帝国支配の本質とその統治構造!

トランプ時代を迎えた世界の緊迫した情勢を帝国をキーワードに把握し、世界及び日本の在り方を包括的に検討し、アメリカがアメリカファーストに走る状況下での日本、中国、中東、欧州の対応を構想する。 

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日本再生の条件は憲法改正ではなく日米安保条約=日米地位協定の改訂による対米自立にある!

      2018/08/09

幕末の不平等条約は明治新政府の懸命な努力と国民の臥薪嘗胆の上に築かれた国力の充実の賜物として何とか平等互恵な形に改正に漕ぎ着けましたが、戦後の日本の真の国際的な地位は果たして日米地位協定に明記された不平等条約的な状況の中でどのように位置づけられるのでしょうか?

米軍横田基地

1.戦前の一等国と戦後の西側先進国の一員としての日本の立場の相違
2.太平洋戦争敗退と対米従属方針の集大成としての日米地位協定の中身
3.対米従属方針から逃れられない日本とトランプ大統領の論理の相克
4.西側先進国の中でも特異な安倍首相のトランプ大統領への追従ぶり

1.戦前の一等国と戦後の西側先進国の一員としての日本の立場の相違

大正デモクラシー
日清日露戦争に勝利し、第一次世界大戦にも英米側について漁夫の利を得た戦前の絶頂期ともいうべき大正時代の日本は、大正デモクラシーが咲き乱れ、自由と繁栄の中で「一等国」の地位を得ていたということになっています。
当時の日本は、明確な国家戦略やグランドデザインを持ち、超大国にも政治的駆け引きの帰結とはいえ、いわゆる「NOと言える立場」を貫くことが出来ていたのではないか、と考えられます。
大国間のパワーバランスの中で一定の制約は受けながらも、当時の日本は自ら国策を自ら決定する真の意味での独立国であり、取り敢えず極東に勃興した新興大国としての地歩は確保していた、と言えるでしょう。

しかるに、今日の日本の立場はどのように評価出来るでしょうか?
まず明確な国家戦略やグランドデザインがあるのか、ということですが、これについてはどう贔屓目に見ても、「ほとんど無いに等しい」と言わざるを得ないでしょう。
先般の安保法制の整備もどちらかと言えば、アメリカの世界戦略の補完的役割の第一歩を踏み出したレベルでしかないような代物ではないでしょうか。
確かに現代の日本は内政面では、他国のあからさまな干渉は受けていないようにも感じられますが、外交・防衛あるいは独自の国家戦略や国策が戦前と同レベルで機能しているかと言えば、ほとんど皆無と言わざるを得ないでしょう。
すなわち、日本の外交・防衛というような国策の基本となる国家意思決定機構は、事実上アメリカの東アジア戦略や外交・防衛戦略に忠実に追随するだけ、という状況でしょう。

このように考えると太平洋戦争の敗北により、日本はアメリカの一部として国家戦略や外交・防衛に関与しない地方自治体のような存在に失墜したと言えるのではないでしょうか。
日本がアメリカの一部で、ほとんど日本を地方自治体のようにアメリカが認識しているという問題についてですが、2017年の安倍首相の訪米中のフロリダでの晩餐会の最中に北朝鮮がミサイルを発射した直後、安倍首相とともに記者会見に臨んだトランプ大統領は「アメリカは常に100%日本とともにある」というような一言コメントを出しました。この「日本と100%ともにある」という発言は、日本に関する外交・防衛事案を事実上国内問題と認識するような意味合いも込められているのではないか、とも思われ、良い意味でも悪い意味でも衝撃的なコメントであった、というような気もしました。まあそういう受け止めは、少なくともマスメディアの報道からは感じ取れませんでしたが。

中国脅威論者が、「このままでは日本は中国の一省にされてしまう」というような論理を展開していますが、「安心してください。そんなに心配しなくても既に1945年以来、日本はアメリカの一州として存分にやってきていますよ」というのが情けない実態でしょう。

