⭕️トランプを今も支えるバノンのアメリカファースト路線の分析!

2023年7月27日

トランプが大統領就任以来一貫して貫こうとし、退任後も堅持しているアメリカファースト革命とレーニン主義,文化大革命,農民大反乱の類似性を検証していきたいと思います。

トランプ在任当時、新型コロナウィルスが猖獗を極め、アメリカが最大の感染者、犠牲者を抱える状況となりましたが、その対策に当たってのアメリカの国際的な存在感や国際貢献度は限りなくゼロに近く、逆にWHOを批難したり、中国のマスクを空港で横取りしたりと混乱を助長する動きが目立地ました。
すなわち、トランプのアメリカファーストは看板だけの皮相な観念では無く、本質的で行動原理として深く根付いたものであることが、今ではハッキリしています。。

これまでもトランプは、ロシア疑惑、ウクライナ疑惑をはじめとして、普通の政権であれば命取りとなりうる巨大なスキャンダルを、まるで荒波でのサーフィンか炎上商法の手法のネタかのようにで十全に利用しつつ、大統領再選に向けた歩みを進めていました。

時間の経過とともにトランプ政権の動向は対中国政策、対イラン政策の強硬路線へのシフトや北朝鮮政策の対話路線への変更、地球温暖化政策からの後退など当にバノンが中枢に居た時期よりもバノン主義への傾斜を一層強めてきており、実態としては水面下でのトランプ=バノン枢軸がより一層堅固になってきているようにも見受けられます。

ちなみに、バノンはトランプ政権では首席戦略官として大統領就任演説の骨子やイスラム過激派の入国制限を志向する大統領令、TPPやパリ協定離脱などの重要政策を主導し、2017年8月の首席戦略官退任以降、中間選挙では共和党トランプ派拡大に向けた活動とトランプ支持層への教育宣伝に明け暮れ、手始めに2017年9月のアラバマ州上院議員補欠選挙で共和党主流派が推す候補を破り、「支配階級と戦う革命」の勝利を宣言したりしていましたが(ちなみに、このバノン氏が推していた候補は、本選挙で民主党に敗れ、共和党は上院の貴重な一議席を失ったが、バノン氏は民主党を勝たせるための共和党主流派の陰謀を指摘していた)、保守系メディアサイトのブライトバートから離れてからは、表舞台から去って裏でトランプを支えている様子が見え隠れしています・・・

結局、2018年の中間選挙の結果には、ある意味では不気味なほどに、反トランプ抵抗勢力と化したニューヨークタイムズやワシントンポストが満を持して放ったトランプ政権内幕暴露が、影響しなかった印象もありました。
すなわち、トランプの岩盤支持者達は、多少トランプが批判されてもビクともせず、当にフェイクニュースと受け流して、トランプのTwitterを信用し、反トランプの民主党支持者たちは、最初からトランプを詐欺師紛いの怪しげな不動産屋としか観ていないので、これまた政権の内幕の混乱を、それみたことかと囃したてるものの、元からトランプや共和党に投票する気が無いので、選挙結果には影響しなかった、ということでしょう。

逆にトランプとしては、2018年の中間選挙で共和党の中の反トランプ分子である伝統的な自由貿易主義者やネオコン系の対外干渉主義路線をクレンジングし、ミニトランプを大量に議会に送り込むことに成功したわけで、お膝元の共和党のトランプ化が進行しました。
また突き詰めて考えれば、アメリカファースト路線の延長線上にある保護主義や対外不干渉、国内産業保護は、基本的にリベラルや労働団体の主張とも符合する要素があり、中間選挙の結果としての下院の状況もまんざらトランプ大統領にとって最悪の結果でもないかもしれません(民主党としての結束がしっかりしていれば、下院での弾劾決議は可決しましたが・・・)
何と言っても、信じられないような逆風の中で、トランプは、そのロックスターのようなカリスマ性、アイドル性を遺憾なく発揮し、まさにトランプのおかげで民主党の地滑り的な大勝を阻んだワケで、上院での勝利と併せて考えれば、これこそは奇跡的な途轍もない勝利とのトランプ大統領のTwitter投稿に首肯せざるを得ないのではないでしょうか。

