トランプ大統領のアメリカファースト路線によるアメリカと世界の混乱!

ナチスのヒトラー総統に熱狂したドイツ国民が世界大戦を二度も引き起こして世界制覇に挑戦した経緯を探る!

1.プロイセン=ドイツ第二帝国の世界制覇への挑戦
1)プロイセンの台頭とドイツ統一
2)プロイセン=ドイツ第二帝国が世界大戦に傾斜した理由
2.ナチスドイツ=第三帝国の世界制覇への挑戦
1)ヒトラーとは何者だったのか?
2)ナチ党内部での権力確立に向けた闘争期

1.プロイセン=ドイツ第二帝国の世界制覇への挑戦

1)プロイセンの台頭とドイツ統一

フリードリヒ大王

ドイツが実質的に世界制覇を目指し始めたのは、いわゆる「ドイツ第二帝国」の指導権をウィルヘルム二世が握ってから、と考えられると思われますが、この「ドイツ第二帝国」の淵源となる軍国主義国家プロイセンの台頭は、「兵隊王」とも渾名されたフリードリヒ・ウィルヘルム1世の1713年の即位に始まると言って良いでしょう。
フリードリヒ・ウィルヘルム1世の先代のフリードリヒ1世は、ルイ14世を模範に贅沢三昧の生活を送りながらも、文芸学芸の振興に熱心で、ベルリンの都市としての発展に寄与し、ライプニッツをプロイセン科学アカデミーの院長に据えるなど、国家の体裁をある程度整備することには成功していました。このような父王を反面教師としたかのようなフリードリヒ・ウィルヘルム1世は、華美な生活を廃し、徹底的な質素倹約を追求して、余剰資金を軍事費に転用することでプロイセン軍の大幅な拡張に全力を注ぎつつ、技術力や経済力を備えながらもフランスやドイツ西部のカトリック地域で迫害されたユグノーや新教徒の移民を積極的に受け入れることで、国力の充実につとめました。
フリードリヒ・ウィルヘルム1世

さらに、「大王」とも称される後継者のフリードリヒ二世は、典型的な啓蒙専制君主の一人として、1740年の即位早々に「宗教的な寛容」「拷問の禁止」「科学アカデミーの重視」「新聞の創刊」「王立銀行の創業」といった時代を先取りする改革を断行し、軍事力の強化にも熱心に取り組みました。その帰結としての国力のさらなる充実により、オーストリア継承戦争、七年戦争を苦戦しながらも戦い抜くことで勝利をもぎ取り、ポーランドから当初から狙っていた天然資源の豊富なシュレジェン地方の領有権を奪い取りました。その後もポーランド分割でポーランド西部を掠め取ることで、国土や人口の倍増を実現して、軍隊を22万人にまで増強して、プロイセン王国を欧州の大国の地位にまで高めることに成功しました。

その後、ナポレオンの台頭と対フランス戦の敗戦により締結されたティルジットの和約により、プロイセンは国土や人口が半減させられるなど圧迫されますが、この衝撃をうけてフランスに追いつき追いつくべく軍制改革や農奴解放、行政改革などが断行されました。
ナポレオン戦争後に発足したメッテルニヒ体制においては、欧州各国に横並びするような復古政策や反動政策が行われましたが、1860年にウィルヘルム1世が即位し、ビスマルクが宰相に就任して鉄血政策を推進し始めたことで、プロイセン王国の軍事力強化と大国化が、ようやくフリードリヒ大王時代の延長線上での軌道に乗りはじめました。
ビスマルク

フリードリヒ大王以来久々に登場した強力な指導者であるビスマルクの政権下で、プロイセン王国は1866年には普墺戦争に勝利してオーストリアを排除したプロイセン主導のドイツ統一路線を確立し、1871年の普仏戦争の勝利によりナポレオン三世を失脚させ、名実ともにプロイセン王国によるドイツ統一が完成し、ウィルヘルム1世はヴェルサイユ宮殿で統一ドイツの皇帝に即位しました。
この時成立したプロイセン王国主導のドイツ第二帝国は、その後ビスマルクの失脚を経て、ウィルヘルム2世に受け継がれ、イギリスの覇権に挑戦する冒険的ないわゆる「世界政策」を遂行していくことになります。

2)プロイセン=ドイツ第二帝国が世界大戦に傾斜した理由

ウィルヘルム二世

プロイセン王国主導で統一された世界の覇権を目指すドイツ第二帝国とハプスブルク王家のオーストリア・ハンガリー帝国を一方の極として、世界の覇権を賭けた第一次世界大戦が勃発するわけですが、ここでドイツ第二帝国が世界戦争に傾斜していった背景を整理しておきたいと思います。

一つには、充実しつつある国力を背景にイギリスの覇権に挑戦しようとするウィルヘルム2世の「世界帝国により遂行される世界政策」とも称される冒険的な政策が、史上かつてない世界戦争を招き寄せた、ことは間違いないでしょう。
ウィルヘルム二世の前にドイツ帝国を実質的に指導していたビスマルクは、確かにドイツ統一の過程で数次にわたる戦争を遂行しましたが、いずれの戦争においても「戦線のいたずらな拡大を避け、迅速で効果的な勝利を最優先」にしており、さらに「戦場における勝利以上に外交的な勝利を重視」しており、「国際的な孤立を慎重に避けつつ、戦争が必要不可欠で勝利が確実な状況」でのみ戦争に持ち込むことを基本戦略に据えていた、と認識しています。
しかるに、ウィルヘルム二世は残念ながらビスマルクが重視していた「強者の自制」を持ち合わせず、「軽佻浮薄とでも形容出来る軽い姿勢」で「世界政策」や「世界帝国の実現」といった観念的な政策遂行を行い、これらが結果的に「フランス・ロシアに対する軍事的な東西二正面作戦」や「イギリス、アメリカ、日本も巻き込んだ国際的なドイツ包囲網」の形勢を呼び込んでしまった、と言えるでしょう。
本来政治家にとって最も重要な資質とは、ビスマルクがナポレオン1世を反面教師として学んだ教訓である、「最大成功時にどこまで賢明に自制の精神を発揮出来るかどうか」にある、ということだ思われます。

ナポレオン

さらにウィルヘルム2世の冒険主義を補強するようなフランス・ロシアに対する東西二正面作戦の遂行を許容する、「シュリーフェン・プラン」の存在もドイツの世界戦争への傾斜を助長したとも考えられるでしょう。すなわち、ロシアの動員力を軽視し、フランス方面の西部戦線で完全に勝利した後、東部戦線に迅速に立ち向かえばドイツは東西二正面作戦を遂行可能である、という甘い見通しに満ちた机上の空論の有効性が大真面目に取り上げられ、実際の戦争遂行でも用いられることになりました。

結局ウィルヘルム二世の甘い見通しと自制を欠いた世界政策の帰結としての第一次世界大戦は、ドイツ第二帝国の敗戦という世界制覇とは真逆の結果を招来することになりました。

2.ナチスドイツ=第三帝国の世界制覇への挑戦

1)ヒトラーとは何者だったのか?

ヒトラー

第一次世界大戦に敗北したドイツは、戦後の混乱期や世界恐慌の荒波をかぶりながらも、1939年には再度世界戦争を開始するところまで国力を回復することになります。これは政治経済史上の奇跡的な事象の一つとも言えそうですが、まずはその奇跡的な復興を指導したアドルフ・ヒトラーについて検討してみたいと思います。

ヒトラーは、第一次世界大戦に志願兵として、母国オーストリアではなくドイツ第二帝国の一員の立場で従軍しています。
ヒトラーの第一次世界大戦参戦に至るまでの経歴で特筆すべきは、ある程度「芸術的な才能を有していたこと」と、「公務員だった父親の遺産や恩給などを活用してボヘミアン的な生活が可能な程度の資産」を有しており、「比較的自由で気ままな生活を送っていた」ことでしょうか。
確かにヒトラーは、ウィーンの美術アカデミーを受験して失敗していますが、自作の絵葉書や風景画に関しては、それなりの絵画の力量を示しており生活費の足しになる程度の売れ行きがありました。これらの「絵画の販売による収入」と「遺産や恩給」などを足し合わせれば贅沢しなければ、それなりに遊んで暮らせる状態ではあったようです。この状況は、やはり当時の社会経済情勢からすれば、比較的恵まれた境遇だった、と言えるかもしれません。
ヒトラーの絵

このような恵まれた境遇の中で、ヒトラー青年はリヒャルト・ワーグナーの楽劇に心酔してコンサートに通ったり、図書館を利用して様々な知識を得ていった、ということです。後年の反ユダヤ主義思想は、この時代に形成されたともいわれていますが、この時期にはヒトラーは自作の絵画を買い取ってくれるユダヤ人の画商らとも懇意にしており、何らかの主義主張に凝り固まっていたわけではなく、比較的柔軟に大都会生活を満喫していたようにも感じられます。
鉄十字勲章

第一次世界大戦中は、各部隊との連絡を担当する伝令兵として活躍し、二度にわたり鉄十字勲章を受勲しています。軍での最終的な階級は伍長どまりでしたが、鉄十字勲章を二度も受勲するというのは、「危険で困難な任務を勇敢に遂行した」ということを軍組織から評価されていたことの証左にはなるでしょう。
その後、大戦末期には毒ガス攻撃で失明して後方で治療することになり、この治療の途中でドイツの敗戦を迎えましたが、ヒトラーはドイツ降伏の一報を聴いて激しく動揺し、一種の幻覚を観た直後に視力が回復するという衝撃的な体験をする中で、「神からドイツを救済する使命を授かった」と確信するようになった、と言われています。

2)ナチ党内部での権力確立に向けた闘争期

第一次世界戦後のヒトラーは、一時的に軍の諜報機関にスカウトされ、兵士への宣伝工作や 有力な党組織への潜入調査に従事し始めますが、その中でナチ党の前身であるドイツ労働者党への潜入調査中に同党の主義主張に共鳴し、最終的には諜報機関を離脱して党専従の活動家となっていきます。
ドイツ労働者党で活動する中でヒトラーは、演説の名手と目されるようになり、ユダヤ人、周辺国、他の政治団体、資本家などへの舌鋒鋭い攻撃で、党内でも有力な政治家として評価を高めることとなりました。
このあたりのヒトラーの動きは、共和党大統領候補者としてのトランプ氏の攻撃的な遊説活動を彷彿とさせるところがあるような気がしています。

ヒトラー演説

こうして党の指導者としての活動を軌道に乗せたヒトラーは、党内クーデターを実行して指導権を確立し、ナチス式敬礼を取り入れ、ミュンヘンの社交界でも上流階級から受け入れられ、ますます影響力を増大させていくことになりました。
こののち、いわゆるミュンヘン一揆を起こして失敗しますが、ヒトラーは逮捕後の裁判では全ての責任を自分で引き受けつつ、法廷で自説を主張する戦術を採用して、ルーデンドルフと同レベルの責任能力のある大物として世間から評価されることに成功しました。
さらに法廷では、検察側からも同情と共感を勝ち得ていたようであり、判決は要塞禁固5年というものでしたが、要塞刑務所に収容中も厚遇されていた、と言われています。そういう意味では、このころには既にヒトラーは、周囲を圧するカリスマ性を有していた、ということになるんでしょうか。
この要塞刑務所収容中に執筆を始めたのが、かの有名な「我が闘争」であり、収容後8カ月ほどを経た1925年12月には早くも釈放されました。
我が闘争

その後、1929年の大恐慌勃発までは、党内権力闘争に明け暮れたり、「我が闘争」を完成させたりして過ごしていましたが、まだまだ牧歌的な時代を過ごしていた印象もあるような気がしています。
ただし、この牧歌的な時代にヒトラーの政策構想は、確実に固まっていき「我が闘争」という形で結実していくわけですが、当時はほとんどの人間が真に受けてはいなかったのではないでしょうか。
こののち世界がヒトラーの構想に飲み込まれていく過程で、徐々に恐怖と混乱が世界を覆っていくことになるのです。

パリ陥落

小池新党に怯え,前倒し総選挙を目指す安倍首相のトランプ大統領への朝貢的対米従属の淵源に迫る!
トランプのアメリカファースト密着の朝貢的対米従属でドンシン関係を目指す安倍首相の前倒し総選挙はメイ首相の二の舞か?

