帝国支配の本質とその統治構造!

トランプ時代を迎えた世界の緊迫した情勢を帝国をキーワードに把握し、世界及び日本の在り方を包括的に検討し、アメリカがアメリカファーストに走る状況下での日本、中国、中東、欧州の対応を構想する。 

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台湾の中華民族による民主主義体制の成功は、中国共産党一党独裁体制の存在理由を否定する脅威である!

      2018/12/05

金正恩

「中華民族の国家」として史上初めて民主化した台湾が帝国的な一党独裁の支配体制を継続する中国共産党に与える破壊的なインパクトは北朝鮮の金正恩体制よりも危険である。  

1.民主化した台湾の存在が中国共産党一党独裁に与えた衝撃
 1)中国共産党による「伝統的な賢人政治」がいつまでもつのか?
 2)台湾が自ら選び取った議会制民主主義の重み
 3)中華世界で民主主義運営が可能なことが証明された衝撃
2.台湾の民主化はどのように達成されたのか?
 1)権威主義体制から民主主義体制への移行の前提条件
 2)国家と社会の微妙な距離感と利益調整メカニズムの構築
 3)国民党と人民大衆の民主化に向かう共同体験の進行
3.伝統的な賢人支配のエリート政治を転覆させた台湾の民主化
 1)李登輝と人民大衆による微妙なバランスのゲームの成功
 2)中国共産党にとっての改革モデルとして「台湾民主化」
4.台湾民主化の評価と中華世界統治への影響
 1)台湾民主化の中華世界への衝撃度
 2)「中華民族」が民主主義社会で暮らし続ける重み

1.民主化した台湾の存在が中国共産党一党独裁に与えた衝撃

李登輝

1)中国共産党による「伝統的な賢人政治」がいつまでもつのか?

民主化された台湾の存在は、現在も「伝統的な中華帝国の枠組みを堅持する中華人民共和国」にとって強烈なインパクトを与えていると言えるのではないだろうか。改革開放の進展に伴い、特に沿海部の経済発展は目覚ましいものがあるが、そういう中で「沿海部の中産階級の政治意識」に対して、いつまでも「伝統的な賢人政治」に依拠した発想が通用するのかは疑問もあるかもしれない。

2)台湾が自ら選び取った議会制民主主義の重み

台湾民主化
少なくとも同じ「中華民族」が、他から与えられたものではなく、自ら選びとって議会制民主主義を達成し、曲がりなりにも安定して運営しているというのは、1989年の天安門事件でそのような要求を武力で弾圧した共産党指導部にとって頭痛の種になりかねないだろう。
国内の「平和的民主化」と海外のインフォーマルな経済活動を展開する「台湾経験」は、共産党の一党独裁に固執する中国へのソフトな挑戦として、中華世界の変容を促す世界史的意義を有している。

3)中華世界で民主主義運営が可能なことが証明された衝撃

中華民族民主化

それはまた「家産官僚制」や「東洋的専制主義」と呼ばれ、現在でも「皇帝型権力」の政治的伝統を有するとされる中国に対して、同じく華人社会の一員である台湾において西欧型の議会制民主主義が実現されたことによる中華世界へのソフトな知的挑戦でもある。(1)

2.台湾の民主化はどのように達成されたのか?

台湾民主化t

それでは、台湾の民主化が何故達成されたのかを検討してみたい。

1)権威主義体制から民主主義体制への移行の前提条件

権威主義的体制から民主主義的体制への平和的移行には、「一人あたりのGNPに換算した経済成長」「教育の普及がもたらす識字率の向上」「社会の多元的価値を代表する中産階級の台頭」といった要因と「政治的自由化、民主化の相関関係」を検討する必要がある。(2)

2)国家と社会の微妙な距離感と利益調整メカニズムの構築

台湾民主化111

このような前提に立って、民主化を実現するためには、国家と社会との間に適度な距離が必要であり、国家は多元化する社会に対してどのように具体的に利益の調整をはかり、そのメカニズムの制度化を実現するために最大限の努力を払う必要がある。また民主化へ向かう体制移行の最中には、利益調整のメカニズムを具体的ろに発見して制度化するために国家と社会の双方がともに新たな争点でぶつかり合い、そこから妥協点を見出すという「学習のプロセス」が必要である。(3)