そういう意味では、下院の議会運営は混乱の極みとはいえ、トランプはオバマ前大統領の轍を踏むことなく、具体的に公約をディールとしてこなしつつあり、弾劾裁判の過程を経て共和党が益々トランプ党として一枚岩になり切った存在に化したことは間違いないところでしょう・・・

文化大革命発動時の毛沢東の政治方針と類似するトランプ大統領の状況認識

ここでアメリカにおいて既成秩序の転覆を図りつつあるトランプ大統領が目指す方向性について、再確認しておきたい。
トランプ大統領は選挙期間中から就任演説まで一貫して、「アメリカの主権を既成のエスタブリッシュメントからアメリカ市民の元に取り戻す」と発言し続けてきており、大統領就任後もその姿勢にブレは無いように読み取れる状況である。
多くの報道番組において、ゲストとして招かれた中国人記者もコメントしているが、このような方向性は毛沢東の文化大革命期における発言に非常に酷似している、と考えてよいかもしれない。

トランプ大統領の革命が目指す既存エスタブリッシュメントと秩序の破壊

すなわち、「これまでワシントンの政界やウォール街の財界のエスタブリッシュメントから無視され続けてきた、アメリカの草の根の市民の声を吸い上げて、ワシントンの中枢に乗り込んだトランプ大統領自身が率先して、既存秩序をぶち壊して、アメリカを市民の手に取り戻す」という運動は、まさに毛沢東が文化大革命で推進した運動との共通点が多い、と指摘することが出来るのではないだろうか。

そういう意味で、中国において毛沢東が発した1966年5月「通知」になぞらえて言えば、トランプ大統領の革命は「アメリカ市民という一つの階級が、アメリカの既成のエスタブリッシュメントという一つの階級を覆す政治大革命」を起こすことであり、その目的は「現存している既存エスタブリッシュメントが設定した全ての秩序を破壊する」ことにある、ということにもなるだろうか。

トランプ大統領のアメリカファースト革命を推進するバノン氏のレーニン主義的政治信条

トランプ大統領が手始めにやり玉に挙げているのが、既存のマスコミであり、「マスコミの流している多くのニュースはフェイク・ニュース」とされ、本当の真実は「現代版の壁新聞」にもなぞらえられる「トランプ大統領自身のtwitter」やスティーブン・バノン氏が復帰して主宰する「ブライトバート・ニュース」等のニュースサイトのようなインターネットを介して市民に直接働きかける情報伝達手段の側が影響力を拡大している。
実際アメリカ市民の側でも「質の低下したマスコミよりも、マスコミを経由しないインターネットを介した直接情報が頼りにされている」という傾向が出てきているようである。

ニュースサイトの経営者からトランプ政権の首席戦略官となっていたスティーブン・バノン氏自身によれば、バノン氏は「帝政ロシアという強力な国家を解体したレーニンに対して畏敬と崇拝の念を抱いている」ということである。
これなどはバノン氏の意識がまさに「毛沢東が文化大革命で目指していた政治目標にほぼ合致するもの」とも考えられ、そういう人物と意気投合し政権の中枢に据えたトランプ大統領本人の政治信条もバノン氏と大同小異である、と考えてよいかもしれない。

このあたりに関しては、「帝政ロシアを解体したレーニン」や「文化大革命を発動した毛沢東」と類似した政治信条を持つ人物及び政策遂行チームを、民主的な選挙で大統領に当選させたアメリカの市民の「既存のエスタブリッシュメントや秩序に対する怒りのすさまじさ」を痛感せざるをえないだろう。
その先に立ち現れてくるのは、ヒトラーがかつて予言したラストバタリオンにより混乱の渦と化した、弱体化しきった悲惨なアメリカの姿なのかも知れない。