トランプによる非常事態宣言や米中冷戦の激化は大統領再選に向けた黒幕バノンのアメリカファースト戦略の一環である!

バノン、トランプ大統領
トランプ大統領は次々に暴露される政権内幕情報を炎上商法のネタとして最大限活用しつつあるようですが、これまでのトランプ政権の動きをトレースすると、中国弱体化を本気で推進する貿易戦争の発動、金正恩との首脳会談実現、ジョン・ブレナン前CIA長官の機密へのアクセス権限剥奪、ティラーソン国務長官、マクマスター国家安全保障担当補佐官の失脚、など、暴露本「炎と怒り」の主要部分をリークして訣別したはずのアメリカファースト革命を思想的に体現するバノン氏が公言していたシナリオの通りにトランプ大統領が動いていると言わざるを得ません!
今後トランプ大統領は、さらなるマスコミのフェイクニュースへの攻撃を行いつつ、ロシアンゲート疑惑や与野党との折衝に対処しながら、コアな支持基盤の確保・中間選挙勝利・大統領再選に向けて、アメリカ市民を中心に据えてエスタブリッシュメントを打倒を目指すアメリカファースト路線を徹底的に追求していくことになります。

トランプ青年実業家

1.トランプ氏が大統領選挙に当選した理由としてのバノン氏の世界観
1)特殊で巨大すぎる役割に疲弊するアメリカの解放
2)マスコミやプロの政治評論家が読み違えた選挙民とトランプ氏の連帯
3)選挙結果に対する有権者の動揺と喝采
2.今回の大統領選の帰趨を決した激戦州の情勢
1)オハイオの形勢
2)フロリダの形勢
3.トランプ大統領時代の世界情勢はどうなるのか
1)世界の警察官からの脱却
2)普通の国としてのアメリカの方向性
3)トランプ大統領の勝利に困惑し驚愕する有識者やエリート達

1.トランプ氏が大統領選挙に当選した理由としてのバノン氏の世界観

1)特殊で巨大すぎる役割に疲弊するアメリカの解放

アメリカ役割

トランプ氏が大方の予想を裏切り、アメリカ大統領に当選した理由については、アメリカ型民主主義や資本主義の制度疲労もあるかも知れません。
アメリカの多くの有権者は、「ワシントンの官僚やウォール街の投機家が操る既存体制を解体して、オバマに期待して裏切られた真の変革を多少なりとも実現するためには、しがらみのないフレッシュ?なトランプが良いとの選択」をした、とも言えましょうか。

トランプ氏に関しては、自前の資金力で大資本の操り人形にならずに、政治活動が可能な自主独立的な政治家という意味では、日本で類似の立場を確保していたのは「刎頸の交わり」の小佐野賢治の資金力を活用出来た、あの田中角栄のような気がします。
かつての田中角栄も当初は既存のエスタブリッシュメントで固められた体制に、風穴を開けることが期待されて、今太閤とうたわれたものででした。

それはさておき、特に軍事外交を中心に国際社会に密接にコミットメントするアメリカの非常に積極的な姿勢は、かつてフランクリン・ルーズベルトがアドルフ・ヒトラーの世界征服活動に対抗して、イギリス等を支援するために孤立主義を放棄して以来確立されてきたものと言えましょう。その後は戦後の冷戦期から今日に至るまで「世界の平和と安全にかなり強引に関与」する中で、「世界の警察官」としての特殊な超大国の在り方を追求してきた、と言う状況がありました。
昨今では中東への積極的な関与としてのアフガンやイラクへの直接介入やサウジアラビアへの米軍の駐留などが特筆されます。
そういう経緯がある中で、トランプ氏は、そのようなこれまでのアメリカの国際社会における特殊な在り方を根本的に変革し、『戦略的な世界の平和と安全を中心に考えるのではなく、まずアメリカ及びアメリカ国民の暮らしと安全を第一に考える素直な常識人としての発想』でアメリカを指導することを目指している人物である、ということを選挙民に印象付けることに成功したことが最大の勝因でしょう。
そして、そのようなシナリオを描きトランプ大統領の選挙戦を演出したのが、トランプ氏の選挙対策本部長で2017年8月まで首席戦略官を歴任し、ブライトバートに復帰した後、表面上は暴露本への情報リークでトランプ大統領と訣別したため現在はフリーランスの立場にある、とされているバノン氏ということになるでしょう。

2)マスコミやプロの政治評論家が読み違えた選挙民とトランプ氏の連帯

ニューヨークタイムズ

2016年の合衆国大統領選挙の結果に関しては、基本的には「アメリカの有権者が、これまでの理想主義的な建て前の議論に飽きて、目の前の現実を重視して本音で投票した」ということだ、と想定されます。
出口調査時点ですらも「トランプには投票していない」とコメントしながら、実際にはトランプに投票していた有権者も多かったようであり、多くの有権者が表向きはトランプに投票したとなると「体裁上カッコ悪い」という要素を持ちながらも、秘密が守られる投票所の中では「ドナルド・トランプ」の名前を選んだ、ということになります。
このようなトランプ氏への多くの市民の支持に裏打ちされた驚くほど多くの「隠れトランプ票」が雪崩を打って流れ込んでくることによって、マスコミも専門家も票を大幅に読み違え、結果的にアメリカ市民に騙された、ということになりましょうか。

このトランプ氏が動かした滔々たる票の流れは、見方によれば「投票行動がばれると体裁が悪いものの、どうしても投票してしまうという魔力」が、トランプ氏及びその選挙活動の中にあったということになるんでしょうか。このことは、多少ナチスの台頭を彷彿とさせる要素もありますし、通常巷間に言われる通りアメリカの何年か後を追いかけている日本にも、そのうちに似たような光景が展開するような予感もしています。

3)選挙結果に対する有権者の動揺と喝采

EU離脱
2016年大統領選挙での大方の人間がほとんど想定しない選挙結果という点に関しては、その重大さという一点でも「イギリスのEU離脱を巡る国民投票の再現」という感じもしました。欧州に滔々と流れ込む中東からの移民の流れと、それに対抗する移民排斥派を中心とする極右政党の台頭が懸念されていますが、流石に「流行を先取りするイギリス」は、今回もそのような欧州大陸の時代の流れを驚くべき形で先取りし、「EU離脱」という結果を導き出しました。このような重大な歴史の地殻変動は、世界的に連鎖することがあるのかも知れませんが、2017年は欧州大陸でも、フランス、ドイツをはじめとして重要な選挙があり、今回の英米の驚天動地の選挙結果は特にドイツの政治情勢に影響を与えたとも言え、第四がどのように影響するか、まったく目が離せなくなりました。

尚、2016年合衆国大統領選挙の選挙結果に対する抗議行動の盛り上がりは、あり得ない結果に対する棄権者の抗議のようにも感じられ、「今更行動しても遅すぎる」という点でも「イギリスの離脱反対派の油断に共通」するところも多く感じられます。
突き詰めて言えば「選挙は事前の予想で決まるのではなく、最終的な選挙結果で決まる」ということを常に肝に銘じておかなくては、民主主義における政治活動は出来ない、ということになりましょうか。

、2016年の大統領選挙戦において、飛び出してきたトランプの数々の『暴言』は、マスコミや選挙のプロのような玄人からすれば、「投票結果に直結する目くじらを立てるような最悪の選挙活動であった」でしょう。
しかるに最終盤に飛び出してきたトランプ氏の「女性の敵のような言動に関する報道」も「トランプ氏への投票を決意した有権者からすれば日常のテーブルトーク次元」で大した問題ではなかった?ことを考えれば、一度トランプに流れた現状に対する怒りや閉塞感を覚える「真の変革のマグマ」の大きな流れるのを止めることは出来なかった、ということになります。
このあたりは「暴言、虚言」と既存巨大マスコミが騒ぐほど、かなりの数の有権者は「マスコミの欺瞞を直感」しつつ「トランプ側に立って拍手喝采する循環」の流れが出来上がっていったと考えざるを得ません。そしてそのような喝采は、「いわゆる白人低所得者層」という枠組みを超えて広く深くアメリカの中枢部に広がっていった、ということになるでしょう。
ともかく、トランプが「本来行われるべきだった政策の論理と具体的な行動方針を有権者に届く言葉」で語りかけ、かつ「アメリカの栄光に結び付けた」時点で前回のオバマの「変革=Change」に似た「大統領選挙の勝利の方程式」がゆっくりと、しかし確実に動き始めたのではないでしょうか。
このあたりの魔術のような巧みな選挙戦術を主導し、計算通りに選挙戦を勝利に導いたのが、トランプ大統領の選挙対策の責任者であったバノン氏の最大の功績になるでしょう。

2.2016年の合衆国大統領選挙の帰趨を決した激戦州の情勢

1)オハイオの形勢

オハイオ州
オハイオは、選挙人18で、ここ何回かの選挙で民主、共和の双方が交互に勝っていた激戦州であるが、全米の縮図的なところがあり、トランプ氏にベッタリと観られた白人貧困層だけでなくリベラルな白人中間層も多く、一見したところではトランプ氏に大量の票が流れず、クリントンが有利な要素も強い、と事前には想定されていました。
そういう中で、もしトランプ氏がオハイオを取れば「隠れトランプ支持者が予想以上に多い」ことが証明され、全米の票の流れも想定外な状況になりうる試金石とも目されている州であったと言えましょう。
結果的には、ここでトランプ氏が勝利したことで、クリントン陣営に衝撃が走り、全米のマスコミやプロの政治評論家達も自分たちの票読みが実は間違っていたのではないか、ということに遅まきながら気づくことになります。

