帝国支配の本質とその統治構造!

トランプ時代を迎えた世界の緊迫した情勢を帝国をキーワードに把握し、世界及び日本の在り方を包括的に検討し、アメリカがアメリカファーストに走る状況下での日本、中国、中東、欧州の対応を構想する。 

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中国の伝統的な帝国支配構造、賢人政治と近代以降の国民党、共産党統治の同一性!

      2018/09/17

台湾

孫文による辛亥革命を起源に持ち、「以党治国」を掲げてエリートによる一党独裁体制を一貫して貫いてきた国民党が支配する台湾が、1990年代に中華世界において歴史上初めて完全な民主化を達成したことの意義とその影響を検討する。

1.中華天下における統治方式の特徴
1)中華世界という巨大帝国を統治するための方策
2)強力な一元的支配を貫徹するための中核の必要性
2.中華世界における独裁権力を正統化してきた論理
1)何故中国には独裁的権力が必須なのか?=エリート専制支配の正統化
2)中国伝統の賢人政治を継承する国民党、共産党
3.中国を統治するためのイデオロギーの特徴
1)多元的価値共存の否定
2)中華帝国から現代中国まで通底する絶対的価値の重視

1.中華天下における統治方式の特徴

大清帝国

1)中華世界という巨大帝国を統治するための方策

中華世界は、欧州並みの面積を持つ巨大帝国であって、その内部は異質で多様な政治、経済、社会的要素が混在した多元的社会であると言える。多元社会であれば、それを反映した多元政治が似合うと思われるが、現実はその反対の政治体制が続いてきている。
すなわち多元社会であるからこそ、その内部に異質な要素がひしめき合っている帝国を統一するには、強力な一元的支配が必要であると歴代の為政者は考えてきた。(1)

2)強力な一元的支配を貫徹するための中核の必要性

国民党,中華民国旗

一元的支配を行うには、一元的支配の中核が必要になるが、辛亥革命前の段階ではその中核は、皇帝を頂点とした巨大な官僚体制であり、辛亥革命後は皇帝専制に代わって国民党や共産党が登場してきた。(2)
このように中華世界においては、有史以来一貫して人民大衆が政治の主体になることはなく、あくまでも統治される立場にとどまってきた。このような状況は辛亥革命においても大きく変化することはなく逆に近代化に伴い支配体制が洗練され、国民党あるいは共産党の党のエリートによる独裁体制が強化されてきたとも極言出来よう。

2.中華世界における独裁権力を正統化してきた論理

訓政

1)何故中国には独裁的権力が必須なのか?=エリート専制支配の正統化

それでは、辛亥革命を経過しながらも相変わらず中華世界で「一党独裁」を正統化してきた論理とは何だったのだろうか。
中華世界において、皇帝支配から始まり、袁世凱の帝政論、孫文の訓政論、共産党の独裁論の底流を流れる一貫した共通認識として、「中華世界の大衆の意識が低い」というものがある。これが全ての出発点であって、人民大衆には「帝国瓦解の危機意識」もなければ、「帝国統一の政治的技能」もなく、「政治思想」もないということを前提としている。ここから選ばれた知識人の代表のみが指導的中核を形成するという論理が正統化されてくる。また伝統的な天が人民の中の最も優秀で徳のある賢人を選び出して、天子として無能な人民を統治させる権限を与えるという伝統的な天下論も形成されてくるし、この賢人政治の伝統は現在まで直結している。またこのような賢人政治が崩れて、人民大衆が政治に登場すれば帝国的統一秩序が崩壊するという危機感も一貫してきている。(3)

2)中国伝統の賢人政治を継承する国民党、共産党

周恩来

このように伝統的な賢人政治の発想は、当の人民大衆がどのように考えているかはともかくとしても、少なくとも「国民党や共産党の党是」として堅持されてきていることは、現実の状況が証明しているところである。

3.中国を統治するためのイデオロギーの特徴

儒教

1)多元的価値共存の否定

このことは指導的なイデオロギーについても同様であって、多様な価値が並立する中華世界を帝国的秩序のもとにまとめていくためには、統一的イデオロギーが必要だ、と為政者は考える。多数政党による多元政治が排斥されるとともに、多元的価値の共存が混乱と分裂を招くだけであり統一に弊害をもたらすので、権力を掌握した政権はいずれも自己のイデオロギーを絶対化することで、そのイデオロギーで人民大衆を統一しようとする。イデオロギーと支配の正統性とは、緊密な関係にあるので他者のイデオロギーの存在、共存は排除される。

2)中華帝国から現代中国まで通底する絶対的価値の重視

三民主義

こうした中で辛亥革命前は儒教、中華民国では三民主義、中華人民共和国ではマルクス主義が絶対的価値として君臨してきた。(4)
このように観てくると、中国の基本的な統治構造は王朝時代から人民民主主義の今日に至るまで絶対的価値を重視するという方向性からは、基本的には変化していない、とも言えるだろう。
他方で、このような社会では、民主主義のような多元的価値を認めるような政治のあり方が成立しうるのかどうか、を検討するのは興味深いテーマである。このあと「完全な民主化を達成」し、中華民族が史上初めて民主主義の果実を享受している台湾の状況を検討していきたい。
中国全土で西側民主主義実現が可能なことを台湾の民進党,蔡英文総統当選が実証!
台湾の民主主義体制は、中国共産党一党独裁体制にとり北朝鮮金正恩体制より危険である!

<参考文献>
(1)横山宏章:中国の政治危機と伝統的支配 研文出版 1996 第1章 中国の危機とは何か p20
(2)横山宏章:中国の政治危機と伝統的支配 研文出版 1996 第1章 中国の危機とは何か p20
(3)横山宏章:中国の政治危機と伝統的支配 研文出版 1996 第1章 中国の危機とは何か p21
(4)横山宏章:中国の政治危機と伝統的支配 研文出版 1996 第1章 中国の危機とは何か p22

十全老人

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