オルトライトの黒幕としてアメリカ版文化大革命を目論むバノン氏

バノン氏はトランプ政権誕生早々に主導的に導入したイスラム圏からの入国制限に関する大統領令への世論や司法からの反発やオバマケア廃止における与党共和党議員への恫喝的な多数派工作の失敗などが重なり、さらには事実上オバマ前大統領シンパとも想定されかねないリベラルな傾向のイヴァンカ、クシュナー夫妻との権力闘争に敗れ、国家安全保障会議・NSCのメンバーから外されるなど完全に失脚したかに観られていた。そうした逆境的な日々を過ごしていたかに見えたバノン氏は、その後に勃発したロシアンゲート事案の急展開とトランプ政権の先行きに関する不透明感の増大に反比例するかのように、世論工作や支持率低迷状態打開のプロで、政権建て直しのために不可欠な存在として、影響力を拡大しつつあったが、イヴァンカ・クシュナー夫妻やティラーソン国務長官らの良識派やリベラルな立場からの強硬な反対を押し切り、トランプ大統領が地球温暖化防止に関するパリ協定からの離脱を昨年の大統領選挙時の論理を振り回しながら宣言したことで、バノン氏個人の動向は一先ず置くとしてもバノン主義あるいはバノン的なるものの完全復権が確認されたと言って良いだろう。

穿った見方をすれば、ロシアンゲート事案の急展開、特にバノン氏の政敵であるクシュナー氏のロシア大使への秘密ルート開設疑惑暴露などの事案そのものが、バノン氏らのアメリカファースト革命派が、トランプ政権内のリベラル派やグローバリスト追い落としのためのリークや陰謀ではないか、との考え方も出て来かねない状況ではある。
このあたりのリークについては、アメリカとの関係改善を目指しているロシア側にとっても不利な展開でもありロシア情報機関からのリークとは考えられず、まさにバノン氏らアメリカファースト革命派が、アメリカのエスタブリッシュメントともロシアとも無関係で、アメリカ帝国解体を最優先課題とするラストバタリオンの一員である証左にもなりうるかも知れない。
ちなみに、バノン氏は2017年8月18日段階でホワイトハウスを離れ、古巣のオルトライトの総本山であるニュースサイトのブライトバートに復帰し、より自由な立場でトランプ大統領個人と連帯しつつ、アメリカファーストの原理をより扇動的に唱道し、エスタブリッシュメントを打倒するアメリカ版文化大革命を強力に推進することを目論んでいた。この活動の手始めに2017年9月のアラバマ州の上院補欠選挙の共和党候補者選びに参戦し、共和党主流派候補を破ることに成功した。バノンはこの選挙結果を踏まえて「アメリカ版文化大革命の一環」と表現し、「エスタブリッシュメント打倒のための闘争継続を高らかに宣言」した。

アラバマの補欠選挙では、四十年前のセクハラスキャンダルの影響もあってか、バノンの擁立した候補が惜敗したが、今回の選挙全般を通じて、今後のバノンの戦略や状況認識が明確化したとも言えるだろう。
すなわち、バノンは今後アメリカファースト革命を断行するためには、ホワイトハウスを支配しているだけでは、権力基盤として十分でないことを、ホワイトハウスの中枢で活動しながら痛感したと推測される。
バノンは、アメリカファースト革命を断行し、国家体制を根底から変革するためには、議会の多数派をトランプ信者にしてしまわなければ、到底状況を動かせないことに気付いたのであろう。

そういう問題意識を踏まえた、今後のバノンの戦略としては、トランプ政権誕生に向けて取り組んだ2016年の大統領選挙の成功体験も十全に生かしながら、2018年の中間選挙でトランプ派(実はバノン派)の共和党議員を出来る限り多く当選させて、ホワイトハウスと議会の両面からアメリカを完全にひっくり返すこと、と言うことになるはずであった。
その後、トランプ大統領とバノン氏は、暴露本「炎と怒り」の執筆過程におけるバノン氏の情報リークに絡んで、表面的には訣別したかに見受けられるが、真相は藪の中である。

いずれにしても、暴露本「炎と怒り」に関するバノン氏のリークが表沙汰になる寸前までは、バノン氏のようなアメリカ帝国解体を公言するレーニン主義者(実質的にはラストバタリオン的な存在?)と大同小異なアメリカファーストを政治信条とするトランプ大統領の二人三脚のもとで、アメリカが国内外に対してどのような政策を展開していくのかに注目が集まっていたが、二期目を目指すトランプ政権の方針はどう見てもバノン氏が強調してきたアメリカファーストの世界観と一体化がますます進行してきていることは否定出来ないところであろう。

尚、本稿とも関連するアメリカファーストとアメリカ版文化大革命の連関性と中国における民意の直接的な一環としての文化大革命的な動きについて、以下のリンクでも詳しく取り上げています。
トランプのアメリカファースト路線でヒトラーの予言したアメリカの文化大革命的混乱状況が完成する!