2)フロリダの形勢

フロリダ州
フロリダは、トランプ氏がメキシコ国境の壁建設公約等で攻撃対象にしていたヒスパニックも多く、オハイオなどと違って白人も貧困層が少なく富裕層高年齢層が多いということで、基本的にはクリントン圧勝、少なくとも勝利は間違いない、とされていました。
そういう中で、フロリダでの最終的な選挙結果を観れば、実際のところ「多くの白人有権者層はブッシュ時代のネオコンやオバマの人道的中東介入政策を本音では嫌っていた」のではないか、と思えるような状況が現出されました。
すなわち、アメリカの主流とでも言うべき有権者層に、このあたりで一度「トランプの掲げる国内重視、世界への介入縮小方針で行ってみるのがアメリカの国益にもなるのではないか」との「広範な世論形成や世界認識が出てきた」と言えるのかも知れません。
結局、トランプ氏を勝利に導いたのはいわゆる白人貧困層だけではなく、それ以外の「広範な隠れ支持者?が雪崩現象的にトランプ氏の単純明快なアメリカ第一主義の論理と公約に共鳴した結果」ということになりましょう。

確かに現在のアメリカは、「軍事力は世界に冠たるレベルを未だに維持していますが、国内のインフラの老朽化は深刻で、新規にインフラを整備してきた中国の沿海部の大都市エリアや日本には太刀打ち出来ない」ことは、アメリカの心ある人々からすれば火を見るより明らか、と言えましょう。
このあたりに関して、トランプが公約する巨大なインフラ投資の魅力は大きく、フランクリン・ルーズベルトのニューディール政策あるいは、ヒトラーのアウトバーン建設による景気回復を想起させる要素もあり、レーガン時代の軍事予算大幅増額より、余程アメリカ経済及び世界経済に好影響を与えそうな予感もあり、それにつれて世界の株価も上昇傾向にある今日この頃です。

3.トランプ大統領時代の世界情勢はどうなるのか

1)世界の警察官からの脱却

海兵隊
2016年の大統領選挙戦中のトランプ氏の発言を聴いていると、「アメリカが戦後維持してきた世界の警察官としての役割を放棄して普通の国になりたがっている」ように思われてなりませんが、そうなった場合の世界情勢は果たしてどうなってしまうのでしょうか?

まず考えられるのは現代に生きる市民達が、非常に長期にわたった第二次世界大戦の「戦後」の終焉を目撃し、新たな世界秩序が再構築される瞬間を眼前にする可能性があるのではないか、ということです。
第二次世界大戦における最大の主戦場であった欧州の東部戦線でナチス・ドイツを壊滅に追い込んだソビエト連邦は、オスマン帝国のように顕著な衰退期間を過ごすこともなく1991年にあっけなく崩壊してしまいました。今回はソ連崩壊後に一極によるゆるやかな覇権体制を構築していたアメリカも、トランプ大統領の登場とともにようやく唯一の覇権国の地位を放棄し「普通の国」になっていくということなのかも知れません。
しかし、考えてみれば第二次世界大戦の戦後は、「今日の展開の早い世界情勢の中では、例外的に異様に長期間維持されてきた」と痛感せざるを得ないでしょう。すなわち2017年は第二次世界大戦終結以来72年を経過したわけですが、例えば日露戦争終結の72年後といえば1978年ごろとなりますが、もし1978年に日露戦争のことを日常的に意識したり、今日の「戦後」を生きる感覚で「日露戦争後」を感じている人間は誰もいなかったのではないでしょうか。
そういう意味でも、今日の時点で第二次世界大戦における「連合国の完璧な無条件降伏による勝利」と「枢軸側の壊滅的な敗戦の意義」を、かつての枢軸国の一員として噛みしめてみるのも世界史的な意義があるのかもしれません。

2)普通の国としてのアメリカの方向性

デトロイト廃墟
トランプ氏の世界戦略の基本には、「余裕を失ったアメリカは、もはや安保タダ乗り論を一切許せる状況にない」という論理が頭をもたげてきている印象があります。
アメリカが同盟国との間に防衛協定等を締結し、「空理空論的な戦略的な優位を維持しようと努力」している間に、「アメリカの保護のもとで格下の同盟諸国が応分の防衛費の負担をすることなく、ぼろ儲けしているのを指をくわえて眺めるのは到底我慢出来ない」ので、「アメリカも同じ次元で普通の国として、可能な限りの儲けの分け前に与るのが当たり前である」、という非常に単純で当然の論理が、トランプ氏及びその熱狂的な支持者の発している世界へのメッセージとなりましょうか。

このような常識的な当たり前の認識と論理は、ワシントンの戦後の政界の常識の延長線上からは、なかなか出てこない発想でしょう。そういう中で政界のアウトサイダーとしてのトランプ氏は、そういう「アメリカの普通の人々から観れば異常ながら、ワシントンの政治エリートからすれば金科玉条だった世界観」をぶち壊して、アメリカの戦略を「真の意味でのアメリカファースト」あるいは「アメリカの普通の市民ファースト」な「普通の国の意識」にコペルニクス的に転回することを目指しており、そこにトランプ革命の意義と目的がある、と言えるでしょう。

そういう文脈でトランプ氏の言動を見直せば、トランプ氏は非常に一貫性のある人物であり一連の選挙戦での発言は、暴言どころか極めて普通の常識的な発言録となりうるわけであり、戦後以来オバマまでの指導者たちの掲げてきた「理想に基づく戦略の数々」の方が、将来のある時点で振り返ると「アメリカ市民をないがしろにしながら、極端な政策課題を掲げた異様な国家を長らく維持するような、あり得ない政治状況が具現化していた時代だった」と映ることになるのかも知れないのです。

ちなみに、トランプ陣営のこのような世界観や政治哲学には、バノン氏の考え方がほぼそっくりそのまま反映されている、と言っても過言ではないでしょう。

3)トランプ大統領の勝利に困惑し驚愕する有識者やエリート達

トランプ対メディア
こうしてみるとトランプ氏の世界観を奉ずる政権に対処するには、これまでの長期にわたる戦後戦略の延長線上で発想していては、なかなか柔軟に対応できない、ことになりましょうか。
アメリカの有識者やマスコミの困惑や驚愕ぶりは、そのような混乱の有様を示すパニックのようにも見えますが、意外に証券市場が安定あるいは、トランプの政策に期待して堅調に推移しているのは、経済界の柔軟性を示す証左でもあり、興味深いところです。

今回の選挙戦を特集した番組の一部に、特に911以降の中東への本格介入後のアメリカ軍の人的被害の大きさや社会的なダメージを取り上げたものがありました。すなわち中東介入におけるアメリカ軍の犠牲者そのものは数千人規模のようであるが、そのまわりには大きな精神的ダメージを受けて帰国後に自殺したり、心的外傷を発症するアメリカ軍関係者は何倍何十倍も存在している状況があります。
これはまさに映画「ランボー」の主人公のように中東の戦地からの帰還後に、アメリカでの生活になじめなかったり、退役後に満足な収入のある職に就けないケースが数多く発生しているということでもあるのです。
そのように観てくると、さしもの超大国アメリカの無敵のアメリカ軍も、そろそろ対外武力介入政策を放棄して本格的な癒しの時期に移行していかないと社会・経済的にもたないところまで疲弊しているように思われてなりません。確かにオバマ前大統領も「世界の警察官」をやめるとは言っていましたし、中東からの一定の撤収方針は示しましたが、アメリカの戦略方針を劇的に転換するところまでのインパクトはありませんでした。
そういう意味でも、トランプ氏の世界戦略の転換と国内重視のアメリカファーストな政策は、アメリカの広範な民意を率直に反映しているということになりましょうか。

このようなバノン流の世界観を現実のワシントンやニューヨークに巣食うエスタブリッシュメントや欧州の批判的な同盟国との関係性の中で、どこまで維持出来るかは、トランプ大統領の再選可能性にも関わってくる興味深い事案になりそうです。

ちなみに、そのようなアメリカの内向きへの戦略の転換は、「新たな世界新秩序の構築」を模索するプーチンのロシアやアジアにおける中国、ひいては「欧州においてEUをベースにひそかに新帝国を建設しつつあるドイツ」あたりの思うツボということになるのかも知れませんが。

本稿の延長線上でトランプ大統領のラストバタリオン的な性格を詳しく分析した以下のリンクもご参照ください。

トランプ=ラストバタリオンのアメリカ乗っ取り=ナチ化とエスタブリッシュメント側のマスコミやマイノリティを巻き込んだ反撃がアメリカ大混乱の真相である!

トランプ大統領は米中冷戦、西側同盟解体=バノン主義=アメリカファースト路線と毛沢東的な人民独裁手法で大統領再選を目指す!

トランプ大統領の非常事態宣言はヒトラーの全権委任法による独裁体制確立と同様にラストバタリオンによるアメリカ乗っ取り=ナチ化の突破口である!

いつ決断するのか、と注視していたメキシコ国境の壁建設を巡る、トランプ大統領の非常事態宣言発動と強権的な政策遂行開始が遂に現実のものとなりました。

これまで、トランプ政権の実態について、いろいろ指摘してきましたが、今回の非常事態宣言は、戒厳令や軍事独裁へ直結しかねない、民主主義を危機に陥れる可能性の高い選択と言えなくもないでしょう。

これは、当にヒトラーが独裁体制を確立するキッカケとなった全権委任法を彷彿とさせるものとも言え、トランプ政権は非常事態宣言を発動することで、そのラストバタリオン的な性格を益々白日の下に晒し始めたと言えるのではないでしょうか?

ちなみに、これまでのトランプ政権内幕暴露本とは別格の信憑性を持ったニクソン大統領を辞任に追い込んだとされる「大統領の陰謀」を暴いた一人のボブ・ウッドワードの「Fear: Trump in the White House」が全米で発売され、初日に90万部を完売したとされていますが、この中に記載されている内容を子細に検討すれば、トランプ大統領が「アメリカを当に弱体化し世界を混乱の渦に巻き込もうとしている」という主張の正当性が証明されているような気がしましたが、今回の非常事態宣言の発動は、単なる政権内部の混乱と政策遂行の混迷くらいでは済まない形勢の進展であり、トランプ政権によりアメリカの政治状況が、より重大な危機の段階に入ったと言えるのではないでしょうか。

もはや、トランプのラストバタリオンとしての正体を見抜いたエスタブリッシュメント側の反撃として、ニューヨークタイムズが既に時効でこれまでにも語り尽された感のあるトランプの脱税や父親からの相続の問題を蒸し返し、ワシントンポストが昔の名前で出てきた訳でもないんでしょうが、当に満を持してウッドワードのいわゆる「これまでにない信憑性の非常に高いトランプ政権内幕暴露本」をそれぞれ中間選挙に照準を合わせてぶつけてきたこと、などは今回の非常事態宣言発動に較べれば小さな話に思えてきました。

今後のアメリカ政治の見どころの一つは、これらのエスタブリッシュメント陣営の大攻勢に対して、トランプ=ラストバタリオン陣営がどのような反転攻勢を行って、中間選挙の結果を踏まえて下院の過半数を制した民主党の攻勢を凌ぎ大統領選挙での再選を勝ち取れるか、というところではありますが、今回の非常事態宣言発動のより、政権と野党の抗争の一層の激化は避けられないでしょう。

