会主義イデオロギーに基づき国家の管理を行う、と言う一党独裁体制が貫徹されている。また中国封建社会は宗法一体構造の維持と存続のため「強制御」を有するが、これは「中央の号令を直ちに下達し、各地の状況報告を収集する情報伝達システムを作り上げること、および強制御の執行ネットワークを作り上げること」「システムの実情が理想の平衡状態から乖離した時、中枢をコントロールして柔軟でかつ迅速な反応を行わせ、調節とコントロールを実行すること」という二つの側面がある。(9)中国の共産党が強制御の前者に該当する役割を果たしていることも間違いないところであろう。文化大革命が、そのような党国体制及び官僚機構に向けられた「天下大乱」(1)であったとすれば、これはまさに「農民大反乱」の現代版と言えるのではなかろうか。

4.文化大革命で目指された毛沢東の理想社会像と現代中国の状況

1)毛沢東の構想する文化大革命後の中国社会の理想像

長征

毛沢東は、文化大革命後の中華世界の構想として、「分業を無くし」「差別を無くし」「商品・貨幣を無くす」道を探し求め、結果的に「分業が無く・商品が無い自然経済」と「差別が無い平均主義」が結びついた空想社会主義的な道を模索することとなった。これは流石に生産力の高度の発展と言う前提を無視しており、容易に実現し得るものではなかった。要するに毛沢東は、延安時代の経験を絶対化していた節があり、戦争時代の軍事共産主義生活の成功経験が、分業・商品・差別の撤廃から共産主義に移行する問題までの最適解と考えていたのである。(10)

2)中華帝国の「農民大反乱」と現代中国の「文化大革命」の共通的性格

農民大反乱
別の観方をすれば、毛沢東は中国の農村をベースに空想社会主義的な世界像を描いていたが、現実の現代中国は周恩来・鄧小平が指導する国務院を中心に工業化を進めており、そこでは分業・専門化が進行する中で、近代的な科学技術立国のプランが現実化しつつあった。文革においては、このような社会的・経済的な基盤の違いから来る対立も一要素をなしていたと言えるだろう。(11)
そして、毛沢東の考えた中国の農村をベースにした空想的社会主義路線に、将来展望が見出されないということになれば、やはり中国の行き方としては、かつては「調整政策」と呼ばれ、現在は「改革開放」政策と呼ばれる路線に収斂するのが歴史的帰結だったのではなかろうか。
また中華帝国の伝統の観点からしても、農民大反乱で腐敗堕落した秩序が刷新された後は、清廉潔白だがその構造は、反乱前と本質的な違いの観られない新体制が速やかに秩序を回復して、新たな王朝を開始するという状況(12)も、今日の中国でほぼ似たように繰り返されているような気がするのである。

米中冷戦状況下の習近平の政治目標は文化大革命期の毛沢東個人崇拝と中華帝国皇帝専制体制再現である!

毛沢東が文化大革命で標的にした劉少奇、鄧小平ら実権派、走資派の何が問題にされたのか?

尚、本稿とも関連するアメリカファーストとアメリカ版文化大革命の連関性と中国における民意の直接的な一環としての文化大革命的な動きについて、以下のリンクでも詳しく取り上げています。
トランプのアメリカファースト路線でヒトラーの予言したアメリカの文化大革命的混乱状況が完成する!

<参考文献>
(1)加々美光行:歴史の中の文化大革命 岩波書店 2001 序章 文化大革命をどう見るか p27
(2)安藤正士:現代中国 歴史と近代化 岩波書店 1989 Ⅶ 文化大革命の諸問題 p236-p237
(3)野村浩一:現代中国 現代中国の政治世界 岩波書店 1989 Ⅰ 現代中国政治の展開と動態 p27
(4)安藤正士:現代中国 歴史と近代化 岩波書店 1989 Ⅶ 文化大革命の諸問題 p236
(5)金観濤:中国社会の超安定システム 研文出版 1987 第三章 大動乱と社会の崩壊 p102
(6)金観濤:中国社会の超安定システム 研文出版 1987 第三章 大動乱と社会の崩壊 p103
(7)野村浩一:現代中国 現代中国の政治世界 岩波書店 1989 Ⅰ 現代中国政治の展開と動態 p31-p32
(8)金観濤:中国社会の超安定システム 研文出版 1987 第一章 中国封建社会の宗法一体化構造 p23
(9)金観濤:中国社会の超安定システム 研文出版 1987 第四章 特異な修復メカニズム p111
(10)安藤正士:現代中国 歴史と近代化 岩波書店 1989 Ⅶ 文化大革命の諸問題 p240
(11)安藤正士:現代中国 歴史と近代化 岩波書店 1989 Ⅶ 文化大革命の諸問題 p240-p241
(12)金観濤:中国社会の超安定システム 研文出版 1987 第四章 特異な修復メカニズム p111