2.太平洋戦争敗退と対米従属方針の集大成としての日米地位協定の中身

米軍基地
ここで日本の対米従属の象徴的な事案について、いくつか列挙してみますと以下のようになるでしょうか。
・日本国憲法=先の大統領選挙の選挙戦の最中に、バイデン副大統領はトランプ大統領の日本の核武装容認発言を受けて、「日本国憲法は、日本に核武装させないためにアメリカが書いたものである」という趣旨の発言を行い物議を醸した。
・日米安保条約=アメリカ軍が、防衛力の整備されていない日本への駐留を可能にする条約で、「アメリカ軍は日本において望む期間、望む場所に、望む数の兵力を展開する権利」を確保したもの。
・日米地位協定=日米安保条約に基づき日本に存在するアメリカ軍基地や駐留するアメリカ軍に関する地位を規定する協定であり、アメリカ軍はほぼ外交特権並みの治外法権を確保している。
このうち、日米地位協定は特にその不平等性が問題視されており、見方によればかつての幕末の不平等条約の再来のような印象すらもたらす部分もあるような気がしています。
すなわち、治外法権という見地から見て、「アメリカ軍人に関する裁判権」「アメリカ軍基地の原状回復義務の曖昧さ」「アメリカ軍人の特権的地位」というあたりにアメリカ軍に特殊な扱いが結実していると言わざるを得ないでしょう。
上記の「裁判権」に関しては、「実質的に重要な事案についてのみ裁判権を行使するものとし、それ以外あるいは日本有事の際には裁判権を行使しない」との密約が、日米合同委員会で取り決められていたことがアメリカの公文書公開により明らかになっています。
また「基地の原状回復義務」に関しては、日本側に基地施設を返還する場合に原状回復を行う必要がないので、アメリカ国内では問題になる土壌汚染対策や除染といった作業が、日本国内の基地返還ではアメリカ側が特に対応しなくてもよいことになっているようです。
さらに「アメリカ軍人」は、パスポートが不要であり、日本滞在中も外国人登録の必要がなく、日本政府の出入国管理の対象外となっている。またアメリカ軍の車両は、軍関係の任務であるとの証明があれば、高速道路が無料で使用でき、自動車の保管場所についても基地内を指定すれば車庫証明の取得の必要もない、というような特別待遇がまかり通っている状況です。

このように現代の日本では明治の先人たちが苦心惨憺の上に勝ち取った不平等条約の亡霊が、アメリカ軍という存在の中に蘇って厳然と息づいている、というのが実態となっているのです。
尚、イラン・イスラム革命を指導したホメイニ師がパーレビ国王の政治姿勢について批判した最大の眼目は、イランにアメリカ軍事顧問団が駐留するにあたって締結することとなった地位協定があまりにも屈辱的で、到底容認出来なかったので、ムスリムの同胞に大規模なデモを呼び掛けたことだった、とも言われています。

ちなみに、1960年の現行の日米安保条約の国会での承認・批准を巡って、あの日本史上でも空前の混乱となった安保闘争が発生し、安倍首相の祖父にあたる岸信介首相が同条約批准と同時に下野することとなったのは周知のとおりです。この岸信介元首相は戦前は満州帝国の建設に辣腕を振るい、内地に戻ってからも商工行政を牛耳る実力者であったわけですが、A級戦犯として服役した巣鴨プリズン以降は、いつのまにか対米従属方針の権化に転向してアメリカの後ろ盾の下に首相にまで昇りつめ、政界の表舞台から退いたのちは政財界の黒幕として暗躍した、と言われています。

3.対米従属方針から逃れられない日本とトランプ大統領の論理の相克

岸・アイゼンハワー
さて、太平洋戦争の大敗と越えられない大きな壁としてのアメリカの強い圧力のもとに、外交・防衛戦略をアメリカに丸投げする形で従属し、アメリカの庇護の下で地方自治体のような特殊国家として生き延びてきた日本にとって、新たな黒船のような存在としてトランプ大統領が立ち現れてきました。