ともかくこれまでにトランプ大統領は、既にラストバタリオンの正体を白日の下にさらけ出したかのように、盤石を誇っていたアメリカの支配構造を根底から覆すような言動を繰り返してきましたが、2018年春の段階で手の平を返したように不倶戴天の敵と思われた金正恩との首脳会談の設定を行い、返す刀でティラーソン国務長官、マクマスター国家安全保障担当補佐官を解任し、自らの意向を反映し易いポンペオ、ボルトン両氏を後任に据えました。
北朝鮮と融和しつつ、中国とは貿易戦争から遂には「封じ込め政策」あるいはペンス副大統領の演説を読み解いた先には米中新冷戦の様相すら漂い始めました。またモラー特別捜査官の干渉を嘲笑うかのようにロシアのプーチン大統領への融和的な姿勢も目立ち始めています。
さらに、ここへ来て非常事態宣言発動と言うことになれば、トランプ政権の施策には訣別したはずのバノン路線がより本格的に復活してきた印象も強いですが、全般的には当にトランプ大統領独裁政権の完成間近の様相とでも言うべき展開も感ざるを得ないところです。そういう意味では、政治的にはバノン氏は、既に復権を果たし、トランプ大統領再選のシナリオを練り上げ、その再選戦略を完成してトランプに承認され、トランプ政権はそのシナリオ=再選戦略に基づいて動き始めている、とも言えるかも知れません。

そもそもトランプ大統領は、就任以来アメリカの分断を助長し、特にリベラル派やマスコミの神経を逆撫でするような言動を故意に強調してきたような節がありますが、遂に南軍のリー将軍像撤去をめぐる混乱に関して、アメリカの政治指導者が避けてきた白人至上主義に同情的で、リベラルなデモ隊と白人至上主義団体を同列視するようなコメントを行い、世論やマスコミを敢えて激昂させており、国民統合の象徴としての資質については疑問視せざるを得ません。
このような言動は、到底これまでの合衆国大統領では有り得ないものですが、トランプ大統領の動きの背後には、ヒトラーの予言したラストバタリオンの計算され尽くしたアメリカ解体劇が隠されているのかも知れません!?
そういう意味では、モラー特別捜査官が本当に捜査すべきトランプ関連の疑惑は、ロシアンゲートなどという皮相的で小規模な疑惑ではなく、UFO問題や南極大陸の地下基地や南米の秘密基地を巡る非公開情報問題、ひいては第二次世界大戦の幕引きを巡る米ソの非公開機密情報問題まで包含したラストバタリオンゲートとでも言うべき壮大なナチスドイツやヒトラーにまつわる非公開機密情報事案とトランプ政権との関連にある、ような気もしてきています。

ナチスUFO

1.アメリカを混乱に陥れるトランプ大統領の言動?
1)アドルフ・ヒトラーが予言したラストバタリオンとは何か?
2)アメリカのパンドラの箱を開け放ったトランプ大統領の出現
2.トランプ大統領の目指す偉大なアメリカ復活の先にあるもの
1)トランプ大統領の選挙スローガンに出てくる偉大な頃のアメリカの状況
2)徐々に浸食される白人男性優位のアメリカ社会の変貌とトランプ氏勝利の連関
3.トランプ大統領の実態は、アドルフ・ヒトラーの予言したラストバタリオンである
1)トランプ大統領は本当に「偉大なアメリカを復活」させる気があるのか?
2)トランプ大統領はアメリカを弱体化させるための「草」としてのエージェントかもしれない?
3)メキシコ元大統領が遂にトランプ大統領とアドルフ・ヒトラーの類似性に言及
4)トランプ政権誕生にロシア・プーチンだけでなくヒトラーのラストバタリオンも関与?
5)アドルフ・ヒトラーのラストバタリオン予言の実現を急ぐかのようなトランプ大統領の異様な言動

1.アメリカを混乱に陥れるトランプ大統領の言動?

1)アドルフ・ヒトラーが予言したラストバタリオンとは何か?

ラストバタリオン
第二次世界大戦末期の1945年に、かのアドルフ・ヒトラーがラジオを通じて最後の演説を行った中で非常に気になる用語に「ラストバタリオン」というのがあり、そこでは当時「ドイツを東西から挟撃していたソ連とアメリカが、ある程度時間が経過すると仲違いして争い始める」ことを予想し、「その争いの中でラストバタリオンたるドイツの軍団が決定的な役割を果たし、最終的な勝利を手にする」というような発言をしている、と聞いたことがあります。
このヒトラー最後の演説は、非常に聞き取りにくく、文章に起こすのも大変なようで断片的にしか伝わっていないようですが、少なくとも演説の中核としての「予言」は、第二次世界大戦に間もなく勝利するであろう米ソ間で発生する争いの間隙を突いてドイツのラストバタリオン集団が出現し、世界の混乱を助長しつつ最終的な勝利が約束されている、というように受け取れるのではないかと思われます。

2)アメリカのパンドラの箱を開け放ったトランプ大統領の出現

反トランプデモ
さてNHKのBS1スペシャルに「ザ・リアル・ボイス~ダイナーからアメリカの本音が聞こえる」という番組があり、トランプ大統領の出現についてアメリカ国民の本音をアメリカの大衆食堂に集う普通の市民から聞いて回るという内容で非常に興味深いレポートになっていました。その中で「トランプの言う偉大なアメリカの復活というスローガンの中に人種差別の復活や社会の融和に逆行する強いメッセージが含まれており、トランプが大統領になることでアメリカ社会に不可逆的に亀裂が発生してしまった」という話がありました。
すなわち、トランプ大統領は選挙戦を通じて、さらには大統領就任後も一貫して、第二次世界大戦後のアメリカ社会が進歩?として封印あるいは少なくとも表面には出さずに来た、差別意識や人種、男女間、移民等への複雑な感情の渦を再び解き放ち、パンドラの箱を開けて混乱を撒き散らしている、ということは間違いないようですね。
そのことは、アメリカ全土を覆う数百万人を数える反トランプデモでも、立証されているような気がします。
首都ワシントンのホワイトハウスの直近のエリアも含めて、全米で数百万人の反政府デモが行われて市民が積極的に参加しているというのは、歴史的社会的環境は大幅に違い、一概に比較は出来ないことは言うまでもありませんが、1989年の天安門事件当時の中国の混乱時をも上回るような規模であることは事実です。

2.トランプ大統領の目指す偉大なアメリカ復活の先にあるもの

1)トランプ大統領の選挙スローガンに出てくる偉大な頃のアメリカの状況

偉大なるアメリカ

4 R

トランプ大統領が政権の最大の公約として連呼する「Make America Great Again」でイメージされている1950年代のアメリカは、確かに第二次世界大戦に勝利し、好景気に沸き経済も圧倒的に優勢で、アメリカ車も理想のクルマとみなされる絶頂期であったが、社会的には根強い差別感情が底流に(あるいは表立って)存在し、白人至上主義とまでは言えないものの、白人でしかも男性が圧倒的に優遇され大手を振って闊歩していた時代であった、ということになるようです。
逆に言えば、そのころは黒人も女性も新しくアメリカに入国してきた移民たちも、肩身が狭く厳しい差別に晒されて不自由で窮屈な暮らしを余儀なくされていた、ということになるといえましょうか。
今回、トランプ氏が大統領になって、反射的に?反トランプデモが全米を覆うようになったのは、「50年代の偉大なるアメリカ」当時の肩身が狭く窮屈な暮らしを思い出したり想像したりして、現時点では自由や伸び伸びと溌溂とした生き方を実現しているような人々が実感として、トランプ大統領の導こうとしている「偉大なるアメリカの時代」への拒絶意識を表明している、ということになりそうです。
そして、そのあたりを強調するリベラル派やマスコミに敢えて鉄槌を下すようにリベラル系のデモ隊と白人至上主義団体を同列視するようなコメントを発し、世論やマスコミを激昂させている状況と言えましょうか。

2)徐々に浸食される白人男性優位のアメリカ社会の変貌とトランプ氏の勝利の連関

公民権運動キング牧師

その後50年代以降のアメリカは時代が下るにつれ、製造業の中核であった自動車産業が崩壊に瀕したり、家電製品市場に日本製が溢れたり、消費財には中国製が溢れたり、というように徐々にアメリカの第二次産業が衰退していき、それと軌を一にするように「白人男性優位の社会から弱者保護、人種差別撤廃、女性の地位向上、移民への寛容」といったようなリベラルな施策の効果もあり、「本来アメリカの中核であったはずの白人男性が肩身の狭い思い」をする社会になってしまった、ということになるんでしょう。

今回のトランプ大統領の出現は、そういう「50年代以降のアメリカのリベラルを基調とした流れに真っ向から反発」するものであり、「いつの間にか虐げられていた白人の地位復活」こそが、今回の大統領選挙の隠れた最大の争点に浮上してきた状況の中で、大半のマスコミやリベラルな知識人も、ほとんど全くと言っていいほど、そのことに気付くことなくトランプ氏の勝利をただただ唖然として見守るという、結果になったようです。

3.トランプ大統領の実態は、アドルフ・ヒトラーの予言したナチスのラストバタリオンである

1)トランプは本当に「偉大なアメリカを復活」させる気があるのか?

アメリカ移民船
そういう中で、就任早々トランプ大統領は、オバマ時代の遺産を葬り去ることを急ぐかのように、矢継ぎ早に大統領令を連発しています。
オバマケアやTPP、移民や難民に対する寛容政策といったオバマ氏が中心的に取り組んだ、「リベラルで先進的な業績」の数々が一片の大統領令でいとも簡単に振り出しに戻されているようにも見える今日この頃とも言えましょうか。
オバマが政権終盤に向けて整備に努力し、ようやく日の目を見た、あるいは滑り出しつつあった、これらの政策の有効性を現実の流れの中で一切評価することなく、あっさりと廃止するような挙に出るトランプ大統領の行動は、控えめに見積もっても慎重さが足りないと言えますし、直言してしまうと短慮な軽挙妄動であり、自己の信念のみを貫こうとする猪突猛進の類と言わざるを得ないでしょう。
まさか、合衆国大統領にこのような行動に出る人物が就任し、ホワイトハウスが少なくとも4年間も支配されるというのは、つい数か月前までは世界中の多くの人々が、予想もしなかった出来事でもあり、何だか空恐ろしいような気がすると言えましょうか。

2)トランプはアメリカを弱体化させるための「草」としてのエージェントかもしれない?

