⭕️トランプの移民政策,米中対決,アメリカファーストはバノン主義である!

2023年7月1日

トランプ時代のアメリカは、新型コロナに直撃され、世界最大の感染者、犠牲者を抱える展開となったものの、これまでの戦後の国際的な危機では必ず果たしてきたリーダーシップを全く果たそうとせず、当にモンロー主義的な閉鎖的孤立主義を貫き通した、とも言えましょうか。
これは、トランプ的には選挙公約通りであり、バノン流のアメリカファーストを文字通り貫徹した、ことになりそうです。

トランプ大統領は、政権を揺るがすかに観えたウクライナ疑惑もほぼ無傷で乗り切り、次々に暴露される政権内幕情報も炎上商法のネタとして最大限活用し、経済も好調で支持率も上向きの中で、当に大統領再選に向けてまっしぐらに突き進んでいきました(結果的には大統領選挙にて敗北)
そういう中でも、トランプ政権の動きをトレースすると、中国弱体化を本気で推進する貿易戦争の発動、金正恩との首脳会談実現、中東の泥沼戦争からの足抜け、同盟国への駐留米軍に対する負担拡大要求など、暴露本「炎と怒り」の主要部分をリークして訣別したはずのアメリカファースト革命を思想的に体現するバノン氏が公言していたシナリオの通りの展開を強めている印象がありました。

トランプ大統領は、マスコミ報道をフェイクニュースとして徹底攻撃しつつ、ウクライナ、ロシア関連の疑惑を追及しきれなかった民主党の腰抜けぶりも強調しながら、コアな支持基盤を盤石化し大統領再選を確実にするべく全力を挙げていきました。
これらの一連の動きが、真のアメリカの国益を体現する市民を支持層の中核に据えてアメリカを私物化していたエスタブリッシュメント打倒を目指すアメリカファースト路線というバノン主義の体現であることは疑いないような気がしましたが・・・

とはいえ、その黒幕のハズのスティーブン・バノン本人が2020/8/20段階でメキシコ国境の万里の長城?!建設を巡る資金集め詐欺に関与した疑いで逮捕されたようですが、当に百鬼夜行というか、混乱の極致を演出するような異様な形勢ですかねえ・・・

トランプ氏が大統領選挙に当選した理由としてのバノン氏の世界観

特殊で巨大すぎる役割に疲弊するアメリカの解放

トランプ氏が大方の予想を裏切り、アメリカ大統領に当選した理由については、アメリカ型民主主義や資本主義の制度疲労もあるかも知れません。
アメリカの多くの有権者は、「ワシントンの官僚やウォール街の投機家が操る既存体制を解体して、オバマに期待して裏切られた真の変革を多少なりとも実現するためには、しがらみのないフレッシュ?なトランプが良いとの選択」をした、とも言えましょうか。

トランプ氏に関しては、自前の資金力で大資本の操り人形にならずに、政治活動が可能な自主独立的な政治家という意味では、日本で類似の立場を確保していたのは「刎頸の交わり」の小佐野賢治の資金力を活用出来た、あの田中角栄のような気がします。
かつての田中角栄も当初は既存のエスタブリッシュメントで固められた体制に、風穴を開けることが期待されて、今太閤とうたわれたものででした。

それはさておき、特に軍事外交を中心に国際社会に密接にコミットメントするアメリカの非常に積極的な姿勢は、かつてフランクリン・ルーズベルトがアドルフ・ヒトラーの世界征服活動に対抗して、イギリス等を支援するために孤立主義を放棄して以来確立されてきたものと言えましょう。その後は戦後の冷戦期から今日に至るまで「世界の平和と安全にかなり強引に関与」する中で、「世界の警察官」としての特殊な超大国の在り方を追求してきた、と言う状況がありました。
昨今では中東への積極的な関与としてのアフガンやイラクへの直接介入やサウジアラビアへの米軍の駐留などが特筆されます。
そういう経緯がある中で、トランプ氏は、そのようなこれまでのアメリカの国際社会における特殊な在り方を根本的に変革し、『戦略的な世界の平和と安全を中心に考えるのではなく、まずアメリカ及びアメリカ国民の暮らしと安全を第一に考える素直な常識人としての発想』でアメリカを指導することを目指している人物である、ということを選挙民に印象付けることに成功したことが最大の勝因でしょう。
そして、そのようなシナリオを描きトランプ大統領の選挙戦を演出したのが、トランプ氏の選挙対策本部長で2017年8月まで首席戦略官を歴任し、ブライトバートに復帰した後、表面上は暴露本への情報リークでトランプ大統領と訣別したため現在はフリーランスの立場にある、とされているバノン氏ということになるでしょう。