3)国民党と人民大衆の民主化に向かう共同体験の進行

国民党軍
こうしてみると「台湾の平和的民主化」とは、支配者としての国民党と被支配者としての野党や人民大衆が、そうした国家と社会の間に適度な距離を見出して、「具体的な体験」の中で幾多の危機に遭遇しつつ、民主化の必要性を認識してきた「学習のプロセス」を辿ってきたと言えよう。またこのような民主化過程が平和的に遂行されるためには、支配者と被支配者の間で、過度の暴力よりも適度の譲歩と妥協・調和をギリギリのところではかる方がコストが少ないということを認識する「学習のプロセス」も必要であった。(4)

3.伝統的な賢人支配のエリート政治を転覆させた台湾の民主化

李登輝555

1)李登輝と人民大衆による微妙なバランスのゲームの成功

「李登輝総統」と「野党、人民大衆」という政治的なアクターが、それぞれ「支配の正当性」と「政治参加の正統性」を体現しつつ利害の衝突と妥協を繰り返しながら、政治的「学習のプロセス」経験し、そこからバランスと調和を産み出す一定のルール・オブ・ゲームを確立してきた。
このことにより台湾政治の台湾化、民主化、ならびに中台関係の脱内戦化・共存状況の創出に一定の成功を観た。(5)

2)中国共産党にとっての改革モデルとして「台湾民主化」

台湾民主化666
このような微妙で繊細なプロセスを経て、流血を観ないスピーディーな民主化が実現した。中華世界の政治文化として伝統的な賢人政治・エリート政治が当のエリートの側から覆されたわけであり、このことは単なる民主化実現以上に奥深い意味が内包されているように思われる。台湾民主化は、現時点では中華人民共和国の政治体制に対して、重大な影響を与えているとは言えないであろうが、今後改革開放路線の行き詰まりや、官僚の金権腐敗、人権問題や民主化要求に対する体制側の後ろ向きな対応などがクローズアップされてきた時には、一つの改革モデルとして「台湾経験」が大きな意味を持ってくることも考えられる。

4.台湾民主化の評価と中華世界統治への影響

デモ隊

1)台湾民主化の中華世界への衝撃度

「中華帝国」という観点に立てば、台湾は漢人中心の社会とは言え、領域的には閉じられた島であり、到底「中華天下」を包括しているとは言えない。「台湾民主化」は言ってみれば「中華帝国の一省」レベルの話ということになるかもしれない。高度成長期の日本においても国政は自由民主党が盤石に支配している時期に、東京都知事に美濃部亮吉氏が当選して革新都政を展開していた、ということもある。同列には論じられないだろうが、全国支配と地方支配の差は歴然として存在するだろう。

2)「中華民族」が民主主義社会で暮らし続ける重み

祭英文,李登輝

それでは、省レベルは民主化可能だが、帝国全体は共産党が支配を貫徹するということがありうるかというと、これは中華大一統の原理に抵触しかねないとはいえ、香港の実例もあるので、一概には否定できないところである。清帝国には、内地と藩部と言う一国両制の伝統もあり、香港は一国両制の現代版と言うことになるが、台湾もその範疇でとらえられるかもしれない。
いずれにせよ、2000万人以上の大陸の中華世界に住むのと同じ「中華民族」が、完全な西欧型民主主義体制のもとで安定して暮らしている、という事実の大きさは十分にかみしめていく必要があるだろう。

尚、本稿の延長線上で台湾民主化に関しては、以下のリンクでも取り上げています。
中国全土で西側民主主義実現が可能なことを台湾の民進党,蔡英文総統当選が実証!

<参考文献>
(1)井尻秀憲:台湾経験と冷戦後のアジア 勁草書房 1993 序章 世界史の中の「台湾体験」 p5
(2)井尻秀憲:台湾経験と冷戦後のアジア 勁草書房 1993 序章 世界史の中の「台湾体験」 p9
(3)井尻秀憲:台湾経験と冷戦後のアジア 勁草書房 1993 序章 世界史の中の「台湾体験」 p9
(4)井尻秀憲:台湾経験と冷戦後のアジア 勁草書房 1993 序章 世界史の中の「台湾体験」 p9
(5)井尻秀憲:台湾経験と冷戦後のアジア 勁草書房 1993 序章 世界史の中の「台湾体験」 p10

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