アプレンティス
トランプ氏に関しては、一時クリントン陣営からは「プーチン氏の操り人形で、ロシアのエージェント紛いの人物である」とのスキャンダラスな中傷が語られたこともありましたが、これは荒唐無稽としてアメリカ市民に受け入れられることもなく選挙結果にも反映せずにクリントン氏は敗北を喫しました。

ちなみにトランプ氏はドイツ系であり、祖父の代の1885年にドイツからアメリカに渡ってきた移民三世にあたるようですが、トランプ家ではアメリカとドイツが二度にわたって世界戦争で対決した経緯もあり、ドイツ系ではなくスウェーデン系であると主張していた時期もあるようです。
このようなトランプ家の出自の話を聞いて思い出したのは、昔の忍者の類型の中にあった「草」と呼ばれる存在のことでした。
ここで取り上げた「草」と呼ばれる忍者の一群は、表立った武力としての忍術を駆使するわけではなく、「敵地に潜入して職業や住居を確保して、完全に敵地の人間として生活し、何代にもわたって情報収集や敵地の市民の洗脳、思想工作などを主体に陰に陽に継続的に活動」する存在であった、ということです。
忍者、草

そういえば、トランプ氏はテレビ番組や映画などのメディアに積極的に出演することで知られており、特に2004年から放送されているNBCの「アプレンティス(The Apprentice)」に、おいては番組のホスト役を自らプロデュースしながら務めていたのは有名な話です。ちなみに、この番組の視聴者の多くがトランプに投票した、という説もあるようです。
また映画に関しては、比較的有名な「ホームアローン2」への出演をはじめ、多くの映画に端役ながら顔を出しているのも、確認出来るところです。こうしてみるとトランプ氏は、何だか顔を出せるところには、どこにでも積極的に出演する姿勢が見え隠れしているような気がします。
だからと言って、トランプ氏がいわゆる「草」のような存在であるとは、誰も断言することはできませんが。。。
ホームアローン2

ちなみに現代のドイツの政治的な主流派であるメルケル首相やドイツのマスコミからは、名実ともにトランプ氏の選挙戦以来の偏狭なナショナリズムに基づくような極端な主張や保護主義的な姿勢に対する警戒感が強く、ルーツを同じくするドイツ系大統領の出現とは言っても独米関係がにわかに緊密化する気配は全く感じられません。
少なくとも表面的には、現代のドイツがトランプ氏に「EUの盟主として自由と民主主義の旗手を標榜しつつあるドイツ連邦共和国」との関連で、「草」の役割を期待していることは、今のところなさそうであると言えるでしょう。

3)メキシコ元大統領が遂にトランプ大統領とアドルフ・ヒトラーの類似性に言及

ラストバタリオン

さて、そういう中でトランプ大統領に「メキシコ国境に壁を築くにあたって建設資金を出せ、と恫喝」されているメキシコでは、元大統領がトランプ氏とアドルフ・ヒトラーの類似性に言及しているようです。メキシコ元大統領が遂にトランプ大統領とアドルフ・ヒトラーの類似性に言及

アメリカ国内外で、トランプ大統領が就任早々に発令した「難民の受け入れ停止、イスラム圏からの入国禁止」に関する大統領令への反発が大きく広がりましたが、このようなトランプ大統領の決定がアメリカの建国の理念や国家の成り立ちといった、アメリカを歴史的に形作ってきた基本的な枠組みを根底から覆す危険で不可逆的な流れを引き起こすのではないか、との懸念も湧き上がって来ている印象があります。
このようにトランプ大統領は、就任早々アメリカという偉大な超大国の成り立ちを揺るがすような、ある意味では国家の成立基盤を根底から危うくするような政策を、「議会の承認や国民の意見」を一切顧慮する様子もなく?展開してきているわけですが、これはいわゆる「授権法(=非常事態の発生に対し通常の立法・行政手続きを行わずに権力を行使できる権限を与える法律)」の発動を連発する独裁者の行動を連想させるところもあるでしょうか。

こうしてみると、そのうちトランプ氏は、ロシアのプーチンのエージェントではなく、また言うまでもなく「EUを操りヨーロッパの盟主の地位を伺いながらも自由貿易と民主主義の旗手を自認する現代のドイツ」の「草」でもなく、「その真の実態はアメリカを混乱させ弱体化するために送り込まれた、かつてアドルフ・ヒトラーが最後の演説で言及した”ナチスドイツの最終勝利??を確保するためのラストバタリオン”ではないか?!」というような説が出てきても不思議ではないかもしれません。

4)トランプ政権誕生にロシア・プーチンだけでなくヒトラーのラストバタリオンも関与?

ロシアンゲート

すなわち、かつて第二次世界大戦の末期に、ヒトラーが予言していたラストバタリオンは、米ソに匹敵あるいは凌駕する強力で一枚岩の軍事的な集団として世界を混乱に陥れる、と想定されていたように読み取れますが、その後の時代の急激な変化の中でソ連が崩壊した今日に至っては、世界を制するためには当面は唯一の超大国アメリカを内部から掘り崩せば事足りる、という方向に方針が変容したのかも知れません。

国家安全保障担当補佐官のフリン氏の辞任問題も含めてトランプ政権とその成立に向けた合衆国大統領選挙の過程にはロシアが関与していた可能性が取り沙汰されており、ニューヨークタイムズあたりはその線でトランプ政権に徹底抗戦の構えに出ているようですが、普通の人が常識的に判別出来るような世の中に当たり前に出回っている情報の多くは、実はその大半が世論を誘導するための引っ掛け情報である、という見方があります。
つまり本当に重要な事案の真相は、表に出ている情報の裏の裏を読まないとはっきりしてこない、というわけです。例えばアメリカ政府の情報操作で記憶に新しいのは、イラク戦争開戦の前に政権側から流布され続け、今や世紀のガセネタとして暴露されている「大量破壊兵器」の問題というのもありました。これなどは、あまりにも単純過ぎるウソではありましたが、世界はうっかり騙されてしまいました。

そういう意味で、今回の合衆国大統領選挙の選挙戦の推移の中に何らかの謀略的な世論操作が入り込んでいるということは、十分にあり得ます。確かに選挙自体は100%公正に行われ、開票結果に関しても操作が行われたことはない、とは信じたいと思います。とはいえトランプ大統領自身は、開票集計作業そのものにも疑問を呈しており、選挙に負けたら開票の不正を追及すると宣言していたようですし、選挙に勝った後も執念深く自分の得票率がヒラリー・クリントンより低いのは開票作業に不正があったからではないか、とコメントしていましたが。。。

5)アドルフ・ヒトラーのラストバタリオン予言の実現を急ぐかのようなトランプ大統領の異様な言動

トランプ,ラストバタリオン
さて、かつてアドルフ・ヒトラーが予言あるいは目指していたような現在の世界を根底から混乱させるために、現時点で最も効果的な方策は何かと考えれば、真っ先に思いつくのは2016年段階で言えば目前で大々的に展開する合衆国大統領選挙に介入し、自らのエージェントを合衆国のトップに送り込んでアメリカを中枢から覆すことであったのではないでしょうか。
これまでの普通の合衆国大統領選挙は、エスタブリッシュメントから本命・対抗が選ばれて、選挙戦も大枠は筋書通りに展開し、新大統領選出後も約束された未来が淡々と展開するパターンで来たわけですが、今回は大幅に様相が違っていた印象が強いと言えるでしょう。
すなわち今回の大統領選挙では選挙期間中に、効果的な場面の最も的確なタイミングで、クリントン候補の私用メール問題が取り沙汰され、大統領選挙の結果に大きく影響を与えたことは間違いないところです。特に最終盤でトランプ氏の女性スキャンダルに対抗するかのように、投票ギリギリのタイミングでまたもやクリントン氏の私用メール問題が再燃し、有権者の投票行動に微妙な影響を与えたように想定されます。

そう考えると誰もが思いつくロシア=プーチン氏が合衆国大統領選挙に介入したという表面的な事象もさることながら、ここは事態の真相に近づくためにより深読みして世界に潜伏するヒトラーのラストバタリオンが「かつてアドルフ・ヒトラーが政権を獲得し、独裁者の地位を確立した過程通りに、100%民主的な手続き」を踏襲して、遂に合衆国大統領のポジションにエージェントを送り込み、世界のどこかに潜伏してきたナチス復活の最終局面としてアメリカを中枢から破壊する、という戦術に出た来たと考えるのもあながち不合理ではないかもしれません。

特に、南北戦争以来くすぶってきた南北の分断の古傷すら、こじ開けようとするかのような、トランプ大統領のシャーロッツビル事件への対応などは、アメリカの成り立ちや市民意識の根幹を敢えて揺るがそうと、混乱を煽っている節も見え隠れしています。

そういう方向性からトランプ政権の異常性を子細に検討していけば、モラー特別捜査官の捜査対象も自然とロシアンゲートなどという皮相的で大して世界情勢に影響を与えていない事案ではなく、より複雑怪奇で深刻なラストバタリオンゲートとでもいうべき、第二次世界大戦終末期の混乱状況の中でうやむやになってきた、UFOの起源の問題やリチャード・バード将軍が指揮を執った戦後直ぐのハイジャンプ作戦において怪情報が流れた南極地下基地問題、あるいは一部のUボートとともに忽然と数万人の単位で消息不明となったと言われるドイツの最高レベルの科学者や影武者を替え玉として失踪したナチス高官の問題等の真相とトランプ政権の真の政策目標との関連という重大問題の解明にある、ということになるのではないでしょうか。

尚、本稿で取り上げたトランプ大統領=ラストバタリオン説の延長線上でトランプ勝利の要因とバノン氏の関係を分析した以下のリンクもご参照ください。

トランプは米中冷戦や強硬な移民政策を強行しつつ大統領再選に向け人民独裁的手法のバノン主義=アメリカファースト路線を堅持する!

トランプ大統領は米中冷戦、西側同盟解体=バノン主義=アメリカファースト路線と毛沢東的な人民独裁手法で大統領再選を目指す!

トランプ大統領は米中冷戦、西側同盟解体=バノン主義=アメリカファースト路線と毛沢東的な人民独裁手法で大統領再選を目指す!

バノン、ルペン

実はレーガン大統領の業績に憧れていると言われているトランプ大統領は、突如これまで不倶戴天の敵と見做されていた金正恩との電撃的な首脳会談を実現しましたが、政権運営の根本のところではアメリカファースト革命の理論的支柱であるバノンとも密かに連繋して手に手を携える二人三脚を踏み出し、ワシントンの既存エスタブリッシュメントの支配体制を解体して、市民に国家を取り戻す活動に邁進しつつある風情も見え隠れしています。

次々に暴露される政権内幕を炎上商法として、逆手に取るかのような行き方も、当にバノン流を彷彿とさせるところがあります。

ちなみに、トランプ大統領の昨今の人事や政策を追跡していると、ティラーソン国務長官やマクマスター国家安全保障担当補佐官の解任、強硬で保護貿易主義的な対中国制裁の発動を皮切りに、遂には米中新冷戦の様相を呈し始めた中国封じ込め政策の急展開など、当にバノンがまた政権の中枢に躍り出たのではないか?と勘繰りたくなるような事案が目白押しといった勢いです。

バノンの対中認識とトランプ政権の戦略

1.トランプ大統領の政策の目玉である減税とインフラ投資はどのように実現されるのか
1)ロナルド・レーガンの業績に憧れるドナルド・トランプ
2)トランプ大統領によるミラクル実現の可能性
2.大統領再選を目指すトランプはバノンのアメリカファースト路線から足抜け出来ない
1)バノン氏のアメリカファースト路線とコアな支持者の強い連関
2)バノン氏のトランプ政権からの決別