マスコミやプロの政治評論家が読み違えた選挙民とトランプ氏の連帯

2016年の合衆国大統領選挙の結果に関しては、基本的には「アメリカの有権者が、これまでの理想主義的な建て前の議論に飽きて、目の前の現実を重視して本音で投票した」ということだ、と想定されます。
出口調査時点ですらも「トランプには投票していない」とコメントしながら、実際にはトランプに投票していた有権者も多かったようであり、多くの有権者が表向きはトランプに投票したとなると「体裁上カッコ悪い」という要素を持ちながらも、秘密が守られる投票所の中では「ドナルド・トランプ」の名前を選んだ、ということになります。
このようなトランプ氏への多くの市民の支持に裏打ちされた驚くほど多くの「隠れトランプ票」が雪崩を打って流れ込んでくることによって、マスコミも専門家も票を大幅に読み違え、結果的にアメリカ市民に騙された、ということになりましょうか。

このトランプ氏が動かした滔々たる票の流れは、見方によれば「投票行動がばれると体裁が悪いものの、どうしても投票してしまうという魔力」が、トランプ氏及びその選挙活動の中にあったということになるんでしょうか。このことは、多少ナチスの台頭を彷彿とさせる要素もありますし、通常巷間に言われる通りアメリカの何年か後を追いかけている日本にも、そのうちに似たような光景が展開するような予感もしています。

選挙結果に対する有権者の動揺と喝采

2016年大統領選挙での大方の人間がほとんど想定しない選挙結果という点に関しては、その重大さという一点でも「イギリスのEU離脱を巡る国民投票の再現」という感じもしました。欧州に滔々と流れ込む中東からの移民の流れと、それに対抗する移民排斥派を中心とする極右政党の台頭が懸念されていますが、流石に「流行を先取りするイギリス」は、今回もそのような欧州大陸の時代の流れを驚くべき形で先取りし、「EU離脱」という結果を導き出しました。このような重大な歴史の地殻変動は、世界的に連鎖することがあるのかも知れませんが、2017年は欧州大陸でも、フランス、ドイツをはじめとして重要な選挙があり、今回の英米の驚天動地の選挙結果は特にドイツの政治情勢に影響を与えたとも言え、第四がどのように影響するか、まったく目が離せなくなりました。

尚、2016年合衆国大統領選挙の選挙結果に対する抗議行動の盛り上がりは、あり得ない結果に対する棄権者の抗議のようにも感じられ、「今更行動しても遅すぎる」という点でも「イギリスの離脱反対派の油断に共通」するところも多く感じられます。
突き詰めて言えば「選挙は事前の予想で決まるのではなく、最終的な選挙結果で決まる」ということを常に肝に銘じておかなくては、民主主義における政治活動は出来ない、ということになりましょうか。

、2016年の大統領選挙戦において、飛び出してきたトランプの数々の『暴言』は、マスコミや選挙のプロのような玄人からすれば、「投票結果に直結する目くじらを立てるような最悪の選挙活動であった」でしょう。
しかるに最終盤に飛び出してきたトランプ氏の「女性の敵のような言動に関する報道」も「トランプ氏への投票を決意した有権者からすれば日常のテーブルトーク次元」で大した問題ではなかった?ことを考えれば、一度トランプに流れた現状に対する怒りや閉塞感を覚える「真の変革のマグマ」の大きな流れるのを止めることは出来なかった、ということになります。
このあたりは「暴言、虚言」と既存巨大マスコミが騒ぐほど、かなりの数の有権者は「マスコミの欺瞞を直感」しつつ「トランプ側に立って拍手喝采する循環」の流れが出来上がっていったと考えざるを得ません。そしてそのような喝采は、「いわゆる白人低所得者層」という枠組みを超えて広く深くアメリカの中枢部に広がっていった、ということになるでしょう。
ともかく、トランプが「本来行われるべきだった政策の論理と具体的な行動方針を有権者に届く言葉」で語りかけ、かつ「アメリカの栄光に結び付けた」時点で前回のオバマの「変革=Change」に似た「大統領選挙の勝利の方程式」がゆっくりと、しかし確実に動き始めたのではないでしょうか。
このあたりの魔術のような巧みな選挙戦術を主導し、計算通りに選挙戦を勝利に導いたのが、トランプ大統領の選挙対策の責任者であったバノン氏の最大の功績になるでしょう。