トランプ大統領が、なぜ新たな黒船になりうるかというと、彼の政策がこれまでのアメリカの伝統的な戦略から大きく逸脱する「普通の国」の「普通の戦略」だから、ということになるでしょうか。
つまり、アメリカは「世界の警察官」であり、世界の平和と安定に貢献するために、「経済をグローバル化し、移民に門戸を開放し、紛争地域に軍隊を派遣してでも秩序を守るべく努力する」といった奇特で理想主義的な国際貢献国家の立場を放棄し、アメリカファーストを実践し、自国民の利益を最大限最優先する、という政策転換が行われた、ということになりましょうか。

このような事態の中では、日本のようにいたずらに対米従属姿勢を数十年間も続けて、自分の意志を持たない操り人形のような国家は、かえって足手まといとなり、「もうアメリカは日本の主人ではないのだから勝手にやってくれ、その代わりにアメリカも自国の都合重視の姿勢でやらせてもらうぞ」という立場を鮮明に打ち出してくるということになるのでしょう。

4.西側先進国の中でも特異な安倍首相のトランプ大統領への追従ぶり

メルケル
トランプ政権に対しては、これまでのところヨーロッパの西側同盟国の首脳からも一様にトランプ氏の特に移民政策や保護主義的な政策に関しては、反対の意向が表明されており、中国の習近平氏ですらダボス会議の基調講演において、トランプ氏の「反グローバル化志向や保護主義的な姿勢」に批判を表明したわけですが、日本の政府首脳からは全くトランプ大統領の意向に逆らうような見解は聞こえてきません。

この2017年2月には、安倍首相がアメリカを訪問しトランプ大統領と会談し、その旅程の中にはトランプ大統領とのゴルフも含まれていました。
先日イギリスのメイ首相がホワイトハウスを訪問した時も、かなり愛想を振りまいていましたが、渡り廊下を二人で歩いている時に階段で手を取り合うシーンが映像に流れ、メイ首相がかなり揶揄された(ブレア首相のようにアメリカ大統領のプードルになりかねない?)部分もありましたが、その後メイ首相はトランプ大統領の移民政策に関してはイギリス議会で明確に批判の言葉を口にする、という矜持を示しました。
また安倍首相訪米後にトランプ大統領と会談したカナダのトルドー首相は、トランプ大統領との記者会見でアメリカの移民政策を含む内政に干渉することはしないと強調しながらも、カナダの移民への寛容政策や多様な文化を尊重することを明言していました。

そういう中で、今後の流れとして安倍首相が西側先進国の中で唯一のトランプ大統領の飼い犬にならないように願うばかりです。
ブレア・ブッシュ
逆にトランプ大統領は安易な対米従属は逆に許してくれないような気もするので、アメリカに突き放された日本が独り立ちして、まともに外交・防衛戦略や国家のグランドデザインを取り戻せるのか、少し心配な気もします。
そういう意味では、トランプ政権の誕生によって、日本側にも長すぎた戦後を一刻も早く清算し、対米従属姿勢を一掃し、遅すぎた完全独立を果たすべく、立ち上がる好機がようやく訪れた、ということになるのかも知れません。

尚、既に安倍首相は三月中旬にドイツ、フランスを訪問し、トランプ新政権の新たな政策の方向性をメルケル首相らに伝えつつ、メルケル首相からはトランプ大統領への懸念を聞き取って伝言する、というようなメッセンジャーあるいはパイプ役を自ら買って出る方向で国会でも答弁し、具体的に動き出しました。
これではまるで、かつてTPP推進時にはオバマ前大統領のお先棒を担いで、日本の21世紀の成長戦略と中国封じ込め戦略の根幹はTPPにあるかのような立場だった安倍首相が、目にもとまらぬ驚くべき変わり身の早さで、今度はトランプ大統領のメッセンジャー兼唯一無二のゴルフパートナーに変身してしまった印象もある今日この頃です。

伝書バト

尚、本稿の延長線上で日本の対米従属、朝貢外交の淵源を黒船来航と太平洋戦争惨敗の見地からの分析もご参照ください。小池新党に怯え,前倒し総選挙を目指す安倍首相のトランプ大統領への朝貢的対米従属の淵源に迫る!

十全老人

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