1.トランプ大統領の政策の目玉である減税とインフラ投資はどのように実現されるのか

1)ロナルド・レーガンの業績に憧れるドナルド・トランプ

レーガン

本件については、トランプの心酔しているらしいロナルド・レーガン時代の方針を援用してくるのではないか、とも認識しているところです。
かつてのレーガン時代には「減税+軍拡」を中核にレーガノミックスとも称される経済政策を遂行し、前任者のジミー・カーター政権時代の閉塞した状況を脱却させ、いわゆる規制緩和や新自由主義的な方向性もはらみつつ、実質的にケインズ流の経済効果を生み出しました。さらには副産物として、軍拡についてこれなかったソ連が、ゴルバチョフの過激な変革路線の影響で一方的に弱体化して、予想以上に早く冷戦が終結することで、平和の配当も獲得するというラッキーな状況もありました。

ちなみに、レーガン時代は「軍拡による景気拡大政策」だったため、実際のところ「軍拡で製造された武器を消費するために中東が戦場として活用」されたり、「アメリカ軍の積極的な直接介入につながってアメリカの人的な被害が増大」したりといった「負の要素」もありました。それに対してトランプ氏の場合は、より平和的に「インフラ投資に1兆ドル規模の莫大な投資」するということでもあり、本来は「意外にリベラルな知識層や平和主義者といった民主党支持層にも浸透しやすい」はずではあります。

2)トランプ大統領によるミラクル実現の可能性

マッカーサー凱旋

トランプ氏の政策により莫大なインフラ投資を行った場合に、景気拡大や税収増大に関して瞬時に効果が出てくるとは考えられません。
そういう中で、大型減税が先行して実施されれば、インフラ投資と景気拡大、税収増大の間のタイムラグの発生により、一時的な財政不均衡が生じてくるのは間違いないところでしょう。
そうなった場合に喫緊の課題になってくるのは、多少細かい話になりますが、ある程度までの債務拡大を時限的に容認するためのアメリカ議会の財政再建派の議員たちの説得と経済運営円滑化のためのドル安容認に向けた金融緩和策の推進ということになりましょう。

ちなみにアメリカの大企業も、特にリーマンショック以降は突発的な経済の危機的な状況に対応するために、その儲けを賃金に回したり、設備投資などに回さずに、内部留保として蓄えることに専念しており、その額が巨大化しているようです。
現時点では、既にアメリカの証券市場がトランプの新経済政策に期待して堅調に推移している流れがありますが、その延長線上でトランプ政権の1兆ドルインフラ投資が実行に移され景気拡大の機運が漲ってくれば、各企業がその莫大な内部留保を設備投資や賃金などに回して、経済が活況を呈して、税収増大につながる可能性もあるかも知れません。

2016年の大統領選挙を全体的に観ても、トランプという人物は到底不可能と考えられていた合衆国大統領に当選するという偉業を、マスコミやワシントンのエリートに屈服することなく、バノン氏と二人三脚で構築した自らの信念を貫きつつ自分流のやり方で成し遂げました。
そう考えると、トランプ氏が選挙の奇跡に続いて、経済の奇跡を実現出来ないと誰が断言できるでしょうか?!

2.大統領再選を目指すトランプはバノンのアメリカファースト路線から足抜け出来ない

1)バノン氏のアメリカファースト路線とコアな支持者の強い連関

今後、トランプ大統領が再選を具体的に視野に入れる場合に、コアな支持者から遊離したオバマモドキの中途半端なリベラル路線やグローバリスト路線を採用することは、まさに命取りということになりかねません。
そういう意味では、例え一時の気の迷いで、イヴァンカ・クシュナー夫妻やティラーソン国務長官らの良識派的な路線に歩み寄ったとしても、政策の基調や世界観をマスコミ受けの良い、リベラルで進歩的な路線に全面的に変更するのは、到底出来ない相談である、と言わざるをえないでしょう。

結局、トランプ大統領には、どう転んでもバノンのアメリカファースト革命路線という反エスタブリッシュメントで反グローバリズムを基調とし、マスコミを敵にまわしつつ、繁栄の光と陰の陰の部分の代弁者として、世論の分断を厭わず、アメリカファーストを追求する方向性しかない、と想定されます。
このような、ブレない路線の副産物とでも言うべき結果として、2017年6月末の段階で、かつて物議を醸し、全米あるいは全世界的に混乱を巻き起こしたあの政権発足初期のイスラム圏六カ国からの入国制限に関する大統領令が、ここへ来て連邦最高裁から一部制限付きながら執行許可という形になりました。
これは、トランプ政権にとっては、久々の政治的な勝利というべき成果となりそうですが、当該イスラム圏六カ国からの入国制限に関する大統領令を主導したバノン首席戦略官にとっても、政権内部での権力闘争を益々有利に展開する手札と言えるでしょう。
トランプ大統領も、再選を念頭に遊説先で支持者を前にアメリカファーストの線で演説する時には、熱狂する聴衆のパワーを体感しつつ、常にバノン氏の存在感の大きさを再確認し続けているのではないでしょうか。

2)バノン氏のトランプ政権からの決別

ちなみに、トランプ政権内で良識派、国際派と目されるイヴァンカ・クシュなー夫妻やマクマスター、ケリー両補佐官らと権力闘争、路線闘争に明け暮れたバノン氏ですが、2017年8月段階で遂にホワイトハウスを離れ、古巣のオルトライト系ニュースサイトであるブライトバートに復帰し、より自由で過激な立場からアメリカファースト路線を唱道することを選択したようです。
反エスタブリッシュメントの旗手であるバノン氏がホワイトハウスの中枢であたかもエスタブリッシュメントの本丸に居座るというのもかなり、戯画的ではありましたが、今後は自由なフリーハンドという強力な武器を手にし、ホワイトハウス中枢=トランプ大統領個人により効果的に働きかけることで一層の混乱と波乱要素を世界に提供しそうな雲行きを感じさせます。
ともかく、バノン氏はホワイトハウスで首席戦略官という中枢の地位にトランプ政権発足以来の数か月間就任していたという事実は誰も否定出来ないわけですが、これまでのアメリカの政治史上でバノン氏のような徹頭徹尾アウトサイダーで、現体制=エスタブリッシュメントをアンシャンレジームとして粉砕することを目指して政権入りした人物は居ませんでした。
このことは、トランプ政権の存在意義として、どんなに強調しても強調しすぎることはないほどの画期的な事象であると言えるでしょう。
たとえバノン氏がホワイトハウスから離れたとしても、いわゆる極右、オルトライト、アメリカ至上主義がアメリカの政権を一時的にもせよ乗っ取った事実は覆い隠しようもないことです。ただし、バノン氏も流石に自らの政治信条でホワイトハウスの中枢を運営するほどの準備は、未だに整っていなかったため、一時的に下野して戦線を整理し、より本格的で徹底的で、具体的な政治的果実をつかみ取る方策を再確認する必要に迫られたということになりましょうか。

確かに、これまでワシントンを牛耳ってきたエスタブリッシュメントに対して、理想主義的な政治信条と正義感、使命感のみで闘いを挑んでも、あたかもドン・キホーテのように弾き飛ばされて、何の成果も得られず無力感に苛まれるのが落ち、となりかねません。
しかし、トランプを大統領に押し上げたアメリカのこれまで置き去りにされてきた人々の強い怒りや真の改革への切望が、渦巻いているのも紛れもない事実なのであり、そのような市民のパワーを今度は政策実現に向けて分散化することなく結集し組織化して、政治的な梃子として汲み上げていくことが必要になるでしょう。
このあたりは、毛沢東が中国の農村で農民層を極めて巧みに組織化して、革命のパワーに仕立て上げた実例も参考になるのかもしれません。
バノン氏も、そのあたりの事情に気づき、一旦政権中枢から離れて、市民の怒りや改革への情熱に再度火をつけて、炎上させ、そちらから政権を動かす道を選んだのではないでしょうか。
この路線の延長線上で2017年9月にはバノン氏は、アラバマ州上院補欠選挙において候補者を擁立して選挙戦を闘って勝利した結果を踏まえて演説し、共和党主流派の候補者を破る選挙結果を「革命」と表現した上で、「今後もエスタブリッシュメントを完全に打倒するまで闘いを継続する」と高らかに宣言しました。
このあたりについては、今後バノン氏がトランプ大統領が真に推進しようとしている「既存エスタブリッシュメントの打倒と市民に政治の主導権を取り戻すためのアメリカファースト路線」に密着して、強力に活動を進めていく方向性を明確に示しているもの、と考えられるところでしたが、このところ暴露本「炎と怒り」に関して著者の主要な情報源がバノンであったとの見方からトランプ大統領がバノンを激しく罵倒した上で、さらに今後は二度と接触しないと宣言し、最大のスポンサーだったマーサ一族からも見放されるに及んで、一見したところではバノンのトランプ政権への影響力は自由落下のごとく限りなくゼロに近づいているように見受けられます。
従って、今後のトランプ政権はバノン不在の中でバノンが主導したアメリカファースト路線を推進する、と言う構図の中で船出することになりそうでしたが、2019年春の段階では国務長官人事、国家安全保障担当補佐官人事、対外政策としても対中国制裁の発動などバノン路線まっしぐらのあり様も見え隠れし、真相は当に藪の中としか言えない状況となっています。

ともかく、トランプ大統領は現実に妥協する中道的な生き方は選択しないようであり、不動産王として行き詰まった時にも言われていましたが、『全てを手に入れるか、何もかも失うか』という究極の生き方を常に宿命づけられた人物ということになりそうです。

尚、本稿の延長線上でトランプ大統領のラストバタリオン的な性格を詳しく分析した以下のリンクもご参照ください。
トランプ=ラストバタリオンのアメリカ乗っ取り=ナチ化とエスタブリッシュメント側のマスコミやマイノリティを巻き込んだ反撃がアメリカ大混乱の真相である!

トランプは米中冷戦や強硬な移民政策を強行しつつ大統領再選に向け人民独裁的手法のバノン主義=アメリカファースト路線を堅持する!

トランプ大統領のバノン主義=アメリカファースト路線は理念型国家アメリカをウェストファリア型の普通の国民国家に再編する!