2016年の合衆国大統領選挙の帰趨を決した激戦州の情勢

オハイオの形勢

オハイオは、選挙人18で、ここ何回かの選挙で民主、共和の双方が交互に勝っていた激戦州であるが、全米の縮図的なところがあり、トランプ氏にベッタリと観られた白人貧困層だけでなくリベラルな白人中間層も多く、一見したところではトランプ氏に大量の票が流れず、クリントンが有利な要素も強い、と事前には想定されていました。
そういう中で、もしトランプ氏がオハイオを取れば「隠れトランプ支持者が予想以上に多い」ことが証明され、全米の票の流れも想定外な状況になりうる試金石とも目されている州であったと言えましょう。
結果的には、ここでトランプ氏が勝利したことで、クリントン陣営に衝撃が走り、全米のマスコミやプロの政治評論家達も自分たちの票読みが実は間違っていたのではないか、ということに遅まきながら気づくことになります。

フロリダの形勢

フロリダは、トランプ氏がメキシコ国境の壁建設公約等で攻撃対象にしていたヒスパニックも多く、オハイオなどと違って白人も貧困層が少なく富裕層高年齢層が多いということで、基本的にはクリントン圧勝、少なくとも勝利は間違いない、とされていました。
そういう中で、フロリダでの最終的な選挙結果を観れば、実際のところ「多くの白人有権者層はブッシュ時代のネオコンやオバマの人道的中東介入政策を本音では嫌っていた」のではないか、と思えるような状況が現出されました。
すなわち、アメリカの主流とでも言うべき有権者層に、このあたりで一度「トランプの掲げる国内重視、世界への介入縮小方針で行ってみるのがアメリカの国益にもなるのではないか」との「広範な世論形成や世界認識が出てきた」と言えるのかも知れません。
結局、トランプ氏を勝利に導いたのはいわゆる白人貧困層だけではなく、それ以外の「広範な隠れ支持者?が雪崩現象的にトランプ氏の単純明快なアメリカ第一主義の論理と公約に共鳴した結果」ということになりましょう。

確かに現在のアメリカは、「軍事力は世界に冠たるレベルを未だに維持していますが、国内のインフラの老朽化は深刻で、新規にインフラを整備してきた中国の沿海部の大都市エリアや日本には太刀打ち出来ない」ことは、アメリカの心ある人々からすれば火を見るより明らか、と言えましょう。
このあたりに関して、トランプが公約する巨大なインフラ投資の魅力は大きく、フランクリン・ルーズベルトのニューディール政策あるいは、ヒトラーのアウトバーン建設による景気回復を想起させる要素もあり、レーガン時代の軍事予算大幅増額より、余程アメリカ経済及び世界経済に好影響を与えそうな予感もあり、それにつれて世界の株価も上昇傾向にある今日この頃です。

トランプ大統領時代の世界情勢はどうなるのか

世界の警察官からの脱却

2016年の大統領選挙戦中のトランプ氏の発言を聴いていると、「アメリカが戦後維持してきた世界の警察官としての役割を放棄して普通の国になりたがっている」ように思われてなりませんが、そうなった場合の世界情勢は果たしてどうなってしまうのでしょうか?

まず考えられるのは現代に生きる市民達が、非常に長期にわたった第二次世界大戦の「戦後」の終焉を目撃し、新たな世界秩序が再構築される瞬間を眼前にする可能性があるのではないか、ということです。
第二次世界大戦における最大の主戦場であった欧州の東部戦線でナチス・ドイツを壊滅に追い込んだソビエト連邦は、オスマン帝国のように顕著な衰退期間を過ごすこともなく1991年にあっけなく崩壊してしまいました。今回はソ連崩壊後に一極によるゆるやかな覇権体制を構築していたアメリカも、トランプ大統領の登場とともにようやく唯一の覇権国の地位を放棄し「普通の国」になっていくということなのかも知れません。
しかし、考えてみれば第二次世界大戦の戦後は、「今日の展開の早い世界情勢の中では、例外的に異様に長期間維持されてきた」と痛感せざるを得ないでしょう。すなわち2017年は第二次世界大戦終結以来72年を経過したわけですが、例えば日露戦争終結の72年後といえば1978年ごろとなりますが、もし1978年に日露戦争のことを日常的に意識したり、今日の「戦後」を生きる感覚で「日露戦争後」を感じている人間は誰もいなかったのではないでしょうか。
そういう意味でも、今日の時点で第二次世界大戦における「連合国の完璧な無条件降伏による勝利」と「枢軸側の壊滅的な敗戦の意義」を、かつての枢軸国の一員として噛みしめてみるのも世界史的な意義があるのかもしれません。