ウェストファリア条約

トランプ以前のアメリカの脱国民国家的で普遍的な価値観をベースとするグローバリズム,市場原理主義に基づく帝国を、ウェストファリア条約に遡りつつ「アントニオ・ネグリの帝国論」をベースに現代マルクス主義的な視点で検討し、それらに対峙するトランプのアメリカファースト革命の根本的な意義を解明していきます。

1.アントニオ・ネグリによる「世界帝国」の概念
1)資本主義の進展による帝国の変質
2)機械装置のような中枢なき新たな帝国の成立
2.「世界帝国」以前の状況を支配した「国民国家」の枠組み
1)ヨーロッパにおける中世の秩序
2)ウェストファリア条約で確立した新たな国際秩序
3)ウェストファリア体制と植民地支配システムの終焉
4)国民国家のような主体の存在しない資本の拡大運動としての帝国
3.「国民国家」による秩序を掘り崩す新たな世界秩序を巡る動きとトランプ革命の関係性
1)ナショナリズムを基盤とするウェストファリア体制に馴染まないアメリカ帝国
2)脱ナショナリズムの普遍的な原理に基づく帝国としてのアメリカ
3)トランプ大統領のアメリカファーストによるグローバリズム,市場原理主義,資本主義への攻撃

1.アントニオ・ネグリによる「世界帝国」の概念

1)資本主義の進展による帝国の変質

円卓会議

ここでベースとなる考え方としてのアントニオ・ネグリの言う「帝国」とは、巨大な資本制システムそれ自体を指していています。このシステムは特定の国家や国民と言う枠を超えたもので「一種の機械装置」であり、特に命令中枢や末端の制御装置も存在しないものです。この「帝国」の捉え方は、いわゆる「近代の帝国」あるいは「帝国主義的な枠組み」とは異なります。「近代の帝国」の捉え方では、帝国主義=資本制システムというものは、国家と資本が合体して、国家の侵略と資本の侵略がほぼ一体としてなされるのが常態でした。これは国家の侵略を国の指導者が先導し、国民は高揚するナショナリズムに踊らされて、それに追随し、結果的に国民国家意識がさらに高まるような状況がベースにありました。
また資本の側においても財閥当主や企業の総帥と言ったような中枢指導層が、国家のトップと一体となって侵略を合議し推進するような中核権力の所在がはっきりした政治体制であったと言えるでしょう。(1)

2)機械装置のような新たな帝国の成立

ドバイ

そういう状況を踏まえてアントニオ・ネグリは、これまでの「国民国家」の延長線上での資本制システムについて取り上げるとともに、さらに現在それを超えるような巨大な資本制システムが「帝国」として成立しつつあることを描写しています。そして、その巨大な資本制システムを背景とする「帝国」は、機械装置のようなもので、命令を発する中枢機能も末端の制御装置も無いような存在で、近代の資本制システムを背景とする「国民国家」とは大きく相違するところがある、という認識を示しています。

それではまず近代西欧諸国の国民国家をベースとする体制が、どのようにして成立してきたかをそれ以前の中世のアナーキーな状況と対比させつつ確認してみましょう。

2.「世界帝国」以前の状況を支配した「国民国家」の枠組み

1)ヨーロッパにおける中世の秩序

ヴァチカン

国民国家をベースとする体制の基盤は、中世のアナーキーな支配状況を克服する過程で最終的に三十年戦争の講和条約であるウェストファリア条約で確立したと言えますが、それでは中世のアナーキーな支配状況とはどのようなものだったでしょうか。

中世の秩序としては、

・封建的な領主と家臣関係において支配が重層的なだけでなく、領域的にも広範な飛び地をもった支配や領主=支配者の頻繁な交替が可能であり、近代的な排他的主権、所有権が確立していない。
・自然な法、宗教、慣習により正統化された地域支配体制で教皇、皇帝などがそれぞれの秩序を支える組織を持っていた。(2)

すなわち、ウェストファリア条約以前の国際秩序の編成原理は、緩やかな「帝国」の原理とでもいうべきものであり、開かれたエリア内を帝国や教会、都市国家をベースにしたネットワークが多層的につないでおり、その主導権は理念上は世界全体を支配したいと考える帝国=古代ローマの後継を志向する「神聖ローマ帝国」や「ローマ教皇庁」が握ろうと努力し、イタリアの都市国家が経済ネットワークをコントロールするような体制でした。

2)ウェストファリア条約で確立した新たな国際秩序

ウェストファリア条約

これに対して三十年戦争後の1648年に戦後の講和条約としてウェストファリア条約が締結されました。
ウェストファリア条約で方向性が定まった国際秩序は、以下のように類型化されます。

・「国際法上の国家主権」の概念が重要な位置を獲得
・中世の教会のような国家より上位の権威を政治権力として否定(政教分離)
・外部の権力を認めず、領域内部の絶対権力を主張するウェストファリア型国家主権

尚、EUの所属国家は、「国際法上の国家主権」は維持しつつ、「ウェストファリア型」国家主権の一部を放棄しており、台湾は後者は維持しつつも前者の獲得は出来ないでいる、と考えてよいでしょう。このようにウェストファリア体制においては、中世的な「帝国」や「ローマ教皇庁」の主導権が後景に退き、主権国家群が新しいシステムを形成することとなりました。(3)

ここにおいて初めて主権国家の位置づけが固まり、領土と国民の範囲が明確になり、主権国家の側からは領土内での国民の安全や私的所有権を保障する意志が明確になった、ということになります。この流れから国家間の安定した外交関係や勢力均衡が模索され、対等な国家関係という観念がある程度までは定着していきます。(4)

3)ウェストファリア体制と植民地支配システムの終焉

植民地支配

このように中世から近代への転換を経る中で西欧諸国は、西欧の枠組みの中での比較的平和で安定した状況を確保しつつ、その他の地域を収奪するシステムを徐々に形成していくことになりました。
ところがネグリによれば、このようなウェストファリア体制は既に終わっている、という認識を提示しており、その論点は以下のようなものです。
ネグリによれば、「元来ウェストファリア体制に基づく勢力均衡や秩序維持の対象は、あくまでも欧州の範囲内であり、この枠外のアジア・アフリカにおいては欧州諸国は国際法に拘束されずに自由に侵略して良い、という暗黙の了解があった。これがいわゆる植民地と宗主国の関係の構築であり、これにより欧州諸国は搾取と収奪を基本とする植民地支配システムを完成させ、欧州における平和と秩序は維持されることとなった。(5)」ということです。

確かにこのようなダブルスタンダードな状況は、特に第二次世界大戦後のアジア・アフリカ諸国の独立までは顕著に存在していたと言えるでしょう。アジアにおいてはオスマン帝国はその中東エリアが主としてイギリスの植民地となり、インドもイギリスの植民地と化しました。また清国も領土割譲こそ香港、マカオにとどまりましたが、その経済権益を欧州列強や日本に奪われることとなりました。

ただし、植民地分割が完了し拡大する余地が無くなると、植民地の再分割に向けた帝国主義戦争が始まってしまいます。これにより欧州の国民国家同士の平和維持システムが破綻に瀕することとなりました。(6)
これも歴史に照らして観れば、第一次世界大戦などはその典型的な事例として挙げられます。この戦争は、後発国たるドイツが、英仏露の植民地獲得の先発国に挑んだ戦争という側面も濃厚でした。

4)国民国家のような主体の存在しない資本の拡大運動としての帝国

国際連合

一方資本制システム自体は、国民国家がもっている主体的頭脳のようなものを欠いていて、無限に拡大しようと動くだけでいかなる力もこれに対抗することが出来ない、ということがあります。従って、資本はただただ拡大していくが、この過程で植民地と宗主国という関係を破壊せざるを得なくなってきます。その果てには、資本がフランスやドイツと言うような国民国家にまたがる多国籍企業という形態が出てきます。そうなってくると、本来互いが均衡関係を保つ単位であった国民国家が、それをまたぐ多国籍企業のような形態の進展により乗り越えられ包摂されて、均衡関係が崩壊してしまいます。このように国民国家という枠組みが掘り崩されるとその先には、国連の機能停止や国際法の意味の喪失につながっていくような事態があり得る、ということになります。(7)

3.「国民国家」による秩序を掘り崩す新たな世界秩序を巡る動きとトランプ革命の関係性

1)ナショナリズムを基盤とするウェストファリア体制に馴染まないアメリカ帝国

アメリカ独立革命

近代の国際秩序が国民国家の枠組みの中で、成立し一定の均衡状態を維持してきたのは、間違いないところです。そのような平和と安定の基盤が国民国家の枠を超える資本の動きの中で掘り崩され、形骸化しつつあるということですが、確かに多国籍企業の動きは国境を越えており、主権国家の領域内での絶対的な支配権も国境を越えてしまえばその動きを完全に捕捉することは困難になることは間違いないところでしょう。このような状況は広い意味で「古代ローマが実現」し「神聖ローマ帝国が憧憬」して果たせなかった「世界帝国の再生」とでも呼べるのかもしれません。国民国家により形成された「近代の帝国」の典型としての「国民帝国」(「植民地帝国」)とは相違する本格的な「世界帝国」がウェストファリア体制に続く新たな世界秩序として姿を現しつつある可能性もあるのです。

ここでいう「世界帝国の再生」を理解する場合のモデルとしてアメリカの存在を検討してみましょう。アメリカは国家成立当初より従来の西欧型国民国家の実態とはかけ離れており、元来「国民国家の要件」を欠いた存在であると言えるでしょう。アメリカの国家形成の原理は、民族的な基盤に基づくナショナリズムとは言えず、あくまでも「自由と民主主義」ということになりますが、これは国民国家的な次元の理念ではありません。すなわち、「自由と民主主義」を主体的に受け入れることが出来る人間であれば、たとえそれが元はどんな人種、民族、言語の人間であっても支障なくアメリカの国民になることが可能であるという原理です。このような原理及びそれに基づく国家とは、明らかに国民国家、ナショナリズムと言った要素を否定するものであり、もともとアメリカは脱ウェストファリア的な状況を志向する原理に基づく「特殊な国家」であった、と言えるでしょう。

2)脱ナショナリズムの普遍的な原理に基づく帝国としてのアメリカ

ソ連東欧革命

合衆国大統領であったジョージ・ブッシュ・ジュニアが21世紀初頭にリトアニアや東欧各国を歴訪して熱狂的に迎えられた時に現地で、イラク戦争に反対した独仏を「古い欧州だ」と切り捨てた発言があって注目されたことがありました。これは単にブッシュ・ネオコン政権の偏った発言という要素もあったものの、本質的にはウェストファリア型の国民国家原理に基づく西欧を牽制しつつ、元来「自由と民主主義」とは対立していたものの、ウェストファリア体制とは異なる「社会主義」という「普遍的な理念」に基づいて形成されていた東欧圏を取り込もうとした戦略的な発言であり、結果的にその戦略が一定の成功を収めたもの、とも言えるかもしれません。(8)(9)

すなわち、当時のアメリカは「社会主義」という普遍的な原理で成り立っていた東欧諸国を、ソ連の崩壊を機に新たに「自由と民主主義」という普遍的な原理で取り込み、その勢力圏を拡大した、とも言いかえることが出来たかも知れません。
またこの状況は、アメリカ一国の問題と言うよりも冷戦後の現代世界を全て呑み込もうとする「グローバリゼーション」や「資本主義の発展した段階」「市場原理主義」と言った現象を包括的に捉えて、「世界帝国の再生」現象の一端と描写出来たのかも知れなかったのです。

3)トランプ大統領のアメリカファーストによるグローバリズム,市場原理主義,資本主義への攻撃

トランプ,ヒトラー
しかるに、そのような普遍的な「自由と民主主義」という理念をベースに脱ナショナリズム的な観点から国家を成立させてきたはずのアメリカにトランプ大統領が誕生したのは、アメリカの建国以来の理念を根底から揺るがす衝撃的な変化、と言える気がしています。

すなわち、トランプ大統領の成功の要因は、アメリカを「自由と民主主義」という普遍的な原理に基づく特殊国家から、ナショナリズムに基づく国民国家の枠組みに再構成することにある程度成功した、ということにあるのではないか、というのが私の現時点での見立てになります。
この際、トランプ大統領が、本来国民国家としての由来を持ちにくいはずのアメリカにとってのナショナリズムの基盤に据えたのは、かつての偉大なアメリカ、すなわち第二次世界大戦に圧勝し繁栄を極めた戦後の1950年代頃のアメリカへの郷愁=ロマンチズムであり、そこに向かってアメリカを再生しようとする「Make America Great Again」というスローガンであった、ということになりましょうか。

そして、トランプ大統領の選挙運動においては、かつてのあの時の反映しセピア色の繁栄を謳歌していた時代のアメリカへの特に白人有権者の郷愁=ロマンチズムをかきたてることに全力を挙げることで票を掘り起こし、アメリカを一気にグローバリズム,市場原理主義,資本主義を基調とする普遍主義の特殊国家から、ナショナリズムに基づくアメリカ市民を第一に考えるアメリカ国民国家へと、その歴史的な枠組みまで再構成しようとしつつあるのではないか、と考えられます。

そのように考えると、トランプ大統領の出現は、ソ連・東欧圏の崩壊による20世紀後半の革命に匹敵する、ある意味では世界史的で革命的な事象と捉えることもできるのかもしれません。

そして、まさにこれは1930年代にヒトラーが、ドイツで行った政治運動と同一線上にある、とも言えるような気がします。
まさしく、トランプ大統領の出現は、ドイツ映画「帰ってきたヒトラー」が先取りした事態の現実バージョンとも見なせそうです。

尚、アメリカファーストの帰結として一部で想定されている、アメリカ版文化大革命と中国の文化大革命の関連性については以下のリンクで詳しく分析しています。
トランプ政権を離れたバノンはヒトラーの予言実現のためアメリカ版文化大革命を扇動する!
トランプのアメリカファースト路線でヒトラーの予言したアメリカの文化大革命的混乱状況が完成する!

参考文献
(1)的場昭弘:マルクスを再読する 五月書房 2004 第一章 アントニオ・ネグリの「帝国」の概念 p14
(2)杉原董:帝国の研究 名古屋大学出版会 2003 第4章 近代国際秩序の形成と展開 p141
(3)杉原董:帝国の研究 名古屋大学出版会 2003 第4章 近代国際秩序の形成と展開 p140
(4)杉原董:帝国の研究 名古屋大学出版会 2003 第4章 近代国際秩序の形成と展開 p141
(5)的場昭弘:マルクスを再読する 五月書房 2004 第一章 アントニオ・ネグリの「帝国」の概念 p16
(6)レーニン:帝国主義論「帝国主義の世界再分割」についての記述
(7)的場昭弘:マルクスを再読する 五月書房 2004 第一章 アントニオ・ネグリの「帝国」の概念 p17
(8)加々美光行:裸の共和国 世界書院 2010 第5章 大漢民族主義は超えられるか P203
(9)加々美光行:21世紀の世界政治3中国世界 筑摩書房 1999 第14章 覇権国家の諸類型 P149

トランプ大統領による西側同盟解体路線による混乱でドイツはロシア、中国との三国同盟に走る? 

2017年9月の選挙では、大方の予想に反して極右反移民のポピュリスト政党AFD(ドイツのための選択肢)に躍進を許し、大幅に議席を減らしたメルケル首相ですが、ドイツが20世紀中に世界征服を目指して二度の世界大戦を闘い、軍事力や科学力等で世界最強レベルだったにも関わらず、二度とも脆くも敗退した理由を「強者の自制」の視点から検証しつつ、戦後七十年を経て、メルケルのドイツがイギリス,アメリカの混乱を尻目に着々とヨーロッパを支配しつつある状況を分析しています。

1.「強者の自制」の欠如がもたらす歴史的な敗北
 1)ドイツが二度の世界大戦で敗北した要因の分析
 2)「強者の自制」の演者がイギリス、アメリカからドイツに移行
2.総括・2017年G7直後のメルケルのミュンヘン宣言の歴史的重大性

1.「強者の自制」の欠如がもたらす歴史的な敗北

1)ドイツが二度の世界大戦で敗北した要因の分析

以前から感じているのですが、アングロサクソン国家や中国は、流石に先述したビスマルクがナポレオンの言行から導き出した「強者の自制」という教訓を実践している気がします。
イギリス、アメリカは、この200年間ほど、中国に至ってはより長いタイムレンジで、いわゆる「最大成功を積み重ねてきている」ことは歴史的な事実だと思われますが、一定の自制の精神を発揮することで、それなりに安定した国際秩序を維持してきている、と認識しています。
ドーラ

翻って、ドイツは第一次世界大戦、第二次世界大戦において、「強者の自制」の精神を発揮出来ていたでしょうか。もっと遡れば、たとえ世界強国になったとしても、その瞬間に直ちに世界制覇を目指すべきだったのでしょうか?
やはりドイツが、これまで科学力や技術力で世界最強レベルをキープし、二度も世界征服を目指す戦いを展開しながら、どうしても世界覇権国の座に手が届かなかったのは、「強者の自制」を発揮出来なかったことに尽きる、ような気がするところです。

世界戦争における勝敗のカギは、戦力差や戦術差、戦略差もさることながら、圧勝を積み重ねた段階でどこまで「自制の精神」を発揮出来るかにあった、ということになりそうです。
自走砲

2)「強者の自制」の演者がイギリス、アメリカからドイツに移行

ちなみに、第二次世界大戦後のドイツは、戦争の痛手の大きさもあったかと思われますが、三度目の世界戦争に邁進するような暴挙とは無縁の非常に慎重で丁寧な政治活動に終始してきた印象があります。

翻って2016年の欧州情勢に関しては、難民問題以上にショッキングな出来事として、イギリスのEU離脱国民投票がありました。
この時のイギリスのデイビット・キャメロン首相兼保守党党首は、あたかもウィルヘルム二世やヒトラーが世界大戦に打って出た時と似たような気分で、自分の信念に基づき未来への確信に満ち満ちて、英国の今後の命運や自分の政治生命を賭けてまで、敢えて本来は必要不可欠だったかどうかわからない国民投票を選択して敗北した、と認識しています。
キャメロン

イギリスでは、その後2017年4月に任期を3年も残し、選挙前の時点で過半数を確保しているにも関わらず、前倒しで総選挙を実施して圧勝し、より多くの議席を確保して強力な政権基盤を背景にEU離脱交渉を有利に遂行しようとしたテリーザ・メイ首相が、蓋を開けてみれば結果的には保守党の議席が10議席以上も減ることで、過半数割れに追い込まれてしまいました。メイ首相の賭けは失敗に終わり、キャメロン前首相の賭けに続いて、またもやイギリスは階段を転がり落ちるスピードを増した印象で混乱と奈落へまっしぐら?な雰囲気すら出てきています。

メイ首相 敗北

さらにアメリカでは、自制の精神とは対極の精神構造の持ち主を中核メンバに結集した、トランプ政権が発足しました。トランプ政権では、コミーFBI長官の解任を巡ってロシアの大統領選挙への介入とトランプ陣営との関りが益々問題とされ、メイ首相が賭けに敗北した総選挙の投開票日である2017年6月8日同日にコミー前FBI長官への上院での議会証言が行われ、コミー氏はトランプ大統領による自らの解任やフリン前補佐官捜査中止要請、忠誠明言要求などについて述べ、トランプ大統領と自分との二人だけの会話メモを第三者で友人であるコロンビア大学教授と共有し、「録音テープがあるというトランプ陣営の発言通りであれば公表してほしい、本件メモの存在と外部への展開が特別捜査官の設置に直結すると考えていた」と述べるなどトランプ政権を巡る混乱も一層深まっています。ちなみに、トランプ政権内ではロシアゲートの進展に伴い本件に関与していたとみられるクシュナー氏が失脚しつつあり、ロシアンゲートに無関係とみられるレーニン主義者で毛沢東の文化大革命に郷愁を抱くバノン氏が復権してパリ協定離脱を主導したとも言われています。

コミー証言

このようなアメリカ、イギリスの混乱した状況を観察していて気付かされるのは、先の第二次世界大戦までは、統治者が賭けに頼るのはドイツ側が専門で、自制の精神を備えた統治者は英米側の専売特許だったのが、戦後70年を経た現代においては自制の精神を備えた統治者の本場はドイツ側で、賭けに頼るのが英米側というように、統治者の方向性が完全に入れ替わってしまっていることです。

2.総括・2017年G7直後のメルケルのミュンヘン宣言の歴史的重大性

このような情勢を踏まえてヨーロッパの状況を振り返ればドイツは、ベルリンの壁崩壊、東欧革命、ドイツ統一、ソ連邦崩壊、EUの東方拡大、南欧諸国の経済危機、中東からの難民受け入れ、などの節目節目で存在感を増大させ、いつの間にかEU内での覇権国の地位を確保するに至ったように見受けられます。

先の二度の世界戦争の敗北も踏まえてドイツは、遂に三度目の正直で「石橋を叩いても叩いてもなかなか渡らない」「自制の精神」に満ち満ちたアンゲラ・メルケルという、エカチェリーナ二世を模範として仰ぐ傑出した指導者を得て、かつてウィルヘルム二世やアドルフ・ヒトラーが武力では成し遂げられなかった、欧州制覇という高みに手が届きそうなところまで到達した気もする、昨今のヨーロッパ情勢とも言えましょうか。
メルケル首相

これらの状況も踏まえつつ、2017年5月のG7直後にミュンヘンのビアホールで支持者を前に、ドイツのメルケル首相がいつになく明確に、「もはやアメリカ、イギリスに完全に頼れる時代は終わった。ヨーロッパ(ドイツ?)は運命を自分たちの手で勝ち取らなければならない新しい歴史の段階に入った。私は今回のG7でそのことを痛感した」と述べました。
この演説を聴いた支持者達の拍手は、一分間ほど鳴り止まなかったということですが、ミュンヘン宣言はよほどドイツ人の心に響いた、ということになるんでしょうか。
メルケル首相は、その後もことあるごとに、このような論旨を繰り返しているということですが、これは本質的にはベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊で東側からの掣肘がなくなってからも引きずっていた第二次世界大戦の残滓について、いずれも不安定な基盤の上で混乱した政権運営を重ねるアメリカのトランプ大統領、イギリスのメイ首相らと直接G7の首脳会談の席で対峙した結果を踏まえて、メルケル首相が事実上「もはや72年間も続いた、異様に長かった第二次世界大戦の戦後は完全に終わった。我々は自分たちのフリーハンドで我が道を行く」との自己主張を開始した、ということになるのではないでしょうか。

メルケル プーチン枢軸

今後、安倍首相の対米従属朝貢外交一辺倒とは真逆になりそうなメルケル政権のトランプ政権との本格的な対峙やEU離脱交渉を巡るメイ首相とメルケル首相の駆け引きの行方も、非常に愉しみになってきました。

尚、トランプ政権に対峙する日本とドイツの本質的な立場の相違については、以下のリンクもご参照ください。
小池新党に怯え,前倒し総選挙を目指す安倍首相のトランプ大統領への朝貢的対米従属の淵源に迫る!
トランプのアメリカファースト密着の朝貢的対米従属でドンシン関係を目指す安倍首相の前倒し総選挙はメイ首相の二の舞か?