普通の国としてのアメリカの方向性

トランプ氏の世界戦略の基本には、「余裕を失ったアメリカは、もはや安保タダ乗り論を一切許せる状況にない」という論理が頭をもたげてきている印象があります。
アメリカが同盟国との間に防衛協定等を締結し、「空理空論的な戦略的な優位を維持しようと努力」している間に、「アメリカの保護のもとで格下の同盟諸国が応分の防衛費の負担をすることなく、ぼろ儲けしているのを指をくわえて眺めるのは到底我慢出来ない」ので、「アメリカも同じ次元で普通の国として、可能な限りの儲けの分け前に与るのが当たり前である」、という非常に単純で当然の論理が、トランプ氏及びその熱狂的な支持者の発している世界へのメッセージとなりましょうか。

このような常識的な当たり前の認識と論理は、ワシントンの戦後の政界の常識の延長線上からは、なかなか出てこない発想でしょう。そういう中で政界のアウトサイダーとしてのトランプ氏は、そういう「アメリカの普通の人々から観れば異常ながら、ワシントンの政治エリートからすれば金科玉条だった世界観」をぶち壊して、アメリカの戦略を「真の意味でのアメリカファースト」あるいは「アメリカの普通の市民ファースト」な「普通の国の意識」にコペルニクス的に転回することを目指しており、そこにトランプ革命の意義と目的がある、と言えるでしょう。

そういう文脈でトランプ氏の言動を見直せば、トランプ氏は非常に一貫性のある人物であり一連の選挙戦での発言は、暴言どころか極めて普通の常識的な発言録となりうるわけであり、戦後以来オバマまでの指導者たちの掲げてきた「理想に基づく戦略の数々」の方が、将来のある時点で振り返ると「アメリカ市民をないがしろにしながら、極端な政策課題を掲げた異様な国家を長らく維持するような、あり得ない政治状況が具現化していた時代だった」と映ることになるのかも知れないのです。

ちなみに、トランプ陣営のこのような世界観や政治哲学には、バノン氏の考え方がほぼそっくりそのまま反映されている、と言っても過言ではないでしょう。

トランプ大統領の勝利に困惑し驚愕する有識者やエリート達

こうしてみるとトランプ氏の世界観を奉ずる政権に対処するには、これまでの長期にわたる戦後戦略の延長線上で発想していては、なかなか柔軟に対応できない、ことになりましょうか。
アメリカの有識者やマスコミの困惑や驚愕ぶりは、そのような混乱の有様を示すパニックのようにも見えますが、意外に証券市場が安定あるいは、トランプの政策に期待して堅調に推移しているのは、経済界の柔軟性を示す証左でもあり、興味深いところです。

今回の選挙戦を特集した番組の一部に、特に911以降の中東への本格介入後のアメリカ軍の人的被害の大きさや社会的なダメージを取り上げたものがありました。すなわち中東介入におけるアメリカ軍の犠牲者そのものは数千人規模のようであるが、そのまわりには大きな精神的ダメージを受けて帰国後に自殺したり、心的外傷を発症するアメリカ軍関係者は何倍何十倍も存在している状況があります。
これはまさに映画「ランボー」の主人公のように中東の戦地からの帰還後に、アメリカでの生活になじめなかったり、退役後に満足な収入のある職に就けないケースが数多く発生しているということでもあるのです。
そのように観てくると、さしもの超大国アメリカの無敵のアメリカ軍も、そろそろ対外武力介入政策を放棄して本格的な癒しの時期に移行していかないと社会・経済的にもたないところまで疲弊しているように思われてなりません。確かにオバマ前大統領も「世界の警察官」をやめるとは言っていましたし、中東からの一定の撤収方針は示しましたが、アメリカの戦略方針を劇的に転換するところまでのインパクトはありませんでした。
そういう意味でも、トランプ氏の世界戦略の転換と国内重視のアメリカファーストな政策は、アメリカの広範な民意を率直に反映しているということになりましょうか。

このようなバノン流の世界観を現実のワシントンやニューヨークに巣食うエスタブリッシュメントや欧州の批判的な同盟国との関係性の中で、どこまで維持出来るかは、トランプ大統領の再選可能性にも関わってくる興味深い事案になりそうです。

ちなみに、そのようなアメリカの内向きへの戦略の転換は、「新たな世界新秩序の構築」を模索するプーチンのロシアやアジアにおける中国、ひいては「欧州においてEUをベースにひそかに新帝国を建設しつつあるドイツ」あたりの思うツボということになるのかも知れませんが。

本稿の延長線上でトランプ大統領のラストバタリオン的な性格を詳しく分析した以下のリンクもご参照ください。

トランプ=ラストバタリオンのアメリカ乗っ取り=ナチ化とエスタブリッシュメント側のマスコミやマイノリティを巻き込んだ反撃がアメリカ大混乱の真相である!

トランプ大統領は米中冷戦、西側同盟解体=バノン主義=アメリカファースト路線と毛沢東的な人民独裁手法で大統領再選を目指す!